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「父からの贈りもの〜森鴎外と娘たち〜」展が、世田谷文学館で開かれています。
文豪・森鴎外には於菟、茉莉、杏奴、類と、夭折した不律という、
モダンな名前の5人の子どもたちがいました。
その中でも森茉莉、小堀杏奴は作家・エッセイストとしても有名です。
娘たちは父のことを“パッパ”と呼び、「それは私の心の全部でした(茉莉)」というくらい、
敬愛していました。父・鴎外も「おまり(茉莉)は上等」と可愛がる…
彼女たちの幼い頃に描いた絵やお手紙もきちんと保存され、
鴎外が赴任先から出した、読みやすいように大きな文字で書かれた絵葉書、
娘(杏奴)のために作った75ページにもなる手書きの歴史の教科書もありました。
子ども達の洋服はヨーロッパに発注し、シベリア鉄道を使って届けられ、
鴎外が茉莉のために買い求めたモザイクのネックレス(写真)のなんと優美なこと。
鴎外愛用の外套(コート)とステッキも展示されていて、
厚地ウールのコートは、葉巻=父の香りがした、という一文が思い浮かびました。
展示の中で、胸を打ったのは、鴎外の危篤〜逝去までを
既にパリに留学中だった姉・茉莉に伝える妹・杏奴の“手紙”でした。
このとき彼女は13歳。薄い水色の便箋に書かれた手紙は、
大好きな父を亡くしたばかりなのに、姉に「泣かないでね」と健気に伝えています。
幼さの残る文字は、最初が丁寧に、4枚目は少し乱れながらもしっかりと書かれていて、
展示ケースの中の手紙を読みながら、涙を堪えるのが大変でした。
見ごたえあるものが満載の、楽しい展示でした。
つづく。
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