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この本を借りてきたのは、単に美術品に興味があったという理由だけでしたが、 先日見た「ボストン美術館展」の展示品の中に「山中商会から購入」という表示を見つけ、 やはりボストン美術館も顧客だったのかと、その繋がりは納得でした。 表示されていた2点は能衣裳(唐織と縫箔)でしたが、 この本の89ページに“スコット・フィッツ夫人が寄付”と表示されたものもありました。 それは「芥子図屏風」。右側は下の方に細かなけしの花が幾つも並んで描かれ、 左は大きく大胆に、咲いている赤い花が数本、なかなか美しくおしゃれなものでした。 この本の主人公・山中定次郎は1866年生まれ。 古美術商の父を持ち、丁稚から身を起こし、最盛期にはニューヨークやボストンなどの アメリカ、さらにロンドンにも支店を開いていました。 定次郎が渡米し、最初の店を構えたのは1894年。ナショナリズムの昴揚が叫ばれた頃で、 日本の美術工芸品は生糸と並んで重要な外貨獲得の手段でもありました。 カタログだけでなく“展覧方式”を取り入れたのも山中商会が最初だと言われています。 アメリカのロックフェラー家との繋がりもあって、ニューヨークの目抜き通りに 店を構えるようになり、英国王室の御用達でもあるなど、美術品を購入する階層は 華やかな顔ぶれです。 第二次世界大戦を機に、アメリカで得た財産(美術品)は売り払われ、 廃業を余儀なくされて、その後の日本では名前を知る人も少なくなっていたようです。 私もこの本をたまたま借りてきている時に「ボストン美術館展」を見に行って
興味が深まり、何度も見返してしまいました。 また著者の朽木ゆり子氏の著作は、フェルメール関係で何度か目にしたことも有り、 親近感が湧きました。 |

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