|
同じ数学科を一緒に卒業した美術部の後輩と、久しぶりに会った。
当時の破天荒な生活の拠点となっていた懐かしの飲み屋で、二人は、再び、学生に戻った。
夕方になると出没し、飲み仲間にたかっていた僕に、いつも同行していたのが彼だ。
そんな人生の悪友も、いまでは、業界第2位のCG製作会社の取締り役員になっている。
彼の豪快なビジネス話に驚かされ、到底、僕の太刀打ちできる相手ではないと、思った。
そこで、最後の決め手【芸術】に話をもっていった。
すると、彼は自慢げに、こう言ったのである。
「ウチには芸大の学生とかがいっぱい絵を持って面接に来る。
確かに凄い絵もある。だけど、俺が見るのは、売れるかどうかだ!」
それを聞いた僕は激怒した。
「ばかやろう!だから、お前はだめなんだ。
ビジネスとして見るんでなく、お前の純粋な気持ちでどうなんだ?」
それでも、彼は言った。
「売れない絵は認めない!」
どうやら、彼とは【芸術】に対する考え方が180度違う。
そして、それが互いの人生を決定付けたのかもしれない。
僕は、そう思った。
そばで、聞いていた美術部の後輩も、僕にアドバイスをしはじめた。
「売れる絵を描くことを考えたらどうですか?」
そうではない。
売れるか売れないかは結果であって、作家がそれを考えるべきではないのだ。
作家は、あくまでも自分の信条で絵を描き【作品】を完成させなければイケナイ。
それを【商品】としてどう売るか?と考えるのはプロデューサーの仕事だ。
そして、本当に立派なプロデューサーは、作家に注文などしないのである。
ただ、作品の仕上がりをじーっと見守って、作家の心情に配慮する。
そのように、しっかりと作家を育ててくれる人は、もう、この日本では皆無に近いかもしれない。
だけど、僕は、そんな人にこそ、絵を見てもらいたいのだ。
そしてココこそが、新しい文化を芽生えさせるために、絶対、守らなければならない領域なのである。
僕と同じように「芸術への飽くなき追求に挑戦している人たち」に向かって、僕は言う、
『売れる絵を描こうと思うな!』
|