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リー・ミンウェイ(李明維)の日本初の個展。
展示室に入ると、プレゼントのように茶色いリボンか十字に掛かった木箱が
一段高い畳敷のスペースに並び、「作品」らしきものが見あたらない。
これは、子供時代から残る手作りの布製品を一般から集め、思い出をつづった
テキスト(文章)と共に収めた木箱を来場者が自由に開いて鑑賞する
「Fabric of Memory」(記憶の織物)。
その木箱をあけるため、靴を脱いで座敷にあがる趣向です。リボンを解いて蓋を開けると、
中には古い着物やワンピース、パッチワークのブランケット等が入っていました。
直接見えないよう、紗の布が張られ、蓋の裏に持ち主の思い出の文章が
貼り付いていて、読みながらしみじみ眺めると、みんな深い思い入れがあって、
涙を堪えるのが大変。
七五三の着物、夜なべして作ったパッチワーク。それぞれに家族の物語があって、
ありありと情景が浮かんでしまう…。私がそこそこの年齢になっていればこそ、
こうして感動できる、ということに「感動」します。
一番印象に残ったのは、50年前のワンピース。
小学校の入学式に間に合うように縫われたベルベットの丸いヨークの切り替えが入った、
当時としてはモダンだったと思われる、黄緑色の服。前日遅くまでかかったことにも、
ちっとも疲れを感じない…。
全く同じ経験が私にも娘の七五三のワンピースでありました。
徹夜で縫いあげて、着せたら疲れは吹っ飛びます。
亡き母が心を込めて作ったワンピースを、娘が大切に保管してくれている…
添えられていたモノクロ写真が、涙で見えなくなってしまいました。
こうしたアートも「有り」なのでしょう。
リボンは、必ず見た人が再び結んでおくことが鉄則です。
私は結ぶことも大好きだから全部(約20点)見ましたが、
会場にいた男性は1つ見て、残りは諦めた様子でした。
「記憶」を作品とする、おもしろい趣向の展示でしたが、予想外に心が動かされ、
この作家との出会いに感謝、です。
※庭に咲いていた酔芙蓉。母の名前にはこの花の1文字が使われています。
(記事とは関係ないですね…。)
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