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横浜みなとみらいに固定展示されている「帆船・日本丸(ニッポンマル)」。1930年に文部省練習船として神戸で建造されたこの美しい船、横浜みなとみらい地区ができた30年ほど前に当地で展示され、すっかりシンボル的な存在となっている。当時、私も安月給で買ったばかりの一眼レフを片手にそのお披露目を撮影しに行った記憶がある。水に浮き、停泊しているかたちで公開され、おまけにときどき帆を張る儀式までやるせいか、いつ動き出すかもしれない緊張感が漂う不思議な展示船である(実際、市に停泊税のようなものを払っているらしい)。その、つい昨日建造されたかのような生き生きとした顔は、過去と現在が調和する横浜みなとみらい地区を象徴している。
そんな時を超越した雰囲気は、この写真を見るとさらに何か迫りくるものがある。建造から5年後の1935年の正月に、台湾基隆に寄港した同じ日本丸の姿である。
1週間の停泊中、乗組員の学生たちは台湾神社など台北観光をしたり、乗船して歓迎したという基隆市長の配った無料入浴券で、台湾の表玄関である港町基隆の滞在も楽しんだという。
この日本丸、太平洋戦争で帆装をとって石炭船となり、2万以上の残留日本人の復員を手伝った後、再び貴婦人と呼ばれた帆装をつけ、戦後初めてハワイへ遠洋航海をした。こうして日本を代表する港町横浜で再び半永久にその身をとどめようとしているその姿は、セピア色の日本統治時代末期の台湾から抜け出、2011年の震災以来ようやく平時の明るさを取り戻したこの地の伸びやかな夜景のなか、不思議なコントラストで輝きをとどめている。
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去年、高雄にある台湾の仏教団体「佛光山」が、本山のとなりに建設した巨大なBuddha Memorial Center。訪ねれば、そこはまさに圧巻の、不思議なテーマパークだった。
拘留中の陳水扁をなんとかせえ、と馬英九に文句をいったことで急に親近感の湧いた星雲法師(85歳、外省人)の寺だけに、9年をかけて彼がつくったこの途方もない、おそらく世界最大のブッダのテーマパークは、入れば、最初抱いていたような偏見も消え、妙に落ち着く空間だった。
駐車場で高雄駅前からのバスを降りて、正面から建物を見れば、亜熱帯の青空に映える礼敬大庁前の威容は、バリ島ヌサドゥアのホテルか、という雰囲気。しかも入れば、左にはスタバがある。並ぶコンビニも、全メニューベジェタリアン。これくらい商売を介在させないと、巨大施設の運営は難しいのだろう。星雲法師の商売上手な部分にいまさら感心するまでもないが、高級レストラン、みやげ屋などを合体させた本館の設備はすばらしい。ここに来て遊ぶだけでもくる価値がある。もちろん入場無料である。
さらに、奥の黄金色の巨大ブッダ像へと続く、成佛大通りの、左右に立ち並ぶ八塔の壮観な眺め。暑さを避けて左右の、壁絵に満たされた参道を行くより、中央の通路をまっすぐ行きたい。本館前の広場に立ち、来た方向を振り返れば、右に霊山、左に「ガンジス川」、まっすぐ(東)来た方向に高雄の町がかすんで見える。よくこれほどのものを造ったものだ、と感心しつつ、インドのメル風の塔を四辺に抱く本館に入れば、富豪の信者から寄進されたと思われる数々の宝物にただ驚くのみ。4D映画館(つまりメガネの立体映像プラス花吹雪、送風などの体感)もあって、うまくつくったブッダの一生の映画にはさらにぶったまげた。ブッダの指の骨(舎利)を安置した見事な玉仏殿、周辺に点在するレストランも行ったが、そこまで見るうちに、なにやらもうたくさん、という気分になってくる。なにか居心地が悪いのだ。なぜか。おそらく、仏教に関心をもたせるために青少年を楽しませ、入口を設けることを考えているのだろうが、そもそもシンプルな摂理であるはずの仏教には似合わないほど、大規模な「テーマパーク」だからだろうか。
しっかりつくった建物(特に塔)は長い時間(数千年)耐えるらしいが、5000年後に発掘されたら、スタバのあるアンコールワットとして紹介されるのだろうか。
アンコールワット訪問時を思い出させた、自己ショット。
ガラスに映った自分と仏像けでは、わかりづらいので、別の「八塔」を含む写真も追加。そのスケールがわかるだろうか。
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「セデック・バレ」の監督の来日は、右翼活動家には注目されていなかったようだが、彼はこの映画を「日本人に対する憎しみ」を表わすために作った、というし、前作の「海角七号」が「日本人に対する愛情」を表わすために作った(本人弁)のとは180度違うわけだから、反日活動として標的になっても不思議ではなかった。
しかしそうならなかったのは、注目度があまりにも低かったからだろう。
今は単館上映らしいが、そのうち拡大上映となれば、また違ってくるのだろうか。
映画を見た普通の日本人は「反日的ではない」と感じているらしいが、間違った認識である。
いつかゆっくりこのことを書きたいと思うが、商業出版に不向きとの意見も多く、その認識自体、霧社事件のマイナーさを表しているのだろうか。しかし関連本は日本でもとても多いのだが。そしてそのほとんどすべては左傾である。
「セデック・バレ」という反日映画については、またの機会に。
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サンデー毎日1・27号「サンデーらいぶらりぃ」で 評論家・岡崎武志氏による拙著新書の書評が掲載されました。
◆『日本統治下の台湾』坂野徳隆・著(平凡社新書/税込み819円)
坂野徳隆『日本統治下の台湾』は「風刺漫画で読み解く」試み。明治期のビゴーにより知られる風刺漫画だが、明治から大正にかけて日本でもブームとなった。その頃、日本統治下にあった台湾でも、国島水馬という無名画家が、約20年に渡り植民地の矛盾と軋轢を絵で伝えた。「官吏がいばり、総督の権力が隅々まで届く、すべての住民にとって居心地のよくない島」。厳しい検閲を漫画ゆえに逃れ、表現できた台湾の実像が明らかに。
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