アルパカはナルシスト

房総半島湾岸エリアの住人が、日常の中から拾い上げた光景を拙い写真と文章で記録しています。

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(前回の続き)
 
 
2.三島由紀夫の登った道
 
 
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                                             (2016.03.11の記事より再掲)
鵜原弁財天
 
 三島由紀夫の作品に鵜原を舞台に書かれた『岬にての物語』という短編小説があります(小説の中では鵜原は鷺浦という地名になっています)。彼が二十歳の19457月から8月にかけて終戦を挟んで執筆されたと言われています。
 三島由紀夫の小説に不慣れな私にとってはある種の難解さを含んだ作品ですので、ここでその小説について論じようという気は毛頭なく、興味のある方はお読みくださいとしか言えませんが、先の明神岬②の記事中にも触れましたとおり、この小説には鵜原海岸に実在する「弁財天女」の社が登場しますので、その部分に少し触れてみたいと思います。
 
 登場する最初の場面は、夏休みに東京から鷺浦(鵜原)へ避暑に来ている、幼少のころの作者と思しき11歳の主人公の少年が、少年の御守役である書生をそそのかしてその任から遠ざけ、海水浴場から独り抜け出し、魅入られたように岬(鵜原理想郷)へ向かって行くときであり、もう一つは忽然と消えた少年を探しあぐねてぼんやりと弁財天の石のベンチに腰掛けていた書生と、岬から下りてきた少年が再会する場面です。
 後の場面は「石のベンチ」こそ見当たりませんが狭い境内(ほぼ上の写真の範囲)ですので、この辺りだったのだなと見当を付けることができます。あるいは写真の鳥居の端に写っている岩であったかもしれませんし、社殿の階段であったかもしれません。
 しかし最初の場面は少し厄介です。小説では岬へ通ずる道を 『 社殿のうしろを通って岬の頂きへ出る隠れ路 (じ) 』 と書かれていますが、神社のすぐ後ろには山が迫っていて、その山の岩肌を穿った祠が社殿の裏にあるだけで、それらしい道は見つかりません。
 そのためこの道は、あるいは小説の虚構ではないかとする見方もネット上には散見され、私も前回の訪問時に社の裏側に回って確かめたときには、あるいはそうなのかもしれないと考えたのですが、今回念のためもう一度探して見ようという気になり、この明神岬再訪のひとつの目的としていました。
 
 
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 そしてその道を見つけました。上の写真が「弁財天裏の石階 ( いしばし )」です。
 とにかく狭い境内ですから先ずは端から端まで見てみようと、社の裏の崖に沿って歩くうちに、境内とその左にある隣家との境目に、隠れるような道が見つかりました。
その道は石で階段状に作られていて、辿って行くと弁財天の裏を神社に沿うように登っていました。まさに 『 社殿のうしろを通って 』 行く道です。ただし「うしろ」は頭上だったのです。
 
 
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鵜原の海を前にした弁財天の鳥居と社殿を見下ろしながら、道はなお山へと分け入って行きます。
 
 
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ちょうどその辺りの右手にまた鳥居が建っていました。額には「鵜原聖天」とあり、その下にはかすかに人の通う道らしきものが伸びていますので、進んでみました。
 
 
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その先にはさらに鳥居が連なり・・・
 
 
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やがて、上に乗っていたはずの笠木もなくなってしまっている、滅多にお目にかかれないほど朽ちた鳥居と、岩肌に彫られた祠が現れました。境内は綺麗に保たれていて、祠には青々とした榊と思われる枝葉も備えられていましたので、決して見捨てられている社ではないようでしたが、いかにも他所者の立ち入りが憚られるような佇まいでしたので、そっと掌を合わせて退場致しました。
 
 
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元の道へ戻りその先を目で追うと、岬の頂きへの道はいよいよ険しく、曲がりくねりながら山中へと隠れていました。
私はその日の主目的である黒ヶ鼻めぐりを控えていましたのでそこから引き返しましたが、小説の現場である道を見つけられたことよりも、若き日(幼い日 )の三島由紀夫が息を弾ませながら登った、その同じ石を踏んでいるという想いに心を昂揚させながらの山道でした。
 
ところであの道は明神岬へは向かっていないように思われます。おそらく手弱女平か毛戸岬近辺の道に出会うことになり、そこが少年が登りつめた 「 岬の頂き 」 なのでしょう。そうだとすると少年はどの岬から届いたオルガンと歌声を、どの岬から聴いたのだろうか、そして少年が美しい大人の男女と三人でかくれんぼをした岬はどこになるのだろうか、などと小説を読まれてない方を置き去りにして、勝手に妄想が膨らんで行きます。
 
                      (明神岬再訪は終わります)
 
 
 

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