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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

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台湾の「自衛隊」

先日羽田から松山空港に降り立った際のこと。入国ロビーへ向かう途中、滑走路側の通路の窓から見えた中華民国軍の迷彩の輸送機を指さし、横を歩いていた見知らぬ40代あたりの日本人男性が連れの同年代の男性に日本語で「台湾の自衛隊だ」と真面目に言っていたのを聴いて、驚いたことがあった。
 
無論台湾では自衛隊とは呼ばないが、日本人にとって、ふと出た言葉が自衛隊だったのは、おもしろい。
 
選挙を控えた日本では自衛隊を国防軍に改称するべきかを論じている。もし先の日本人男性が軍隊を自衛隊と認識しながらずっと暮らしてきたのなら、知者が大勢指摘しているように言葉、日本語の表現の奇妙さが問題になっているに過ぎない。自衛隊も軍であり、国防軍でも同じことだ。台湾に関していえば、役割はまさに国防にあり、先の男性がつい自衛隊と言ってしまったのも、不思議ではないかもしれない。台湾が国として認められない以上、国防に専念している状況とその雰囲気は日本からの訪問者にも本能的に日本とのひとつの共通点として感じられるのかもしれない。
 
しかし台湾には徴兵制がある。知り合いの台湾人も大勢これで苦労してきた。それが改正され、2014年からは完全に志願制になる。不景気だけに今の就職難の大学生、あるいは高校生らにとっては最高だろうし、馬政権としてはよくやった、と思うかもしれないが、少数精鋭の部隊に転化するのは時代の流れである。その意味でも日本の自衛隊に似てきた感はある。やがて台湾の若者にも訪れる国防意識の変化、といった問題まで透けて見えてくる。
 
ちなみに、状況は変わりつつあっても、台湾の「自衛隊」にあって、日本の自衛隊にないものがある。それは在郷の予備役軍人とその軍隊の制度である。潜在的な兵力としては重要で、敵が上陸したときに発揮される準軍隊の役割となる。
 
おもしろいのが、台湾では高砂義勇隊のような原住民だけの在郷予備役部隊があることだ。これは日本のミリタリー雑誌でも紹介されているので有名なはずだ。彼らがむかしのように蕃刀を腰につけていたかどうか忘れたが(今でも蕃刀は製造されている)、マレーポリネシア系の容貌そのままに迷彩に身をつつみ、中国軍侵攻の際に山地でゲリラ戦をたたかう準備を日頃行っているようだ。高砂義勇隊というか、山地原住民の伝統がそういうところでも残されているようで、おもしろい。日本のミリタリーおたくはこの予備役高砂部隊に頼んで訓練をともにしてみたいらどうか、などと考える自分が本当はやりたいのかもしれない。
 
いざというときのためにこうした部隊は必要だし、沖縄の先島諸島にあってもいいのではないか、と思いつつ、衆院選では投票したい政党がいよいよなくなって、誰が国防軍と改名しようと言っていたのかさえ思い出せない、このごろである。
 
 
 
 
 

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