|
ざわざわざわ・・・・・
立ち尽くすわたしたちの横を何人もの人が通り過ぎていく
「・・・・。」
「・・・・。」
たつきに強く腕をつかまれたまま
わたしはそこから動けずにいた。
たつきが黙ったままわたしを見つめる。
「・・・・?」
ふいに、見つめるたつきに何か”違和感”がした
息もかかりそうな距離でたつきはわたしを見つめている
見つめているんだけど
けど・・・・
「・・・・。」
たつきの目は、”わたし”を見ていないような気がした
もっと、もっとわたしを通り越して
別の”なにか”を探しているような。
なんかそういう言い方はおかしいのかもしれないけど
確かにそのときのわたしはそう思ったのだ
ゆらゆらと揺らぐ瞳を覗き込みながら
「・・・・・たつき?」
とわたしが聞き返すと
はっ。
となにか夢から覚めたかのように
たつきが我にかえったかと思うと
ぎゅっと握っていたわたしの腕を見て
「・・・・ったく。タバコ落としちまったじゃねぇかよ。」
と言うと、ばっとわたしの手を払った
「・・あーあ。もったいねー。」
たつきはそう言うと、わたしから目をそらして
道路に落ちてしまった、半分以上燃えてしまったタバコを
見下ろして、くしゃくしゃと髪をかきあげた
「・・・・。」
たつきが握ったところが少しじんじんした
わたしは腕をさすりながら、たつきを見つめると
「あ・・・あんたが悪いんでしょう。・・怒るような事言うから。」
と言って、そっぽを向いてしまった。
なんとなく、気まずかったのだ
「・・・お前にかかわるとろくな事ねぇな。」
たつきはそう言いながら、タバコを靴でぎゅっぎゅっと
もみ消した。
「・・なによそれ。」
たつきを振り返らずにわたしがそう言うと
たつきは少し、黙り込んだ。
「・・・・?」
とわたしが振り向くと、たつきはまたポケットから
タバコを取り出して、口にくわえると
ライターで火をつけていた。
ぽぅっとまたたつきの口元が一瞬
明るくなって、煙があたりに漂いだす
「・・・・。」
わたしは何ていっていいかわからずに
そんなたつきの横顔を見つめていた。
さっさとこんなやつほっといて
帰ってしまえばいいのだけど
なんとなく・・・・このまま帰りづらかった。
さっきの・・・たつきに感じた”違和感”が蘇る
わたしを見ているようで見ていないあの目・・。
どっかで見たことあるような・・。
たつきの背中を見つめながら、しばらく考え込んでしまった。
どこでだろう?どこで・・?
どこで・・・
さっきのあいつの顔を何度もくり返し思い出して
記憶の奥を探っていく・・・
どこで・・・・
すると、わたしの中である場面とたつきの顔が”一致”した。
「・・・・・ぁ。」
数日目の事
”・・・紀”
大事なキーホルダーを投げ捨てようとしたたつきを
必死で止めた時に見せたあいつの顔
”夕紀!?”
夕方の土手でのあいつの顔
・・そうだ。そうなのだ
たつきはいつも・・・
わたしを夕紀さんを”錯覚”した時に、
そんな目をしていたのだ。
・・・まさかたつき・・まさかね。
やがてそんなわたしの視線にたつきが気づくと
「・・・?なんだよ。」
とわたしをちらりと振り返った。
「まだ何か用かよ?」
ふぅ、と煙を吐き出しながらたつきはまた前をむいた。
「・・・・別に・・何も・・。」
「なら、はやく帰れよ。」
「・・・帰るわよ。」
「もうさっきから何回も聞いてるんだけど。それ」
指にはさんだタバコの灰を
トントン。
と道路に落としながらたつきがこちらを向いた
「そんなに俺といたいの?」
なかばあきれ気味にそう言ってたつきがわたしを睨んだ
「なっ!誰があんたとなんか。」
「・・・じゃとっとと帰れよ」
たつきはそう言うと目をそらしてうつむいた
「・・・・。」
たつきはわたしに背を向けたまましゃがみこむと
「ったく・・・。」
と言いながらタバコを口にくわえた。
タバコの煙がゆらゆらと蒸し暑い空に舞い上がって消えていく
・・・どうしよう。
でも、まさかね・・・
頭の中でいろんな考えが浮かんでは消えていく
でも、もしそうなら?でも、まさか・・
”亜紀さんってなんとなくお姉ちゃんに似てる”
瑠璃ちゃんの言葉が胸をよぎった。
でも似てるっていったってそんなそっくりでもないし
第一わたしと性格だって違うわけだし・・
わたしの中に”夕紀”さんを見てるだなんて
思い上がりもいいところだし・・・・
だけど・・・
否定と疑問が繰り返しては消えていく
でもそんな事、
「・・・・・。」
ゆらゆらとタバコの煙が立ち昇っては消えていくのを
ただだまって見つめながら
まさか・・たつきに聞けるわけ・・・・ないよね
とわたしは小さくため息をついていた。
「・・・・なんだよ。人のことさっきからジロジロと・・。」
たつきが横目でわたしを見ながら、言った。
「別に・・・わたしは。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ふわりと蒸し暑い風が髪を揺らした。
後編へ続く
|