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壁板を背にして足を投げ出している倉石先輩が見えました。
しかし竹刀はしっかりと握っています。先輩は神崎の物凄い突きを竹刀の鍔元で受けきっていたのです。
「や、やめ!」
一旦、キバが試合を止めて倉石先輩を抱き起します。
「まだやれますか?」
「当然だ。見切ったぜ」
先輩は楽しそうに中央線へ歩いて行きました。
神崎は少し不思議そうな顔をして、中央で先輩と竹刀を構え直しました。
「ひゃじめ!」
キバは緊張のためか、声が上ずってオカマちゃんのような口調になってしまいましたが顔はオッサンでした。
すかさず先輩は体をかがめて、抜き胴を仕掛けて行きました。
神崎はかわし切れずにそれを竹刀で受けると、少しよろけて体制を崩していました。
そこへ先輩は会心の刺し面を放ちました! シュン!! だがさすが神崎、紙一重でかわし、がら空きだった小手へ打ち込んで来ました。
スパンッ!!!
「い、一本!!」
神崎の2本先取。倉石先輩の負けです。
しかし、勝者のはずの神崎に笑顔はありませんでした。
「はぁはぁ・・・」疲れ切っている先輩にMさんが駆け寄ります。
そんなMさんを見ながら、切ない胸を抱えている僕が居ました。
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