|
秘書室からは、廊下の向こうから歩いてくる人が
よく見えます。
お、「軽部さん」がやってきました。
ドラえもんのようにも見えます。
「彼」しかいません。何をしに来たのかも、だいたい分かります。
「冷えますなあ」(←森本レオ口調)
そら来た!会計係の小田くんです。
※小田くんは社内では先輩だが、同い年。どっしりした体つきと、落ち着き払った
風貌のため、同い年と知ったときは、かなり衝撃的だったのを覚えている。
よく言えば愛嬌ある「いい人」ぽいルックスだが、発言が意外と厳しく辛口のため、
本当にいい人なのか、疑問視する向きも多い。
「なにさ。小田っち」(社内でタメグチをきける数少ない存在の彼には、遠慮はいりません)
「聞きましたよ。顔にぶつぶつが出て、困っているそうですね」
「やだなあ誰に聞いたの(-_-メ)」
「三課の山之内さんです」(小田くんは敬語でしか話せない。会話の相手が甥の幼稚園児でも)
「ホント口軽いなあ、あのオジサンは(-"-)」
「それから生理不順で非常に機嫌が悪いそうですね」
「誰に聞いたのッ!<`〜´>」
「R課のサトケンです」
「キーーーあの下品オヤジめ!!!!!!」
「まあそれはそれとして」(小田くんの口癖。使ってみると、結構便利な言葉だとわかります!)
「何サ」
「ぶつぶつが悪化しないよう、残りのチョコレートは私が引き受けましょう」
やっぱり!
彼が秘書室にやってくるときは、お菓子を食べたいとき!!
あ、もう自分でお茶まで淹れているし!隣に座ってるし!
秘書室は駄菓子屋じゃないぞ、と、言ってやりたいのを、ぐっとこらえます。
私の分までお茶を淹れてくれるからでは、ありません。
彼には、借りがあるのです。
・入社したての時、お客様からの電話を誤って切ってしまい、係長に激怒されたときも。
・繁忙時にコピー機を詰まらせ、皆から顰蹙を買ったときも。
・インフルエンザに感染し、皆から遠巻きにされたときも。
そして
奥さんがいる人を好きになってしまい、仲良しの後輩から「奈緒さん最低です!」と言われて
口を利いてもらえなくなったときも。
「まあそれはそれとして」と、小田っちは変わらずやって来ては
何の躊躇もなく、隣に座ってくれました。
この動じなさが、どれだけ嬉しかったことか。どれだけ救われたことか。
だからついつい、秘蔵の高級菓子などを出してしまうのです。
小田くんが健康指導で「肥満。間食は厳禁」と言い渡されたのを、知っているんですけどね…。
 今日のおやつ
なし!小田っちに食べられてしまったから。彼が食べて行ったのは
明治「メルティーキッス」と、ドイツのおみやげのチョコレートと、坂角総本舗「ゆかり」。
|