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冬の街

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 冬の Assisi も悪くない。



 否、Assisi に滞在するなら冬が良い。
 Subasio と名を付した小山の中腹に浮かぶ、聖地 Assisi の小さな街並み。其処に集う多くの 「 巡礼達 」 が、夏の日差しに煽られて時折立てた嬌声も既に消え、丘陵に吹く冬の冷たい空気は、もはや静けさだけを欲するようになる。この落ち着いた街並の何処かに、未だ漂う Francesco の余りにも禁欲的な精神は、喧騒とは無縁の、寂しげなまでに澄んだ冬の空気にこそ似つかわしい。この街が、本来の姿を取り戻す季節こそ、清廉な地に佇むという感を強く持つ。


 冬の Assisi は、静かな街。
 Roma へ向かう途中の観光バスが、偶さか思い出したように到着しても、この小さな街で長居する程の事はない。聖人の名をそのまま戴いた、飾り気のない聖堂と、その内部に描かれた Giotto の fresco だけが、この街の 「 観光地 」 として、通りすがりの物見遊山を楽しませる。辺鄙な小山の腹上に立つ質素な聖堂と、不思議な fresco 絵巻の妙に感心するだけであれば、数時間の 「 観光 」 で事足りる。しかし、ただひたすらに祈るという最も困難な信仰の形を体現する為に、何ゆえ、聖人がこの地を選び得たのかという事を思い起こす、或いは、何かに憑かれた様に、我が技で聖人の生涯を、白い聖堂の壁面に残した画家の心の遍歴を辿るには、「 通り過ぎる 」 短い旅では心許ない。人影も疎らになった寂しい街で、何かしらの 「 小さな答え 」 が見付かるまで、時を置いて滞在してみたい。








 Subasio の高台から、澄んだ景色を通して Umbria の平原が遠く見える。
 頬を突く凍るような風、霙交じりの雨で濡れた黒い石畳、聖堂の鐘楼が鳴らす低い鐘の音、そして何も無い寂しい山腹の街。


 Assisi で 「 何かを考えて 」 過ごすなら、冬が一番良いと思う。

音楽のある風景 (改)

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 学生の頃、一時期、Dublin に居た事がある。



 EU に加盟する以前のアイルランドは、西欧州の貧困を一手に引き受けていたような国で、首都 Dublin の中心部でさえ、一歩裏通りに入ると物乞いが徘徊し、荒んだような雰囲気が漂っていたものだ。隣国の英国に対する奥深い劣等感と、Irish の悲哀に満ちた歴史的残存から、まだまだ抜け出すことの出来ない時期であったように思う。


 毎晩、大学の図書館で夜遅くまで勉強した後、独りだけの寂しい下宿部屋に帰った。
 大学から下宿先まで、薄暗い住宅街の一本道を帰る途中に、一軒の小さな Pub があった。緑色をした磨りガラスの向こう側から、いつもかすかに音楽が聞こえてきた。


 心まで冷え切ってしまうような、真冬の寒い晩に前を通ると、よく 『 The Dark End of the Street 』 が掛かっていたものだ。





At the dark end of the street

That is where we always meet

Hiding in shadows where we don't belong

Living in darkness to hide our wrong ・・・





 口ずさむ事が出来るくらいに、いつの間にか覚えてしまった歌詞を、陰鬱な Dublin の冷え切った夜道を独り歩く自分に重ね合わせてみる。 If we should meet, just walk, walk on by, darling, please don't you cry ・・・ という部分が耳に届くと、独り身が余計に染みて、自然と歩みが速くなった事を憶えている。


 この曲を何かの拍子で聴く度に、薄暗く冷え切った Dublin の冬の夜を、独り歩く自分の姿が蘇ってくる。










 旅先では、色々な音楽に巡り合う。


 イタリアを頻繁に訪れるようになってからも、それは同じだ。
 そして、音楽は、その時に見た風景や心の動きと共に、いつまでも深い思い出として鮮烈に胸に刻み込まれる。音楽を聴く度に、風景を思い出し、風景や心情を思い返す度に、音楽が蘇ってくる。


 雨の降る Lucca で、通りすがりの若者が口ずさんでいた 『 Raindrops Keep Fallin' on My Head 』、Mestre の trattoria で、初老のギター弾きが朗々と歌った 『 Volare 』、Palermo の海岸沿いにある小さな bar で、突然ラジオから流れてきた 『 Cavalleria Rusticana 』 間奏曲・・・


 そういった曲を、ふと耳にする度に 「 人気が消えた、雨に霞む Duomo 広場 」、「 オレンジ色に暮れなずむ
Venezia の遠景 」、「 何処までも広がる青い海を見ながら飲んだ温かいレモネード 」といった情景が、鮮やかに胸に蘇る。


 心に残る音楽は、たとえそれが侘しいものであったとしても、時として旅の断片的な情景を忘れ難くする大切な要素になるのだと思う。










 Amalfi 海岸の一本道をバスは進んでいく。


 車窓から見える景色に引き寄せられ、思わずバスを降りる。
 もう二度と巡り会う事が出来ないであろう、美しい風景。時が経つのを忘れて、いつまでも眺め入った。目の前に広がる景色と空気の色が、心の奥深くまで染みていく・・・。



 辺りが暗くなる頃、我に返り、通り掛かりのバスに手を上げて飛び乗る。

 どんな音楽が似合うのだろう・・・


 バスの座席に着き、暮れていく遠い水平線を見ながら、ふとそう思った。

南の教会

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 南に下るにつれ、教会の外観は小さくなり、その肌は透き通るように白くなる。



 北から南進し、Napoli を過ぎれば、大きな街は殆ど見えなくなる。
 その代わり、海岸沿いに点在する、「 南の田舎街 」 が持つ、愛らしい程に長閑な、低い家並みが印象深い。北中部の都市に在る様な、豪奢で巨大な風景は、一向に手に入る余地も無いが、柔らかい海風を吸い込むようにして並ぶ、彩り眩しい小さな家々を眺めていると、時間の流れが心なし緩やかになるようで、心弾む。





 南の小さな街には、小さな教会がよく似合う。
 周りの家並みよりも、少しだけ頭が出る位の背丈が丁度良い。引き気味に仰ぎ観て、その全てが視界に入る
facciata の外壁には、質素な薔薇窓で充分と思わせる様な、南の 「 白 」 が相応しい。特有の眩しい陽の光が、その 「 白 」を照らし、南から吹く伸びやかな潮風が、教会前の campo を抜ける時、街の小さな教会は、南イタリアという風景の中で、一層輝きを増す。





 砂糖菓子の様な鐘楼が、不意に、昼の鐘の音を響かせる。
 蒼い空に登って行く、爽やかな音色もまた、「 南 」 らしい。





 南イタリアの街角・・・

 頬を撫でる潮風、アーモンドの花の匂い、遠くから聞こえる海鳥の声・・・

 そして、白い教会。

身震い

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 Baroque の奇観は、夜毎、怪しく Roma に映える。



 23時過ぎ、人通りの少なくなった Roma は、Baroque 彫刻の美術館となる。
 昼間、観光客の嬌声を他所に、ひたすら黙した彫像達も、闇夜が、その周囲を包むと、存在を誇示するかのごとく、途端に雄弁となる。大理石の裸身は、淡く黄色い街灯の光を受け、漆黒の闇に怪しく浮かび上がり、生きているかのような動きを伴って、見る者の目を惑わす。


 Roma の Baroque 見物は、夜が良い。
 陽が高い時分、路傍の寄像は、ともすれば嘲笑の対象に身を落とすが、ひと度、闇夜を纏ったこれらの像は、
Roma の夜を支配する魑魅魍魎の化身となり、その本来の姿を存分に露わにする。水を吐き、天を衝く怪しい姿に、初冬の寒気と相まって、恐れおののく様な身震いを感じたら、それはすなわち、Baroque の真髄を体感した事に等しい。





 夜の Roma という美術館。
 此処かしこに点在する Baroque の「展示品」は、眠る前の刺激としては、少し強過ぎるかも知れない。

Rilke の朝

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 朝、ベッドの中で目が覚めつつ朦朧としていると、一瞬、自分が何処にいるのか分からなくなる。



 木枠の格子を通して入る斑状の朝日が、いつもと異なる方角から差込み、漸く旅先の一室と悟る。
 昨日まで滞在していた Milano のホテルの部屋に入る、薄く冷たい初冬の陽光も、Firenze まで下って来ると、心なしか柔らかい。Milano では、部屋の中に何処かしら漂う 「 北 」 の冷たい空気を感じ、否応無しに目が覚めたが、Firenze では、早く窓を開けて、「 特別 」 な朝の風景を目に入れたい。




 Firenze の朝は、特別な時間が流れる。
 かつて、この街を訪れた若い R. M. Rilke が、Tagebücher aus der Frühzeit を記した時と同じように、「 空気は青みを帯び、全ての対象が、輪郭の細部を明確に見せる 」 ような、初冬の朝の風景は、常に心を捉えて離さない。「 花の都 」 が創る、清廉な空気は、自身を包み込み、「 花 」 の色を一層際立たせる。Rilke の詩句は、
Renaissance という栄光の時代より、変わらぬ深みを持って、この街に映る特別な風景を知らしめる。





 朝食を終え、cuppuccino のカップを傾けながら、遠く Duomo の巨体を眺める。

 青みを帯びた空気を通して、Duomo の姿が明瞭に街の風景に浮かび上がる。


 Firenze らしい 「 朝 」 の風景。










Aus vollen Früchten flüchtet sie sich
Und steigt aus betäubenden Träumen
Arm ins tägliche Tun.


R. M. Rilke : Die frühen Gedichte ( Gebet der Mädchen zur Maria )

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