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イタリア旅行に関する記事です。
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pittoresco

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 Venezia を一言で表現するならば、“ picturesque ” が相応しい。



 試みに、両指の人差し指と親指で囲った「額縁」を通して、Venezia を観る。
 Rialto の優美な白亜の傾斜、遠く霞む S.G. Maggiore の印象的な伽藍、或いは、San Marco が抱える丸みを帯びた巨躯は、その構図に何ら足される事なく、壮大な「1枚」となるだろう。この街を統べるようにして佇む巨大な建築物は、訪れる人全ての目線を惹き付け、Venezia という「絵画」の妙を存分に知らしめる。


 しかし、「大絵画」に目を奪われる一方で、この街の枯れた「小絵画」の魅力も忘れ難い。
 「大絵画」の世界から抜け出して、漫然と「迷宮」の中に歩を進めれば、決して強い光を放つ事はないが、忘れ得ぬ「小絵画」の景観が此処かしこに散らばっている。「狭い路地裏の入り口に掛かる東方風のアーチ」、「1日中陽が当たらない campo の特徴的に組んで敷かれた石畳」、「名も無い小さな水路の奥に物言わず佇む小橋」、そして「傾いた家の窓に吊るされた terracotta と白いゼラニウム」・・・
 こうした「構図」もまた、Venezia が創る、もう1つの「絵画的」魅力となろう。


 そして、この「小絵画」こそ、picturesque な雰囲気を、この街に与える大切な要素。





 人が Venezia の魅力に心奪われ、視線を向ければ、それはそのまま1枚の「小絵画」となる。
 風景が「絵」となり、「絵」は、そのまま、この街の景観となる。かつて、Venezia 派と呼ばれる画家達が、写実の技を持って、この街を写し取り、それで良しとしたのと同じように、未だ、Venezia の “ picturesque ” は、絵筆に余分な機知を寄せ付ける事はない。





 街角で売られる小さな「絵」を観て、「小絵画」たる Venezia の景観の中に、入り込んで行くような感覚を期せずして憶えた。

赤い実

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 pyracantha の実が赤く色付くと、Toscana の秋も足早に深まる。



 街を離れ、Toscana 特有の丘陵地帯に立てば、もう既に、秋は「熟して」いる。
 すっかり冷たくなった風が起伏の木々を揺らすたびに、その葉の色は刻々と季節の色に変わって行く。盛夏の気配と余りにも対照的な、高い空、流れる雲、そして透き通った空気。季節を彩る断片の1つ1つが、明瞭に映る丘陵の秋は、何処までも広がり、眺める者を小さくする。





 季節の色が深まる Toscana の丘陵には、pyracantha の赤い実が、良く似合う。
 冷たい風に煽られて、その荒々しい独特の「棘」は、益々、鋭利に固さを増すが、それに守られるようにして生る小さな赤い実は、愛らしい。丘を染める落ち着いた秋の風情は、華やかな花の色を決して欲する事はないが、唯一、小さな実が発する印象深い「赤」だけは、その風景に優しく受け入れる。遠くまで広がる Toscana の秋色に、点々と撒かれた pyracantha の「赤」もまた、この土地を彩る、独特の断片になろう。





 黙して佇む糸杉を残し、丘陵地帯が季節の色合いに支配される Toscana の短い秋。


 pyracantha の実が、露を吸って熟し、その赤色が起伏の斜面に目立ち始める頃、もう次の季節が近くまで迫っている。

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 『徒然草』の十一段目に、「神無月の頃、来栖野といふ所を過ぎて・・・」という一節がある。



 神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入る事侍りしに、遥かなる苔の細道を踏み分けて、心ぼそく住みなしたる庵あり。木の葉に埋もるゝ懸樋の雫ならでは、つゆおとなふものなし。閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに、住む人のあればなるべし・・・。





 山里深く分け入っていくと、小さな庵がぽつねんと眼前に現れる。
 このような山奥にも人が住み、世人知れず生活を送っていることに対する憧憬・・・。そう伺わせる一節に触れ、思わず遠くを見て溜息をつく。世間と交わりつつ暮らす生活の営みもあれば、世俗に背を向けて孤高のうちに暮らすのもまた然り。どちらを選ぶにせよ、人がそれぞれの生活を営む姿に対する共感は尽きない。







 Leonardo の生地、Vinci 村へ足を運ぶ途中の山道から、1軒の小奇麗な農家が見えた。
 眼下に遙か遠く街並みを見下ろす小高い山にぽつりと佇む小さな家。そこで静かに暮らす心持ちは、どのようなものであろうか。


 綺麗に並ぶ terracotta の植木、柔らかいクリーム色の家壁、木枠の丸窓、夜毎その夜景が映る庭先を照らすであろう愛らしいランプ・・・。そのような物1つ1つに、ここで暮らす人の姿を推し量ることが出来る。


 ふと、庭の一隅に掛かる「洗濯物」を見て、此処にも生活の営みありと感じ、鬱蒼とした山中の一本道を行く心細い旅の心に安心を取り戻す。







 『徒然草』第十一段の後談・・・

 ・・・かくてもあられけるよと、あはれに見るほどに、かなたの庭に大きなる柑子の木の、枝もたわわになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、此の木なからましかばと覚えしか。





 庭先のオリーブの木に「囲い」がないことを見届けつつ、ほっとして先の道を急ぐ。

稜線

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 ヴァカンスの終わった海辺は、いつも寂しげに目に映る。



 嬌声と共に弾けた波音も、やがて薙ぎ、穏やかな潮騒が、冷えた海風に乗って耳に届く。
 Amalfi を包んだヴァカンスの享楽は去り、小さな海辺の街に、また静かな季節が訪れた。夏の空から狂おしく降り注ぐ、強い日差しが弱まって、それを映した「青い」海面が、柔らかい「緑色」に変わる頃、この街も「寂しげな」季節が近付いた事を悟る。


 誰も居なくなった夕刻の波打ち際に、「夏の断片」は、もはやない。
 山肌に点在するレモン畑から漂う爽やかな香り、ホテルの窓から漏れ海面を幾重にも照らす光、海岸沿いのリストランテから聞こえるグラスを合わせる音、そして、息を飲む程に美しい Amalfi の海を心に焼き付けようと、時間を忘れて遠く見つめて立ち尽す人の波・・・。そういう「夏の断片」が音も無く去り、いつの間にか冷たくなった風が頬を撫でると、1つの季節が終わる時に胸を締め付ける、特有の寂しさが静かに忍び寄る。「夏の断片」の記憶が、心に濃く残る程、そして海辺で過ごしたヴァカンスの思い出が、鮮やかに蘇る程、「寂しげな」海の色も、その色を増す。





 ヴァカンスが終わった Amalfi 海岸。
 海辺近くまで迫る、切り立った石灰岩の稜線に、薄い秋の陽が沈む。

 「寂しさ」を僅かに癒す光景。
 夏の Amalfi の海に心奪われた人達と同じように、稜線が夕闇で見えなくなるまで眺め続けた。










If you were coming in the Fall,
I'd brush the Summer by
With half a smile, and half a spurn,
As Housewives do, a Fly.


・・・ E. Dickinson : If you were coming in the Fall

彫像達

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 街中に数多ある彫像が、「永遠の都」を形成する重要な一部であるならば、きっと「彼ら」は生きている。



 ローマの街角で、試みに振り返って背後を見れば、其処に必ず何がしかの彫像がある。
 時代も様式も異なる無数の彫像に興を覚えて目線を移せば、それらがローマという「古都」を演出する些か凝った趣向である事に改めて気が付く。ローマがローマである為に必要なのは、享楽な生きた人間ではなく、むしろ人の形をした、石製の動かぬ彫像の方であるかのようだ。


 ローマ時代の彫像は、その精巧さで、バロックの奇像は、その流麗さを持って命を吹き込まれる。
 ヴァチカンの『ピエタ』や『ラオコーン』に目を奪われる一方で、黙して語る事のない無数の「生きた」彫像が、ローマのあらゆる場所に静かに立っている。生身の人間が『ピエタ』や『ラオコーン』を観て感嘆の息を漏らす時、街中に佇む名も無き無数の「彼ら」は、一体どのような視線を人間に、そして古都に投げ掛けているのだろう。その視線は、たとえ風雨に晒され、その体躯に幾ばくか「年月」の傷跡が浮き出ようとも、決して光を失う事はない。風雪を耐え、気の遠くなるような時間と共に、この街を見続けてきた、「生きた」彫像が、古都ローマに相応しい。





 ローマを歩き、ふと何かの視線を感じたら、そこに「彼ら」がいる。
 古都の来歴を黙して見続けて来た「彼ら」の視線。

 やはり、ローマの彫像達は、生きている。


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