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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

書庫独り言

終戦後のインドネシア・バリ島で、現地独立戦争に参加するため日本陸軍を離脱した平良氏。
三人の仲間、そして後に二十名近くに増えた海軍出身者などの仲間が全員捕虜、行方不明、死亡した後、彼はたった一人となって、バリ島山岳部のジャングルでゲリラ戦をたたかい、3年間生き抜いた。

氏は敵の密偵や村人の裏切りだけでなく、亡霊や魑魅魍魎にも悩まされながら、ときには穴を掘って日中そこに潜み、反撃のタイミングを計っていた。そのときの話を平良氏から細かく聞いていたころ(平良氏は数年前に他界している)、氏だけでなくほかの日本兵たちの派手な活躍や自爆的な攻撃の話に感銘を受けていた私は、「3年間の山籠り」に違和感をおぼえた。人並みはずれた戦闘能力を持っていたにもかかわらず、なぜそこまで自分を抑えられたのか。いや、抑える必要があったのか、と。

もちろん、極限状態に置かれた人の気持ちを想像するのは簡単ではない。一瞬の気分的な落ち込み、自制心のタガが緩んだときに彼のような人は自暴的になる。死に場所を探していたわけではないのだから(氏はとにかく故郷・沖縄へ帰り、母親に会いたかった)当然サバイバルと戦闘のタイミングとバランスをとりながら、それでも絶望の淵に沈まないよう、頑張っていたのである。

日本は今、未曽有の世界的経済危機に巻き込まれ、市井のあらゆるレベルにまで影響が出ている。苦境にあるとき、頼りになるのは折れぬ己の心しかない。

そういえば、先日、某雑誌の取材で元GPライダーの平忠彦(たいら ただひこ)氏に会った。同じ「タイラ」だが、私は彼にも偶然ながら、サムライの面影を感じた。
華やかなGPでの成功イメージが、「汚れた英雄」や「Tech21」CMのイメージに重なり、さぞかし順風満帆な人生を送ってこられたのだろう、と思いがちだが、そこには艱難辛苦のワインディング、恥を捨てたピットインが多々あった。平氏から感じたのは、驕らず、自分を律し、引き際を見極める慎重でときに周囲から「もったいない」と言われるような思いきりの良さが、いかに大切か、ということだった。

平氏は、「無事是名馬」(ぶじこれめいば)=成功などしなくても、無事に走り切れるほうが大切……を座右の銘にしていた。いかに自分の志操を堅持しても、倒れてしまっては意味がない。恥を捨て、がんばることがサムライなのである。

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坂野 徳隆
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