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やがてたつきはゆっくりと視線をそらすと
「・・・お前といると調子狂うんだよ。」
と呟いた。
「・・・・なによそれ。」
「なんでもいいだろ?いいから帰れ。」
少し強い口調でそう言うとたつきは
吸いきったタバコを道路に落として
「・・・あんまり彼氏を心配させんなよ。」
とタバコを踏みつけながらつぶやいた。
たつきの口から出た、意外な言葉に驚いて
「・・・・ぇ?」
とわたしが聞き返すと
「・・・お前が帰らないなら、俺が帰る。」
と言って、はぁ、とひと息つくと
よいしょっと立ち上がって
お店の玄関に転がしていたヘルメットまで
歩いていくと、ひょぃっとそれを手に取って
わたしを振り返ると
「・・・じゃぁな。」
と、短く言って
ガレージの奥へすたすたと歩くと
止めてあったバイクに
ストッ。
と乗り込んだ。
「え?あ、ちょっと。」
あわててそう言うわたしの声をさえぎるように
ヴォン!
とバイクのエンジンがかかるとガレージが
バイクのライトで明るくなる。
「わっ・・まぶしっ・・。」
ドドドド・・・とエンジン音が響く中
「・・・・。」
たつきは目を細めるわたしをちらっと見ると
フルフェイスのヘルメットを深くかぶって
もう一度
ヴォン!!とエンジンをふかすと
勢いよくガレージから出て行った。
「ちょっとっ!たつき!」
そう言っている間に
たつきのバイクは行きかう車をぬうように走りながら
あっという間に見えなくなった
かすかにこげたようなオイルの匂いが残るガレージで
わたしはふぅ、と一息ため息をつくと
「・・・・。」
たつきの残していったたばこの吸殻を見つめた。
「なによ。あれ。」
・・・・・・・・・
[あぶねぇって!]
「・・・・。」
ぎゅっと汗ばんだ右腕を左手で握り締める
たつきの手の感触が、まだ右腕に残っているような気がした
[お前といると調子が狂うんだよ]
「・・・・。」
・・・わたしだってあんたに関わるとろくな事ないのよ
・・・わたしだって調子狂うのよ
あんただけじゃないんだから。
あんたが思うよりわたしの方がずーっとそう思ってるんだから
・・・それにわたしは・・・”錯覚”じゃない。
”錯覚”じゃないんだから。
なんだかもやもやした感情が残る中
わたしは、たばこの吸殻を拾い上げると
「たつきのばーか。」
と。
自動販売機の横のゴミ箱に
ぽいっ
とそれを投げ込んだ。
PM0:30
亜紀のマンション
トントン・・・・
階段をのぼるわたしの足音があたりに響いていた
トン・・・トン・・・
いつもなら一段飛ばしでかけあがる階段を
一歩づつ重い足取りであがっていく。
・・・わたしの部屋まではもう少し
「・・・・はぁ。」
わたしは1階と2階の踊り場であしを止めた
自分の部屋に帰るのにこんなに憂鬱になった事はない
まして、成瀬さんがいる部屋に帰るのが
こんなに気が重いなんて・・・
「・・はじめてかもね・・。」
わたしは一人そうつぶやくと肩にかけたバックを
もう一度かけなおしてふぅ、息を吐いた。
・・・ここまで帰ってきたのはいいけど
・・・どんな顔して会えばいいんだろう。
[成瀬はいつか海外で暮らしたいって・・・]
「・・・・・。」
・・・マスターからあんな事聞かなきゃ・・・
・・ううん。マスターが悪いんじゃない
遅かれ早かれいつかはわかった事だもの
むしろ早く知ってよかったのかも。
でも・・・成瀬さんから直接聞いたわけじゃないし・・
シン・・・と静まりかえった階段の踊り場で
わたしは動けなくなってしまった。
どうしよう・・・どうしよう・・・・
知らないふりして 普通どおりになんか・・・
出来ないよ。
でもこのまま帰らなかったら成瀬さん心配するし・・
そうは思ってもなかなか一歩が出ない。
いっそのこと聞いてしまったほうがすっきりするのかな
でも、聞いてしまったら、わたしは・・
”わたしのこと見てて欲しい”
”自分に自身がないの”
お昼に成瀬さんに言った言葉が
重くわたしの上にのしかかっていた。
・・・あんな事言わなきゃよかった・・・。
「・・・・はぁ・・・。」
そう言ってわたしが何度目かの
ため息をついた時だった。
タンタンタン・・・・・
「・・・?」
ふいに足音がして、わたしははっと顔を上げた
それは誰かが上の階から降りてくる音
週末の夜中だからきっと今から出かける人もいるだろう
わたしは肩のバックをぎゅっと握り締めると
ずっとここにいる訳にもいかないと
「よし。」
と、息を吸って一歩を踏み出そうとした。
その時だった。
「・・・・・?!あれ?」
「・・・・?」
階段を下りてきた人影がわたしを見て立ち止まった
その声は聞いたことのある声だった
「・・・・ぇ?」
そう言ってわたしが
ゆっくりと顔を上げると
その人影がわたしを見つめて
「・・亜紀?」
とわたしの名前を呼んだ。
「・・・・ぁ。」
と思わず呟いて、足が止まる。
「・・・おかえり。」
優しい声が階段に響いた。
成瀬さんがいた。
とくん・・。
とわたしの鼓動が早くなる
どうしよう・・・どうしよう
そんな言葉が渦巻いていく
「・・・・ただいま。」
階段の数段上から、わたしを見下ろす成瀬さんを見つめたまま
わたしはそう言うと
さらにぎゅっと肩にかけたバックを握り締めていた。
It continues to next time・・・
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段々と人間関係が一人で歩き出すようになってきた気がしますw
続きが楽しみですね。。。♪
2007/8/21(火) 午後 9:47 [ - ]