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 “パンに刺さったペン”がシンボルマークの『賣文社』。
 ペンとパンの交叉は即ち私共が生活の象徴であります、という文章で始まる広告で、
これは社会主義者・堺利彦が興した会社でした。

 社会主義者と言えば…どうやって生活していたのだろうと
考えてみたこともありませんでした。
演説をすれば中止させられ、投獄、拷問で命を落とした小林多喜二のような人の
イメージ…会社勤め?教員?みんな無理そう。

 それを文章力(ペン)や企画力で生活が苦しい仲間たちの糧(パン)を得るための組織を作った
堺利彦のバランス感覚は、あの時代に貴重なものだったのでしょう。
 
 「売文社」の仕事の中には“名付け”もあったようで、男の子の名前
一文字ならば碧(へき)、黙(もく)、閃(せん)
二文字ならば野火(のび)、眞玉(またま)、荒砥(あらと)なかでも野火がいい…
と、答えています。今でもなかなか素敵な候補たちです。

 堺利彦の生い立ち、交流関係(関係する人々)を、丹念に調べたこの本は、
まさに“労作”、読むだけでも随分時間を要しました。
 でもなかなか面白く、途中でやめたくなることはなかったのですが。

 著者の黒岩比佐子氏は、残念なことにこれが最後の本となってしまいました。
こんなに緻密なものが書ける方なのに、若すぎる逝去が惜しまれます。

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