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久々に美術部の連中と会ったのは、突然死したTの墓参りだった。
彼は、高校時代から悩み多い少年だったみたいで、ドラッグやリストカットの常習犯だった。
3浪して哲学科に入ってきて、美術部では、陶芸をやっていた。
そして、ボブ・マーリーをこよなく愛する男だった。
大学卒業後は、SEになったが、本当に勤まるのかどうか? 僕には、心配だった。
暫く、会っていなかったが、よくない噂が流れてきた。
「電車に飛び込み、自殺しようとした・・・
どうも、それは未遂に終わったようだったが、ある日の朝、寝床で死んでいたらしい。
墓参りの日に、「やっと、労災がでました。」と、奥さんが話してくれた。
仕事が過酷で、殆ど睡眠が取れなくて、どうも鬱だったみたいである。
実は、SEの自殺の話はよく聞く。
自殺までは行かなくても、通勤できなくなったとか、人と会うのが怖くなったとか、
なんらかの精神疾患がある人は急増している。
そんな訳で、今、IT業界では、
SEを自殺から救うシステム『メンタルヘルスシステム』に注目が集まっているという。
この異常事態に、どうやら政府が動いたみたいで、
メンタルヘルスシステムの制作・普及には、助成金が出ているそうだ。
先日、僕は、その『メンタルヘルスシステムの開発』事業に名乗りを上げた企業の面接にこぎつけた。
ひょっとしたら、亡きTが、僕をその会社にめぐり合わせてくれたのかもしれない。
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