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左党の資質充分なりとの自覚がありますが、甘味も決して好まない訳ではありません。
どちらかと言えば、和菓子の類を好みます。
中でも、和風菓子の王道である 「 あんこ 」 ものには、結構拘ります。団子、饅頭、どら焼きに到るまで、和菓子の命運を決すのは 「 あんこ 」 ですから、小豆を原料としていれば、瑣末は問わない ・・・ という甘言は、耳に疎く響きます。幸いながら、近所に創業 80 年を謳う老舗があり、口寂しくなると、幾種類かを詰めて貰い、自宅で楽しんでいます。「 晴は漉し餡、雨は粒餡 」 という、どこぞの食通が金言を残している様ですが、「 あんこ好き 」 にとって、天候の趨勢は二の次で、「 漉し 」 であろうが 「 粒 」 であろうが、訳隔てなく美味しく頂きます。
洋菓子に目を転じても、舌先は萎えません。
「 洋菓子 」 と一口に言っても、国、或いは地方・地域によって、その嗜好も異なる筈ですから軽々に論じる事は出来ません。しかし、イタリアにおける甘味、いわゆる dolce が、広く洋菓子界に覇を唱えるという事に関して、真向異論を挟むべく余地は無いと思われます。個人的には、有象無象の甘味を総称する流行語である 「 スイーツ 」 なる軟弱よりも、「 dolce 」 が持つ重厚無比な言葉の響きを好みます。案の定、イタリアに旅行する際は、行く先々で様々な dolce を楽しみます。
信頼の置ける ristorante で供される、華やかな dolce を楽しむのは、無上の喜びです。
以前にも、この書庫でご紹介した通り、dolce の類は、他の調理体系とは全く存在を異にします。従って、主たる料理の制作に精魂を使い果たして限界を自認する店では、出来合いの dolce を用意して、お茶を濁すという事にならざるを得ないのは、至極当然です。その反対に、異体系の dolce 制作まで心血を注ぎ、専門の作り手を常駐させるような店は、相応に期待する事が出来ます。そのような店では、主たる料理を楽しんだ味覚に、全く別の喜びを与えるような 「 甘味一品 」 に出会える事でありましょう。いずれにしても、「 料理は美味しかったけれど、最後のドルチェがねえ ・・・ 」 とならない為には、この辺りの事情を充分に斟酌して、旅の一食を委ねる店を選ぶべしという論に帰結します。
街を歩いている中途に、見掛ける専門店の dolce も悪くありません。
どの店も、店頭のガラスケースに、これ見よがしに自信の品々を展示していますので、思わず食指が動きます。地方の名物から、その店独自の創作に到るまで、百花繚乱、どの dolce も存在を誇示します。専門店で目に付く物の中には、gelato も含めて、結構な値段が付けられている dolce も少なくありませんから驚きます。結構 「 良い値段 」 の dolce は、分量も相応ですから、油断していると太神楽のごとく、こってりとした盛りを出されるので剣呑です。夕方、歩き回って、少し口寂しいと感じる頃、店先に飾られた美麗な dolce が手招きします。しかし、「 こってり盛り 」 を食べると、この後の夕飯が ・・・ という心配が頭を過ぎると、ガラスケースの向こうに鎮座する dolce 達も恨めしく見える事でしょう。「 大食漢が、真の美食家なり 」 というのも時として名言になり得るようです。
自宅で、「 あんこ菓子 」 を食べる時、「 もう 1 つ食べようか否か ・・・ 」 と迷う事があります。
そのような時は、イタリアの街角で見掛ける 「 ガラスケースの中の dolce 」 を思い出します。「 胃袋の許容体積を広げる努力を、日頃からしておかねば ・・・ 」 という好い加減な理由を付けて、「 もう 1 つ 」 に手を伸ばす事にしています。
追記:
甘味一般を指す dolce という単語は、「 男性名詞 」 ですから、規則通り、複数形は dolci です。名詞の gender は、多分に恣意性が付き纏いますから厄介ですが、dolce が 「 男性名詞 」 である事に、個人的に興味を抱いています。
殆どのイタリア語の名詞は、語尾表記で gender を類推する事が出来ますが、dolce の様に、e 語尾表記の単語は、第一感、gender が判然としません。この記事の 「 タイトル 」 を、敢えて男性名詞複数形で表記し、「 男性名詞 」 である事を前面に出して、「 dolce の利は、本来的に男性にあり 」 という 「 金言 」 を創作して流布しようと、密かに試みている次第です ・・・。
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