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新春公演(フィナーレの武藤つぐみさんの口上によれば「新春興行」)「舞 Mai」は、正月三が日の「3日連続大入り達成」に始まり、その後も2回の「大入り」が出るなど、一年初めの公演として順調な滑り出しを見せているのはご同慶の至りである。それにあやかって、一年初めの「エトセトラ」を、いささか遅ればせながらお送りしたい。
【公演全体】 ■元日から7日まで毎回開演時に「新春口上」が執り行われたが、ここに出演舞姫7人に加えて ダンサーズの4人も加わったのは、筆者の手元に記録のある2011年以降では初である。 ■本公演では、移動盆の稼働率が極めて高い。
前盆との間が「歩き」なのは、わずかに「2景=行き」と「6景=行き・戻り」のみ。 移動盆使用率は「78.6%」に達する。 【1景=空まこと】 ■本景では、舞姫7人にダンサーズ4人の計11人全員が出演する。これはフィナーレ以外では極めて珍しく、 2009年12月公演「浅草ロック座25周年公演 第2弾」以来、実に約7年ぶりのことになる。 ■空は2011年以降で「正月公演」の「1景」を務めた回数の最多記録を「3」に伸ばした。
ちなみに2011年1月公演前半・2013年1・2月公演「輝 −ヒカリ− 2ND」で「正月公演・1景」を務めている。 【2景=武藤つぐみ】 ■本景のモチーフとなっている「安珍清姫伝説」は、古くは平安時代の「今昔物語」にも見られる説話である。 その物語は、奥州から熊野詣に訪れた安珍という名の美形の僧が、 現在の和歌山県田辺市中辺路で宿を借りたところ、そこの娘・清姫が一目惚れするところから始まる。 清姫に言い寄られた安珍は、参詣中の身であることを理由に断り、 帰路には寄ると約束してその場を逃れるが、参詣後に清姫のもとに立ち寄ることはなかった。
だまされたと知った清姫は怒りのあまり蛇に姿を変え、 和歌山県日高川町にある道成寺に逃げ込んだ安珍を追い詰めていく。 安珍は梵鐘の中に身を隠すが、蛇に化けた清姫は梵鐘に絡みつき、口から吐く火で安珍を焼き殺して、 自らも入水して果てる物語である。 ■筆者の本景解釈は、能面をつけた姿で、逃げた安珍への怒りを高めていく清姫の感情変化を演じ、
能面と衣装を外すことで蛇に姿を変えたことを表現していると見る。 さらに行きの花道は道成寺に向けて安珍を追う道行きを、 ジャッキアップした前盆は安珍が身を隠した梵鐘を形取っていると考えられる。 すなわちジャッキアップした前盆の上で、腰に巻いていた赤い長布を振り回して狂おしく舞う姿は、 梵鐘に絡みついて炎で安珍を焼き尽くさんとする清姫の姿を舞ってみせているのではないだろうか。 加えて言うなら、戻りの移動盆は、安珍を焼き殺して怒りを放ち終えたことで訪れる沈静と虚無を、 最後の銀幕に片手を伸ばして消えていく姿は、水面に入水して果てる結末を表しているのではないかと 筆者は解釈している。正否のほどはみなさまにお任せしたい。 ■能面を外すと現れる目の周りの黒マスクは「蛇の目」、
アームカバーは「蛇のウロコ」を現しているように思える。
■前盆のジャッキアップは、2016年9・10月公演「Once Upon a Dream」6景「星の銀貨」以来。
この時、ジャッキアップされたのも武藤。 これで武藤は「ジャッキアップ経験3回目」の現役最多記録を更新。 さらに「出演2回連続で前盆ジャッキアップ」は、筆者の手元に記録のある2011年以降では初。 【3景=桃瀬れな】 ■[再使用曲]M1(強制翻訳邦題“美しいこの地球”)は、 2012年8月公演「ひゃっかりょうらん」4景“真夏の夜の夢”(長谷川凛)M3を再使用。 ■本景モチーフについては依然として不明な点が多いが、解釈を助けるヒントはいくつか提示されている。
その一つが「中休憩映像『桃瀬れな 10年の歩み』」における「10周年作『星になった空まこと』」である。 もちろん映像自体はコラージュ満載の“ネタ”であるが、桃瀬の10周年にあたる本景の記述については、 3景の演技内容を加味すると一定のリアリティがあると考えられるものになっている。 さらに相方の空の役どころについて、22日(日)3回目に非常に重要なヒントが上演中にもたらされた。 2曲目開始直後、本舞台中央奥に空を残して桃瀬が本舞台上手側前に歩み出る場面があるが、 ここで桃瀬が「おねえちゃん!」との生セリフを発してみせたのである。 筆者も含め、多くの観客が「初めて聞いた」という本景の生セリフは、 この日もこの3回目のみという“レア”なものであったようだが、 これによって空の役どころが「桃瀬の母親」や「茶屋の女将」ではなく 「桃瀬の姉」であることが、ほぼ確実視されることになった。 すなわち本景は「幼いころからいつも一緒だった仲の良い姉妹。 ところがある日、姉は花髪飾りだけを残して星になってしまう。 残された髪飾りに姉の面影を重ねながら、姉との“約束”を胸に生きていく妹」という ストーリーテリングではないかというのが、筆者の本景解釈であるが、如何に。 【4景=沙羅】 ■[再使用曲]M3(強制翻訳邦題“豊臣王女”)は、 2011年8月公演5景“ガッツ・ラー様”(小嶋実花)M5を再使用。 ■筆者がイメージする「浅草の沙羅さん」と言えば、
「本舞台いっぱいに大きくエレガントな舞姿で魅せる群舞」や 「内に秘めたさまざまな感情が滲み出るように伝わり広がるソロ演技」が浮かぶが、 本公演では「高速・ノンストップで3分41秒を駆け抜ける群舞」が鮮烈である。 群舞が終わると肩で息をする様子が見られるほどの激しい振りと動きで構成されているが、 このような舞台は久しく思い浮かばない。 あえて言えば、2014年3・4月公演「Symphony −シンフォニー 1st」4景“春の祭典”や、 2011年8月公演6景“マンハッタンから地中海経由ゴビ砂漠”まで さかのぼるのではないかとすら思われるものである。 【中休憩】 ■「浅草ロック座寄席『明烏』」は、落語家の語りに合わせてアテブリ芝居をかぶせる手法が楽しい。 これはNHK総合テレビで放送中の「超入門!落語 THE MOVIE」のオマージュ企画である。 なお“本家”の番組では、まだ「明烏」は取り上げられていない噺であり、 その意味では「浅草」が一歩先を行っていることになる。 ■「明烏」は、堅物の息子・時次郎に吉原で世間の遊びを教えようと、
「お稲荷様のお籠もり」とだまして連れて行くという噺であるが、 内容自体が吉原での遊びの“テキスト”になっていることでも知られる。 今公演では、6・7景への「プロローグ」と見ることも出来る。 ■キャストを確認しておく。
父親=沙羅、時次郎=南、源兵衛=武藤、多助=みおり、 茶屋の女将=空、花魁いろは=倖田、浦里=桃瀬、帳付けする男=サクちゃん
■この映像では、珍佐清氏が「浅草」を去った後、
長らく途絶えていた「クロマキー技術」を用いた映像合成が行なわれている。
「ここまで腕を上げてきたか…」との思いもする一方で、クロマキーの抜けや背景映像の粗さなど、 往年の映像クオリティに達するまでには、いま一歩…の感もある。 ■古今亭志ん生の「明烏」をフルでお聞きになりたい向きは、こちらをどうぞ。
【5景=みおり舞】 ■太鼓使用景は、2016年10・11月公演「夢幻 The Tale of Genji」4・7景以来で、 2公演ぶりという短いインターバルで太鼓使用景が登場することになった。 ■みおりが着ける「後ろに長く尾を引く羽根で覆われたスカート」を観ると、
筆者の脳裏には、中国の舞踏家「ヤン・リーピン」の「孔雀」が思い浮かぶ。 【6景=倖田李梨】
■本舞台にポール4本が設置されるのは、2016年5・6月公演「The Play Within The Play」 5景“ティターニア”(白石美咲・松嶋れいな/川原美咲)以来、約半年ぶり。 ■実は密かに心配している「もし本舞台かぶり席が無人だったら…」。
幸いにも筆者観劇時にそのような状況になったことはないのだが、発生例・目撃例はあるのだろうか。 【7景=南 まゆ】 ■[再使用曲]M4(強制翻訳邦題“それは美しい日”)は、 2012年9・10月公演「Sensuality」4景(沙羅)M2、 および2014年1・2月公演「奏 -KANADE-」7景(松嶋れいな/小澤マリア)M6を再使用。 ■本景群舞では、前景メインの倖田が自景終了直後にも関わらず出演している。
このように前景出演者が次景にも連続出演する例(中休憩をまたぐ例は除く)は極めて珍しく、 2012年9・10月公演「Sensuality」7景(伊沢千夏/小澤マリア)以来、約4年ぶりとなる。 この時は、6景の鈴香音色/小宮山せりなが直後の7景群舞にも出演していた。 ■本景で南が着ける「伊達兵庫」や「黒の俎帯」は、
去年も2016年1月公演「ONE」7景(灘ジュン)5回目で使用されたものであると推測される、 「浅草」の花魁景ではおなじみのカツラや衣装である。 【フィナーレ】 ■武藤が扮しているのは、江戸時代の「唐辛子売り」。 ちなみに背中の巨大張りぼての中に小袋に入った粉唐辛子を入れて売り歩いたという。 なお本公演の「唐辛子」を見て、「トマト?」「イチゴ?」と思った観客がいたとの報告がある。
上図でも「唐辛子」は「細長い」張りぼてを背負っているが、 京都にある「東映太秦映画村」では、武藤が背負っているような「太い唐辛子」を使用している模様。 (敬称略・観劇日:2017(平成29)年1月22日(日)) |
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