|
もう 10 年以上前の事でしょうか。
Firenze のある ristorante で、夕食をとりました。
中心街から少し離れている寂しい道端に、ぽつんと灯もる小さな看板を頼りに入りましたが、これがなかなか正解で、内装や調度品も趣味良く纏められ、初老の cameriere が発する言葉使いも丁寧だったので、好感を持ちました。開店直後に入ったためか、他に客は居ませんでしたが、選んでもらった chianti を飲みながら、前菜を突いているうちに、周りのテーブルも徐々に埋まり始めました。
今でも慣れませんが、このような状況になると、1 人の食卓は寂しいものです。
周りの客は、皆仕事の同僚やカップルなど、複数人で座を占め、思い思いに会話を楽しみながら食を共にしています。件の cameriere が気を使って、時折話しかけてくれるものの、1 人の食事は、ナイフとフォークの進み具合だけは早いもので、周囲の客に 2 皿目が運ばれる頃、私は最後に供された ossobuco を食べ終えました。
その様子を伺って、cameriere が、「 dolce ? 」 と目くばせします。
私が頷くと、彼は奥から、5 〜 6 種類程のデザートを乗せたワゴンを押してきました。最後のデザートを、この 「 ワゴンサービス 」 で供する店は結構多く、客は、雑多に並んだ 「 現物 」 を見てから注文する事が出来ます。注文を受けた cameriere は、選ばれたデザートを 1 人分切り分けて皿に盛り、客に呈すという趣向です。
面白いもので、ワゴンが運ばれてくると、店内には一瞬の沈黙が流れました。
あれ程、お喋りに夢中になっていた他の客は、一斉にワゴンのデザートに注目します。「 今日は、どのようなものが用意されているのか ? 」 という沈黙を伴った品定めの視線は、程なくして、「 さあ、この中から、この日本人は何を選択するのであろうか ? 」 という好奇のそれに変わります。目の前に運ばれたワゴンの上のデザートと共に、四方から突き刺さる視線に、私は動揺しました。どのデザートも、選び難いほど魅力的に映ります。かといって、ここで長考に沈むのも、周囲が発する好奇と期待 ? の視線を裏切ります。思い余って、私は次の様に頼みました。
Posso avere misto ? 「 盛り合わせでお願いします。」
cameriere は、苦笑しながらも、我が意を得たりというように、ワゴン上にある全てのデザートを小さく切り分け、皿に盛ってくれました。私は、「 言ってみるものだ。」 と思いながら、次々と異なる味を楽しみました。
それ以来、味をしめ、「 ワゴン形式 」 で dolce が供される ristorante では、大抵 「 盛り合わせ 」 を頼みます。割増料金を取られる事も殆ど無いので、色々な味を楽しみたい場合は、かなり 「 お得 」 かも知れません。人間というものは、「 この中から、好きなものを選べ 」 という命題を与えられると、反射的に 「 1 つ 」 を選択しなくてはならないと思いがちですが、「 迷って決められないから、じゃあ、全部ね 」 という発想の転換も必要なようです。
「 う〜ん ・・・ 」 と迷った時に便利な 「 盛り合わせデザート 」。
イタリアで良い事を覚えたと思います。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]



