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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

書庫F1

インディカーのパドックやピットレーンで、迷彩を着た奇妙な人々を大勢見かけた。
彼らはNationla Guard、いわゆる州兵と呼ばれる人々だった。
 
州兵は国防省直下の非常勤兵士で各州に属する、いわば警察と軍の中間のような人々だ。十年前までは国内の自然災害や暴動が発生したときに駆り出されるのみで、普段は教師や警官からトラックドライバー、セブンイレブンの店員、あるいは精神科医まで一般の仕事をこなしていた。連邦軍に組み込まれ、海外派遣されることもあったが、ほとんど稀なケースのみだった。
しかし、911テロが起きてから、事情は一変する。
州兵は積極的に連邦軍に組み込まれ、イラク戦争やアフガニスタン紛争に派遣されるようになった。その数は一時的に正規兵を上回る場合もあるほどだったといわれる。
全米で50万人いる州兵は陸軍と空軍からなり、海軍はいない。陸上作戦が主な上記紛争地帯では便利な補充人員である。しかしそれはあくまでも政府から見た場合であり、本人たちは大変だ。職業軍人ではないため、休職場へ復職したときに、環境変化に対して精神的、肉体的に順応が難しいのはもとより、クレジットクランチ以来の悪化した雇用情勢下で不当に解雇されたりと、問題が多く発生している。
 
州兵募集はNASCARで長い間おこなわれていたが、二年前からインディカーにも触手が伸びた。
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(これは2010年4月、第二戦フロリダ・セントピートのメインストレートに停車する、”スポンサー様”トラック)
 
インディカーを見る若者に「アフガンへ行きましょう」とアピールしているわけだが、プレレースイベントでも州兵募集がクローズアップされるなど、やり方はかなりエグい。サーキット内の子供用イベント広場にはF22のかなり精巧な2〜3分の1サイズのモデル(子供が乗れる)が置かれ、登録オフィスもすぐ近くに開店、という具合だ。
 
ファンとの距離が近いインディカーだが、対テロ戦争の戦場という地獄の入口への距離も近い、というのが現状ではないだろうか。つまり、ドライバーがブリブリ走っても、ジャーナリストやカメラマンがパチパチ撮ってフムフムとレースモニターを凝視しても、アウトプットは間接的に職がなかったり生活に不満な若者たち……ビール片手にインディのレース中継を見ている彼らを戦場に送っているわけだ(アウトプット額は前者と後者ではかなり違うが……)。
 
フォーミュラニッポンやスーパーGTを自衛隊がスポンサードして、君も紛争地帯のPKOへ、と堂々と誘うことはあえないだろうが、アメリカの現状の一片を知る、興味深い事象である。
 
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