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今年の公演を締めくくる大千秋楽は、「浅草」大トリを務め続けてきた伊沢千夏さん引退の日となった。その最後の姿を目に焼き付けようと多くの観客が開場前から列を作ったが、今公演は開場から開演まで30分間しかない変則スケジュールのため、列の最後尾に並んだ観客の入場が12時30分までに終わらず、テケツ前にまだ列が続いている状態で1回目公演が始まるという異例の事態となった。場内は言うまでもなく1回目からほぼ満席で、さらに後方通路に立ち見が多数出る入りでスタート。「浅草の大トリ」を体現した伊沢千夏さんの「ラストシーン」をプンラスで見詰めた。
<楽日じゃんけん大会> ロビーに出ることも、場内通路を歩くこともままならないような大混雑の場内ゆえ、開催自体が危ぶまれた「じゃんけん大会」だが、“サクサク進行”の若手M氏が登場して無事開催された。ただし場内超満員ということは、勝ち抜けはそれだけ難関ということでもある。今年最後の運試しへ。 ■無料招待券×2名
「チ」→「チ」→「グ」→「パ」→★1名決定 残り3名直接対決→★2名決定 ■公演ポスター(サイン入り)×1名
「グ」→「チ」→「グ」→3名直接対決→★1名決定 ■1景・早瀬さんから「香水ビン」×1名
「チ」→「チ」→「パ」→「グ」→「グ」→★1名決定 ■4景・牧野さんから「カスタムクリアファイル」×1名
「グ」→「チ」→「パ」→「パ」→全滅→直前までの勝者復活 「グ」→★1名決定 ■5景・赤西さんから「つけまつげケース」×1名
「パ」→「グ」→「グ」→2名直接対決→★1名決定 ■6景・川菜さんから「カスタムクリアファイル・香水」×1名
「グ」→「グ」→「チ」→2名直接対決→★1名決定 ■7景・雨宮さんから「アクセサリー」×1名
「グ」→「チ」→「グ」→★1名決定 ■8景・香山さんから「香水ビン」×1名
「グ」→「チ」→「グ」→3名直接対決→★1名決定 ■9景・伊沢さんから「サイン入りのディスクメディア」×1名
「グ」→「グ」→「チ」→3名直接対決→★1名決定 <各景ひとことレビュー> 【1景=早瀬ありす/サウンド・オブ・ミュージック】 最小の「ド」役の早瀬は、伊沢先生の後をちょこちょこと追い掛けていく姿も微笑ましく、 純朴な少女を演じてみせてくれた。 ベッドでは一転、静かにしっとりとしたところから伸びやかに展開していくステージングは実に印象的で、 トップバッターの役割を見事に果たしていたように思う。 最終回、後方通路は二列、三列に立ち見の観客が重なり、その列は上手袖下から下手袖下までつながる。
さらに扉から前盆まで伸びる通路にも体育座りさせて、超満員の観客を何とか収容。 そして始まった最後の1景、前盆に早瀬を送り届けて「Good bye」とともに立ち去るシーンで、 場内から大きな拍手が沸き上がる。 戻りの移動盆でのラストは、銀幕が閉まる直前、ひときわ深く、勢いよく一礼をして締めくくった。 【2景=瀬能 優/Romeo and Juliet】 苦悩に満ちた中で、相手への一途な愛を語り合うかのような二人舞から、 流れるように前盆へと入ってからも展開する“瀬能ワールド”を堪能させていただいた。 メッセージ性の強い歌詞入りの音楽に負けない表現の厚みで 景イメージが大きく膨らむ好例を拝見させていただいたように思う。 “レジェンド組”はさすが、最終回まで自らのスタイルのまま演じ続ける。
恬淡と平常心を保った演じぶりを保つ姿は、さすがというほかない。 【3景=藤咲茉莉花/二人鷺娘】 中休憩映像のインタビューで「妹のよう」と語った伊沢と共に舞った「二人鷺娘」は、 いずれも名手なれど、二人の舞の個性の違いが垣間見られる最後の貴重な機会となった。 こちらも個性の強い女性ボーカル曲に乗せてのベッドとなったが、 そのたおやかにして流れるような舞姿で魅了させていただいたことに感謝申し上げたい思いである。 最終回、微笑み合う姉妹のように舞い続けた二人が、
終わり近くに一瞬だけ、二人揃ってキリリと引き締めた表情になった瞬間が見られた。 そしてすぐに二人とも元の笑顔に戻るシンクロニシティに、得も言われぬ深いものを感じた筆者であった。 【4景=牧野れいな/銀河鉄道の夜】 初日のやや自信なさげな朗読からは格段の進歩を遂げての楽日。 朗読用の文章を自ら発声しながら舞うという難景を、牧野自らのものにしてみせたことに拍手を贈りたい。 ベッドも、しっとりとした入りから、若々しく展開していく演じぶりに、 伸び盛りの印象を強く受けながら拝見させていただいた。 最終回のベッド後半から立ち上がり、ひときわ大きく沸き上がる拍手に思わずニッコリ。
その後も柔らかい笑顔を浮かべながら、20日間に渡ったライブでの挑戦を終えたのだった。 【5景=赤西 涼/もののけ姫】 サンの持つ強固な意志を、振りや動き、さらには表情でも鮮やかに描き出す赤西の舞台力に、 改めて感じ入らせていただいた。 ベッド、さらには戻りの移動盆でもその力は遺憾なく発揮されていて、 その堂々たる立ち姿で、特別な公演の中トリを見事に務め上げていたように思う。 最終回の戻りの移動盆、あえてミラーボールを回さず、緑一色の照明で作り上げた深い森へと戻っていくサン。
その姿に、伊沢引退後の次世代を担う中核の一人、赤西の決意が見えたように感じたのは、 いささか筆者の考えすぎであろうか。 【中休憩】 中休憩映像も「MESSAGE to Chinatsu Izawa」と題し、 「秘すれば花」「TEARS」「LAST SCENE」の出演者を中心に、 伊沢千夏さんへのビデオメッセージで構成されたスペシャル版を上映。 【6景=川菜ひかる/We Will Rock You】 “やさぐれ教室”のセクシー先生として、コール&レスポンスで場内をあおり、盛り上げていく役どころ。 それに応えて場内も大いに盛り上がり、楽しい時間を過ごさせていただいた。 ベッドでのハンズアップ&クラップが自然発生的に観客の中に広まっていったように、 場内の一体感を醸し出す演じぶりには大いに拍手を贈りたいと思う。 そして迎えた最終回のコール&レスポンスは、舞台上の演者も目を見張るほどの場内の一体感。
幕閉め前のフリーパフォーマンスタイムでは、思わずいすを頭上に振り上げて興奮する生徒たち。 ベッドでのハンズアップも、突き上がる腕、林の如くで、場内を熱く盛り上げてのラストを飾った。 【7景=雨宮衣織/フラガール】 本景も雨宮・藤咲・伊沢と、ベテラン勢の名手が並んでのフラは、それぞれがそれぞれの味わいを持ち、 しかもそれが共鳴し合うようなトリオダンスとして感慨深く拝見させていただいた。 さらにベッドでも、余裕たっぷりに演じていく“りんごワールド”や 戻りの移動盆での“青い鳥”を手にしての演技も、心地よく浸み入るものとなっていた。 こちらも最後まで悠然とした変わらぬ舞いぶりは、さすがのベテラン。
癒やしの景で爽やかな風を場内に吹かせて、青い鳥とともに羽ばたきながら締めくくった。 【8景=香山 蘭/Chaplin Speech】 「演説を舞う」という難しいステージに、今年目覚ましい活躍を見せた舞姫の一人、香山が挑んだ。 スピリットを込めてのソロダンスから、ベッドで全てを脱ぎ捨てて解放感いっぱいに舞う姿への ストーリーテリングは、一人の人間として生きることの大切さを改めて訴えかけるような印象で、 職人気質の仕事をする香山の面目躍如たるものがあった。 最終回の“スピーチダンス”では、心なしかそれまでより強く感じる突き上げる腕、振り上げる足の勢い。
そして伸び伸びとラストまで駆け抜けてみせてくれた。 【9景=伊沢千夏/La Vie en rose】 中休憩映像で真白が指摘しているように、 気品のあるたたずまいと存在感で、舞台に登場しただけで場内の空気を変えるだけでなく、 “いなつスマイル”で魅力たっぷりに引きつける舞台を作り上げ、 数多くの思い出のシーンを残してくれた稀代の舞姫が今日、その舞台を去っていく。 どの瞬間を切り取っても成立する、つまり「静止画像の連続体としての動画が舞姿を構成している」という 当たり前のようでいて、それが成立するには、 寸分の隙もない振りや動きが求められることを実にさりげなく演じていたのが、 筆者の目に焼き付いた“伊沢千夏像”であった。 そしてこの10年間の「浅草」を彩ってきた大トリ最後の一人の旅立ちでもある。 ベッドで、前盆からの場内の光景を慈しむように見るまなざしの優しさに、 すべての思いが込められているような気がしてならない。
最終回、場内いっぱいの観客が固唾を呑む静寂の中で進む最後のステージ。
その姿は優しくて華やか、しかし圧倒的であり、これで最後という感傷を挟む隙すら与えないものであった。 ベッドで降り注ぐ照明と惜別のリボン、ジャッキアップする前盆が、これが引退公演であることを語っている。 その間も浮かび続ける“いなつスマイル”は、まもなく終着駅に着く満足感か。 銀幕の向こうにいったん消える姿を、満場の拍手が贈る。 群舞からベッド、そして戻りの移動盆と、伊沢千夏は「伊沢千夏」を完璧に演じてみせた。 そして迎えるカーテンコール。 銀幕が開いた瞬間、筆者は意外なものを目にした。いや、目にしたような気がした。
袖を合わせ顔をやや下向きにした伊沢の表情が、まるで涙顔のように歪んで見えたのだった。 しかし一瞬の後、その表情は消え失せ、元の“いなつスマイル”へと戻る。 まるで今見た表情が錯覚であったかのように。 このとき筆者は、なぜか日光東照宮の「逆柱」を思い浮かべていた。 完璧は魔を呼ぶ。「満つれば欠ける」の俚諺から、 伊沢最後の舞台にたった一瞬だけ浮かんだ「なお満たらず」の姿だったのだろうか。 カーテンコールは、外形的には伊沢の感謝の心を舞っているように見える。 しかし観客もこの舞台に出会えた感謝を送り、それを伊沢が受け止める時間でもあったように思う。 最後の一人舞台は、伊沢と、伊沢を見詰める観客との静かな対話の時間であった。 カーテンコールのラスト、伊沢は両手を広げた後ろ立ち姿のまま、銀幕の後ろへと消えていく。 その姿を、深く心に刻みつけることにしたい。「伊沢千夏」という舞姫の名と共に。 <楽日あいさつ> 最終回フィナーレでは、既に涙が抑えられない演者の姿も。そしてオペラ幕が閉まった22時52分、拍手がそのまま督促手拍子に変わる。いつもの楽日より、やや間を置いて再びオペラ幕が上がる。MCのマイクを持つのは、もちろん伊沢。 【伊沢千夏】
「本日は『LAST SCENE』千秋楽にご来場ありがとうございます。 無事に20日間終わりました。たくさんの応援ありがとうございます。 それでは1景から順番に一言ずつお願いしたいと思います。」 【早瀬ありす】
「1景のメインを担当しました早瀬ありすです。ありがとうございました。 千夏お姐さんの引退の公演にご一緒出来て、本当にうれしいです…です。 いっぱい目に焼き付けることが出来て、幸せです…です。終わります!ありがとうございました。」 【瀬能 優】
「2景を担当させていただきました瀬能優です。 伊沢千夏ちゃんとは、『浅草』何度か一緒になったことあるんですけど、 そのなったことある中で全部、千夏ちゃんの景に出させてもらって、今回も出ることが出来て、 すごいよかったなと思います。千夏ちゃん、11年間お疲れさまでした。呑みましょうね、いつかね(笑)。 お疲れさまでした。」 【藤咲茉莉花】
「3景を担当しました藤咲茉莉花です。ありがとうございました。 今回はいなつと一緒に鷺娘を踊れて、本当にすてきなシーンで、いい思い出になりました。 たくさん一緒にステージは立ったことがあるけど、 二人だけで踊ったのは初めてで、本当によかったです…(涙)。いなつ、本当にお疲れさまでした…。」
【牧野れいな】
「4景を担当しました牧野れいなです…(涙)。 4景はすごい難しくて、何回もくじけそうになったんですけど、 ちなつ姐さんの引退週、大事な週に乗せていただいているので、頑張りました。 ちなつ姐さん…(涙)…ありがとうございました…(涙)」 【赤西 涼】
「5景を…声が変!(笑)…5景を担当させていただきました赤西涼です。 うーんと、いなつ姐さんとは2回?2回しかご一緒出来なかったですけど、 今週は一番身体も辛かったと思うんですけど、一番毎日笑ってくれて、笑わせてくれて、毎日楽しかったです。 ずっとかわいい姐さんでいて欲しいです。心残りは姐さんのシャンパンの毒霧を浴びれなかったことです。 いつか浴びせに来てください(笑)。ありがとうございました。」 【川菜ひかる】
「はい、6景を担当しました川菜ひかるです。 前の公演のお勉強をした時に、こびとを見て、これを演るんだなって私は思っていたんですが、 ちょっと違いましたね(場内笑)。みんな、予想が外れて残念でした。 ちょっと話変わりますけど、いなつ姐さんとはデビュー週が一緒で、すごくお世話になりました。 その後の『東洋』初乗りで不安だったけど、 いなつ姐さんが一緒に私とダブルオープンでふざけてくれたのを、今でも覚えています。 いなつ姐さんがニット帽を飛ばしていて、私がやらなくてもいいよといってもやってくれて、 とっても優しいお姐さんだなと思いました。 あと、私のオープン曲を聞いて、この曲はかわいいから変えないでねと言われたので、一生変えません。 いろいろたくさん思い出があるんですが、とっても寂しいんですが、 この週にこのメンバーでみんなで楽しく過ごせて、とってもうれしかったです。 いなつ姐さん、これからもかわいいすてきなお姐さんでいてください。大好きです!ありがとうございました。」 【雨宮衣織】
「7景のフラガールを担当しました雨宮衣織です。ありがとうございました。 茉莉花姐さんといなつちゃんと3人で、すごい平和でゆったりした楽しい景を踊ることが出来て、 本当に楽しかったです。 みんなそれぞれ自分の景のことをすごく深く考えながら、20日間、その前のレッスンの時から それぞれ思いをちゃんと持って踊りきって、清々しい気分で楽日を迎えることが出来ました。 年末の公演なのでプレッシャーもありましたが、 ケガなく全員で20日間終えることが出来て本当に良かったです。
いなつとは1周年の『浅草』で初めて会って、正直、生まれてきて一番きれいな人を見たと思って、 その最初の印象はずっと変わらず、これからどこに行っても、輝く存在であると思います。 今までありがとうございました。」 【香山 蘭】
「8景を担当させていただきました香山蘭です。どうもありがとうございました。 今回は8景の難しい景を演らせてもらえて、最後間違えちゃったんですけど、 すごくやりがいのある景を演らせてもらえる日が来るとは、ありがたいなと思います。 プロデューサーさんに怒られて、突き放されたのが懐かしい思い出ですが、 こんなすてきな景を演らせていただいて、ありがとうございました。 そしてちなつ姐さん、『浅草』でご一緒しても、お姐さんが美し過ぎて、あまり近寄れなかったんですが、 すごくいつ会ってもきれいで、大好きです。 今回、姐さんのメインの9景に私は出ることが出来なくて、すごく寂しかったんですけど、 今日は私は出ていないので、お勉強をただ一人出来る特権があって、ステージを観させてもらいました。 私の宝物になります。本当にうつくしかったです。これからもすてきな人生を歩んでください。 どうもありがとうございます。」 【伊沢千夏】
「9景を演じさせていただきました伊沢千夏です。 今回はラストとということで、こんなに盛大に盛り上げていただいて、送り出していただいて、 制作の方をはじめ、スタッフのみなさん、そして出演者のみなさん、 本当に…(涙)…感謝です。ありがとうございます。 そして11年間支えてくださったファンのみなさま、本当にありがとうございました。とても幸せな11年間でした。 これからも、来年からも、ぜひロック座をよろしくお願いします。 今以上に盛り上がることを願っています。 そしてすごく頑張っている踊り子たちにご支援、ご協力よろしくお願いします。」 そして伊沢千夏さん最後の「三本締め」の音頭。そして汽笛の音とともにアンコールウォークに回る。 その姿を白マスク姿で投光ブースから、時に鬼の形相で舞台を睨み、時に優しいまなざしで見守ってきたプロデューサーP氏も、今公演で引退する。「平成」の終わりより一足早く、「浅草」の一つの時代が終わろうとしている。
思えば伊沢さんが歩んできた11年間は、東日本大震災を挟んだ前後の“冬の時代”とも言われた厳しい状況から、今日で年間77回となる「大入り」を記録する、当時は想像もつかない観客動員を見せるまでになった大きな変化の時代であった。その時代の中でも、気品を持ち、優しさにあふれ、微笑をたたえた舞姿は、常に変わらずこの舞台にあった。
伊沢さんが残した舞台最後の言葉は、同じ板の上で頑張る仲間への応援の願いであった。来る年から、伊沢さんの姿は舞台にはない。しかし我々の記憶の中に残していった舞姿と言葉は、折々に思い起こしていきたいと思う。稀代の舞姫を送り出した平成最後の大千秋楽、2019(平成30)年12月30日の思い出として。
(敬称略・観劇日:2018(平成30)年12月30日(日)) |
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