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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

書庫台湾全般コラム

先週、台湾のレコード大賞「金曲奨」の授賞式典を初めて台北アリーナで見た。
奇妙だったのは、台湾や香港の歌手よりも韓国のゲストグループにより大きな声援があがっていたことだ。Super Juniorだか巨大ジュニアだか知らないが、僕も初めて見た韓国「ジャニーズ系」の歌って踊る全員青年のグループで(と形容するといかにも書き手がオヤジらしいが)、このどうでもいいゲストに対する台湾人女性のフィーバーぶりがすごかった。
なぜ台湾で韓国人アーチストが人気なのか。韓国と台湾はもともと利害関係の悪くない国同士だが、変態韓国人の発言が活発化したせいで、最近はかなり嫌韓の風潮が高まっていたはずである。もちろん韓国ドラマは依然お茶の間で不動の人気がある台湾。おそらくそのせいかもしれないし、もともと台湾人はあまり細かいことにこだわらない。

そんなグルーピー天国台湾へやってきた韓国ガキたちは、楽しそうにハングルで挨拶し、ハングルで歌っていた。日本ではあまり見られない風景だ。台湾人に言わせれば、朝鮮人は歌や踊りがとても上手な民族であり、そうしたアーチストが人気を博すのは当然らしい。なるほど、確かに踊りも歌も上手だ。しかし十数人の中に混じって、デブが一匹冗談のようにいたのは、なんだ? あれは冗談なのか? 最後までわからないまま、タイワンシャオチエたちの黄色い歓声に飲み込まれ、彼らは白いスーツの影をこちらの網膜のなかに引きずりながら、消えていった。ショリー、ショリー、ショリー、ショリー(知っている人しか知らない)

さて、台湾の音楽界は、日本人にはどのようなところに映るだろうか?

中華圏のひとつのマーケット、そして案外日本人ファンも多いアーチストの揃ったところか?

ざっと地球を見回すと、中国語で歌うアーチストのいるところは当然シナ人のいる赤い中国とその盲腸の香港、華人の多いマレーシア、その先っぽに鼻くそのようにくっつきながら、限りなく赤に近いシンガポール、そしてここ台湾といったところだろう。
共産シナは百万年遅れているので、広東語圏ながら香港がこれまで北京語芸能界の世界的中心を台湾と二分してきた感がある。そこに西洋かぶれしたシンガとおまけのマレーがついているようなところか。台湾はこれらのなかで中心的な位置を占めている。その理由は人材の豊富さだろう。歌のうまい原住民の血が混じっているため、潜在的に歌唱能力の高い人が多い。ショリー、ショリー、と同じ理由だ。さらに、香港と同様に日本や欧米そのほかの影響が早くから強く、多種多様な音づくりの知恵がインプットされている点も大きい。

つまり、台湾は中華圏音楽界の中心なのである。

香港で売れず、台湾で売れて逆に大陸で有名になった例も多い。裕福で香港の倍以上の人口がある台湾はもともと購買力のあるマーケットだったのだ。しかし情勢は変わってきている。去年、台湾のCD販売額は40%も落ち込んだという。日本の出版界が5%のマイナスで真っ青な顔をしているのに、4割だ!
CDは買わずに違法コピー、ダウンロードするために、このありさまである。よく音楽関係者は生きていると感心せざるをえない。

そんな情勢だから、中国マーケットに色目をつかい、最優秀賞ながら欠席した周杰倫のようなやつもいるのは当然だろう。しかしシナが経済で独り勝ちのいま、そのシナを動かすような力を音楽畑で持ち、駆使しているのが台湾でもあるのは、見逃せないし、面白いと思う。アメリカに犯されてもアメリカを好きになった日本人はハリウッド映画や音楽にやられたのだろうが、台湾もミサイルや核で勝てないのなら、音楽爆弾を打ち込んでやれ、と突飛で大げさな想像をしながら、金曲奨を見た。

賞は、国語(北京語)、客家語、原住民語とわかれて発表されるが、国語はもちろん蒋介石の中華民国の
言葉、繁字の中国語だ。歌っても、台湾人の中国語は大陸の中国語とは発音や言い回しも違うため、台湾歌謡になる。台湾臭い五百や陳昇そのほかが台湾独自の歌謡文化を発信してきて、その先にさらに発展する独自の音楽文化がつづくのを祈る。その国の存在感を高めるのは、いつの時代も文化の香りだからね。

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坂野 徳隆
坂野 徳隆
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