イタリア Lezione

主にイタリアに関する読み物です。

雑感

[ リスト | 詳細 ]

イタリアに限らず、旅先で感じた事を書いています。
記事検索
検索

大人と Pinocchio (改)

イメージ 1

 Firenze の街中を歩いていると、店先に飾られた Pinocchio 人形が目に留まる。



 玩具屋はもちろんのこと、ちょっとした雑貨を売る店や、お土産物屋等のガラスケースに、
大小様々な Pinocchio の木製人形が並べられている。子供へのプレゼント、部屋のインテリア、Firenze 滞在の思い出・・・・・・様々な目的で、みな Pinocchio を求めていく。





 Firenze 出身の Carlo Collodi によって、童話 Le Avventure di Pinocchio が新聞に連載され始めたのは 1881 年。それ以来、イタリアはおろか世界中で読み継がれる物語となった。嘘をつくと鼻が伸びてしまう人形
Pinocchio は、様々な苦難を乗り越えて最後には本物の人間になる。子供は、胸躍るような Pinocchio の冒険譚や滑稽な逸話に心奪われ、大人は「嘘をつくと鼻が伸びてしまうぞ」という子供を脅す常套句を楽しみつつも、1人の少年が大人へと成長していく過程に自らの郷愁を重ね合わせる。





 夜、Firenze の街を歩きながら、店頭に Pinocchio の姿を見つけると思わず立ち止まる。
 薄暗いガラスケースの中で、電灯にぼんやりと照らされた Pinocchio 人形を眺めていると、木製の玩具が持つ特有の懐かしさも手伝ってか、何とも言えず心の奥が締め付けられるように切なくなる。


 子供の頃、「嘘をつくと鼻が伸びてしまうぞ」という類の大人の脅しを、斜に構えて聞き流していた反面、心の何処かしらで「小さな恐怖」を感じていたものだ。子供に取ってみれば、その「小さな恐怖心」が要所要所で頭をもたげ、「悪い子」になろうとする自分に対し、少しだけ戸惑いを感じる、ある種の自制心に繋がっていたのだろう。嘘をつけば(悪いことをすれば)、それがいつまでも「しこり」として心に残り、鼻は伸びないにしても、遠からず何かしらの「罰が当たる」というような不安に怯えていたような気がする。


 しかし大人になるにつれ、その「恐怖心」は徐々に薄れて行き、小さな嘘なら平気でつくようになった。
 「処世術」という都合の良い言葉に乗って、自分でも気が付かないうちに少なからず「悪さ」もしてきたに違いない。


 大人になった事と引き換えに、もう取り戻すことの出来ない「何か」を失ってしまったという漠然とした喪失感。ガラスケースの中で、力なく体を伸ばしている Pinocchio 人形を見ると、何処となく胸を締め付けられるように感じるのは、そのせいなのだろう。





 Pinocchio を見て切なくなって、少しだけ「良い大人」になろうと思った。

イメージ 1

 最近は「手紙」を書く事が殆どなくなった。





 社会人になって付き合いの幅が広がり、それに伴う「しがらみ」も少しは増え、人とコミュニケーションを取る回数もそれに比例している筈だが、「手紙」という媒体を日常的に利用することは殆どない。


 「メールでのやりとりは、何だか味気なくて・・・」という情緒も分からないではない。
 かつては「伝書鳩」や「のろし」を使って遠方とのコミュニケーションを取っていたのであろうが「郵便」という利器が発案されて以降、あっと言う間にそれらは淘汰された。そのことを考えると、「手紙」という媒体が、後発の電話やメールにその座を脅かされるのもまた、ものの「道理」なのかも知れない。


 ただ、そうは言っても「手紙」が持つ独特の「味」は捨てがたい。
 人が実際に書いた文字や文面は、その人柄や心情を、時として雄弁に物語るものであるから、そこに込められた折々を無意識のうちに深く読み取ろうという気持ちになる。「手紙」は、物理的には一方通行のコミュニケーション手段であるが、それにも関わらず、そこに「人」を強く感じる。


 嬉しい手紙、悲しい手紙・・・どんな手紙であっても、そこには人間らしい「味」がある。







 かなり前に、イタリアから知人に絵葉書を送った。
 後日、帰国して会った時に、随分嬉しかったと言ってくれたので、それ以降、渡伊した際には必ず送ることにしている。ローマ、バチカン、アッシジ、フィレンツェ、ナポリ、ミラノ、パレルモ・・・今まで色々な土地から送っているが、その時に感じたことを一言添えるようにしている。


 イタリアの郵便事情が極めて貧弱であったのは、随分と昔の事だ。
 かつては「戦前に出した手紙が50年経って届いた」とか「雨が降ったら配達は行われない」などという武勇伝が、まことしやかに囁かれたものであるが、少なくとも今日の郵便事情は先進国の水準を保っている。封書は葉書などは、航空便で送れば5〜7日で日本に確実に届く。


 イタリアで手紙を出す時は、日本と同様、ポストに投函する。
 ホテルのフロントに投函を依頼する手もあるが、やはり自分で書いた手紙は自分で出してみたい。どんな街でも歩いていれば必ずポストがあるから、見つけると投函する。


 裏通りの目立たない所にある薄汚れたポストに投函する時は「こんな所からはるばる日本に手紙が届くのだなあ」と、何だかとても感慨深くなる。ポストの口に手紙を入れる時、受け取る人の顔を思い浮かべて「無事に届きますように」と心の中で思う。





 遠い国の名もない小さなポストから、日本にいる大切な人の所まで。
 無事に自分の「気持ち」が届きますように。





 旅先から大切な人へ贈るメッセージは、やはり手紙に限ると思う。

大聖堂の作る影

イメージ 1

 眩しかった日差しが落ちると、涼しい風が吹くようになる。



 S. Pudenziana の裏手にある、静かなリストランテを出ると、かなり遅い時間になっている。
 先程まで降っていた雨で仄かに濡れた石畳が、街灯の鈍い光に当たって黒く光っている。普段は決して飲まない、甘い白の Planeta が少し効きすぎたのか、僅かに足が石畳の窪みに取られる。

 時折、躓きそうになっても、お互いにしっかりと手を繋いでいれば大丈夫。



 互いに酔いも手伝ってか、人通りのない薄暗い裏通りの散歩であっても楽しい。
 少し火照った頬に、涼しげな風が当たり心地良い。話をしながら歩くうちに、恐らくこれから先、長く心に残るであろう今日1日の思い出が、次々に蘇る。昼間2人で見た、S. Prassede のモザイクが放つ煌き、S. Luigi dei
Francesi の 雄々しい Caravaggio ・・・Borghese の緑、バロックの彫刻群、小さな広場のオベリスク、
そしてローマの夏の光・・・。



 Cavour 通りに出ると、道の対岸に S. Maria Maggiore の巨体が見えた。
 昼間の喧騒が嘘のように、車通りの少なくなった Cavour 通りを2人で走って渡る。途中で解けた手を繋ぎ直すと、見上げるような大聖堂の足元に居た。



 デートの最後に、この大聖堂の前というのも悪くないと思った。
 疎らな人の足音、噴水のせせらぎ、大聖堂の作る夜の黒い影・・・。

 繋いでいた手を離して、身体をそっと引寄せた。





 思い出に残る夏の夜。

la mia guida

イメージ 1

 学生の頃、神保町の古本祭りで、ロンドンに関する英文の旅行ガイドブックを買った。



 『 The Companion Guide to London 』という書名で、David Piper なる人物の筆によるものだ。
 500円という安価につられて購入したが、バンタム版にも関わらず、全28章、Appendix も含めて520ページにも及ぶ長大な本だった。これが実に面白い「ガイドブック」で、ロンドンの主要な観光地や建物に纏わる歴史や人物はもちろん、かなり小さな通りに至るまで詳細な記述があり、一種の「ロンドン大河ドラマ」然としていて夢中で読んだものだ。


 その本を買うまでに、ロンドンは2度訪れていたが、実際に見聞きした事象とは、また違った楽しさを本の中に見出すことが出来たと思う。とにかく、章を読み進めるほどにロンドンの「奥深く」に入って行くような感覚に囚われ、ページを捲る時間がもどかしく、1週間程で読み終えてしまった。Rocking Chair Traveler なる言葉があるが、正に部屋に居ながらにして、「ロンドン旅行」を楽しんだものだ。それ以来、ロンドンを「実際に」訪れる度に携帯している。


 最近、ロンドンを訪れる機会は少なくなったが、今でも件の本は、本棚の片隅に大切にしまってある。
 時折、何の脈絡もなく、「 St. Margaret's Church の前の通りは何だったかな?」「昔よく行ったレストランは、
South Kensington の地下鉄駅からどうやって行ったのか?」等、ふと頭に浮かぶと、本棚から取り出しては調べてみる。通りや建物に関する、忘れていた来歴を思い出しては、1人フムフムと頷いて楽しんでいる。









 イタリアに行く時も、その度にガイドブックを買っている。
 Firenze や Roma 等のように、十数回も訪れて、地図無しは勿論、「目隠し」で何処にでも歩いていける程に地理や建物に熟知しているような街を訪れる時でさえ、未だにガイドブックを買って持って行く。新しく得る情報は全くと言って良い程無いのに、自分でも不思議に思う。持って行かないと、何となく手持ち無沙汰というか、「旅の友」を欠く様な気がして、どうも落ち着かない。飛行機の中や、夜、ホテルのベッドで暇つぶしに「知っていること」を確認しつつ読むのが、ガイドブックの役目の全てだ。


 今までに、色々な種類のイタリアに関する旅行ガイドブックを買った。
 初めて訪れるような街では、「地図」が載っていて重宝するが、案外それ以上の目的には、どれも耐えれないような気がする。側に居てくれると何となく安心出来る存在を越え、何かしらの示唆を与えてくれるようなガイドブックは無いだろうかと探してみるが、一向に見つからない。『 The Companion Guide to London 』とは言わないまでも、読むだけでワクワクするようなガイドブック・・・それを見つけるのも、イタリア旅行のもう1つの目的なのかなあと、密かに思っている。

二人旅

イメージ 1

 学生時代に、The Beatles の 『 And Your Bird Can Sing 』 をよく聞いていました。





You tell me that you've got everything you want
And your bird can sing
But you don't get me, you don't get me


You say you've seen seven wonders
And your bird is green
But you can't see me, you can't see me


When your prized possesions
Start to weigh you down
Look in my direction
I'll be round, I'll be round


When your bird is broken
Will it bring you down
You may be awoken
I'll be round, I'll be round


You tell me that you heard every sound there is
And your bird can sing
But you can't hear me, you can't hear me





 自分の見る物が、相手の目に入らない。
 相手に聞こえる物が、自分には聞こえない。


 相手への想いが深ければ深い程、互いの「気持ち」が重ならないと感じるのは、不安で寂しいものです。 
 若い男の「想い」は、強く、そして一途なだけに、時として自分本位になるものです。大切な人の心の伸張を尊重するよりも、自分の「想い」の強さを、ただただ真直ぐに表出したいという気持ちの方が、得てして強くなるものです。


 若い頃は、今のように、「想い」の強さを、相手の気持ちに振り向ける理解力がありませんでしたから、
And your bird can sing, but you can't hear me ... というくだりを聞きながら、「何故?」と密かに自問自答したものです。「片想い」の辛さよりも、「両想い」が故に感じる不安の方が、何倍も重く心に圧し掛かるものと悩みました。





 大人になって、You can't hear me ... という「自分本位」な「想い」のエネルギーを、相手の気持ちを理解する労力に、少しずつ振り向けることが出来るようになりました。今まで聞こえなかった、相手の聞こえる音も、耳に入るようになり、今まで見えなかった、相手の見る心の風景も、素直に目に入り、染みるようになりました。相手の「気持ち」を理解しようとすることによって、相手が持つ、自分への「想い」が、考える以上に強いことを深く知ることが出来るようになったと感じます。


 だからこそ、相手の気持ちと自分のそれとが、深く重なったと思う時に、限りない喜びが湧きます。
 同じ音を聞き、同じ風景を見て、奥底からから2人の心が重なり、共鳴する瞬間。そういう「瞬間」は、日々の生活の中で、どれだけあるのだろうと思います。ともすれば、気が付かないうちに通り過ぎてしまうような、ささやかな「瞬間」であるのかも知れません。


 しかし、その「瞬間」を見逃さないようにしたいと思います。
 そうすることで、相手への「気持ち」が、より深い部分で強くなっていく・・・そんな気がするのです。
 「ささやかな瞬間」は、自分にとって、それ以上に無い大きな幸せです。










 旅先で何度となく見る夕景。

 表現する「言葉」を探す僅かな時間さえも惜しいと感じる程、心に深く染み入る。
 聖堂の鐘楼から低い鐘の音が響き出し、石畳を踏みしめる足音が一層柔らかく聞こえる。ふと横で、「ああ、綺麗・・・」と誰に言う訳でもなく、ぽつりと呟く声が聞こえた。


 同じものを見て、同じ音を聞いて、「2人の気持ち」が深く重なったと感じ、不意に涙がこぼれた。


 「2人の旅」で共有した、ささやかな幸せは、忘れ難く心に残る。


.
アバター
naoki
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

検索 検索

ブログバナー

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事