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「なに、南飛行場? そりゃ、すぐそこだよ」と、親切なおじちゃんがバイクで先導してくれた。
日本時代に宜蘭の中心的な飛行場として作られ、鹿児島とともに沖縄の米軍を挟み打ちにするため特攻作戦が行われたのが、この飛行場である。グーグル地図では簡単に探せても、現地では標識類はいっさいない。おまけに建前上は一般人立ち入り禁止である。国民党時代から軍用空港として舗装され、使用されてこなかったオバケ滑走路だ。
稲光の走る怪しい空をにらみながらおじちゃんのバイクを追うと、草ぼうぼうだった野原の視界が晴れ、いきなり、ポンッと、滑走路のすぐ西端に出た。まっすぐ延びた滑走路の先に、亀山島が大きく浮かんでいる。おじちゃんは停まらない。目指すものが別にあるからだ。しかし、その一瞬見えた景色の美しいこと。同時に、ここを飛び立つ特攻隊員の目に映った景色が、これほど大きな、地平線に浮かぶ島の景観だったことに、不思議な驚きがこみあげた。
その十分後に同じ場所へ戻ってきたが、夜まで続いた雷雨に包まれ、島影はずっと見えなかった。まるで一瞬だけ、自分の目のなかに幻のように残る、カメの浮かぶ特攻隊滑走路の景色である。
写真は、宜蘭県員山郷で、出撃前の戦闘機を格納する掩体壕(かまぼこ型のコンクリート製格納庫……周辺にはこうした壕が無数にある)。当時木材でデコイを作った同じ人が縮小サイズでこのヘンテコリンなお休み処壕の屋根に取り付けたらしい。
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