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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

書庫台湾全般コラム

張恵妹(アーメイ)は台湾を代表する女性歌手だが、プユマ族である本名・アミトゥに変えて、初めてのコンサートが台北・信義のホールで26日夜開かれ、見る機会があった。

アーメイいわく、「人間誰しも別の人格を宿している」ため、もうひとりの自分を解放し、表現するために名を変え、レコーディングしたらしい。そうした別名での活動は音楽のみならず様々な分野でアーチストが新プロジェクトでのコラボや気分転換のために行うが、アーメイの場合はもっと深い意味があるらしく、原住民文化に興味のある私としては気になり、コンサートを覗いた。

当日は101タワーの向こうに稲光が走り、今にも振り出しそうな不気味な空が広がっていた。

洋酒ヘネシーがスポンサードしたイベントで斯界のVIPが大勢来場したなか、前座のくだらないオージーDJと女性ダンサーのくねくねショウ、そして蕭敬騰(アーメイと仲のいい、アミ族を母に持つ新人男性歌手)のマの抜けた演出のカラオケショウですっかり疲れていたところに、ようやくアミトゥ登場となった。

一曲目は原住民の歌のようだ。重いリズムと悲しみを帯びた高い歌声。ギター2人とベース、ドラムのロック編成が期待させる。アミトゥは、不死鳥を模したコスチュームと80年代イギリスのサイケパンクロック系メイクで、怪しい雰囲気を醸す。照明も随時後方からの照射で、なかなか顔を見せない演出。デスノートの悪魔が現れたような不気味さで、ステージ中央、17CMのハイヒールを履いたアミトゥは、静かに上体を揺らし、立ちすくむ。

メディアムテンポの少し暗い曲調の二曲目で、It's a bullshit とコーラス部分を歌いながら、セリに出て腰をひねらせ、舌先をペコチャン風に出すアーミトゥ。最近アダルトに向かう気配のある、元は健康的な原住民系歌姫が、やはりこっちの路線へ行ったのね、と頷く瞬間である。セリのすぐ前から見ていたため、表情も、ノーパンの腰も、よく見えた。洋酒のスポンサーが配るグラスを次々と空けていたためか、見ているこちらのテンションも上がる。

数曲、ロックバラードの新曲を披露したところで、X−JAPANのバラードを上手な日本語で披露しながらショウは続いた。ここでアミトゥが今回の新名での活動をはじめた理由を告白する。「むかし、X−JAPANを初めて聞いて感動し、歌手になろうと思った。もともとロック歌手になりたかった」

つまり、売れ線の流行歌謡ではなく、売れないロックを本当は歌いたかったらしい。「分裂」に象徴されるように、もう一人の自分……本当の自分に戻ったアーメイ。ロック、あるいはアダルトパンクの方向に向いた新しい彼女の活動も、今後楽しみである。

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坂野 徳隆
坂野 徳隆
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