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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

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新刊本『風刺漫画で読み解く 日本統治下の台湾』を、12月23日付『日本経済新聞』読書ページ(P21)の文庫新書欄でご紹介頂きました。
 
以下、掲載文そのまま:
 
■『風刺漫画で読み解く日本統治下の台湾』 坂野徳隆著 
大正デモクラシーのころ、国島水馬という画家が台湾に渡り、風刺漫画で一世を風靡した。その作品を通して日本統治下の台湾の状況を分析する。日本政府に対する皮肉も臆さず描いた作品からは、当時の日本人と台湾の人々の間にあった、あつれきと共感の両方が伝わってくる。(平凡新書・780円)
 
大正デモクラシー全盛期、日本ではアメリカ風刺漫画を学んだ北沢楽天が現代漫画の元祖となる風刺漫画で一世を風靡していた。同じ頃、新聞の購読者が急増し、大正10(1921)年には『時事新報』が『時事漫画』を創刊。新聞風刺漫画という新しいジャンルが産声をあげる。

一方、日本領有から20年が経つ台湾では、漫画雑誌はあるものの、新聞には漫画は掲載されていなかった。そんな台湾新聞界に初めて漫画を導入したのは、第一次大戦直後、たまたま台湾の始政20周年記念博覧会を見学に来た、内地出身の無名の画家、国島水馬だった。
 
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国島はそれから約20年間、台湾でほぼ唯一の新聞風刺漫画家として、台湾最大の新聞『台湾日日新報』に政治、経済、風俗、世相、内外の事件を風刺した傑作漫画を連載することになる。こうしてひとりの内地人画家により突如勃興した台湾新聞風刺漫画は、外地台湾から見た当事の貴重な歴史観でもあった。

 国島が渡った頃の台湾は島民が税制で優遇され、多毛作の米やさとうきび、果実などの豊富な食料と、内地よりも充実したインフラが整備されていた。帝国政府の南進基地として内地からの移住が奨励される注目の新天地でもあった。漫画でも東シナ海に呑気に浮かぶ大きなお椀の船“大椀”(たいわん)に例えられ、時代の騒乱や動乱とは無縁の極楽と見られた。しかしそこは本島に天国であり続けたのか? 
 
 
   内地の漫画家が描いた国島の似顔絵
   睨まれると怖い、風刺のきいた目?。。。

実は台湾も大正デモクラシーの流れに飲まれて内地延長主義による社会制度の変革期にあり、「内台融和」「一視同仁」を目標に激変の過程にあった。そしてそこには風刺漫画の素材になる矛盾、軋轢、社会問題が溢れていたのである。
 
アウトサイダー的内地人である国島の視線は、鋭くかつ滑稽に島内の矛盾を描き出す。それは、本島人の民族意識向上と統治側の衝突、原住民の武装蜂起、関東大震災や皇太子行啓をめぐる騒動、台湾社会の抱える様々な問題、奇妙な風俗習慣など、風刺漫画を通じてこそ見られるグラフィックかつ実物大の人間社会、リアルな描写でもあった。
 
先日上梓した「風刺漫画で読み解く 日本統治下の台湾」(平凡新書)は、近年の日本に似て、関東大震災から世界恐慌に伴う不況、不安定な政党政治という状況にあった激動の大正・昭和初期。大正デモクラシーが軍部独走の騒乱に飲み込まれていったあの時代、植民地の実像を新聞風刺漫画という鏡に映しだされた独自の視線から見る試みでもある。
 
出版して、さっそく国民党系、中国人系らしき読者(日本にいる人々)から否定的な意見をいただいているが、これは想定内なのであしからず。戦前の台湾における民族主義運動は孫文につらなる民族主義と、ソヴィエト系に大別されるだろうが、前者は国民党のおおもとで(笑ってしまうが)、後者は共産党である。日本帝国主義に対抗した台湾の大正デモクラシーとするなら、国民党系も現中国人系も関心を抱いて本書を手にするだろうが、書かれているのは……。
 
革命いまだならず、といいたくなるのは台湾人(本省人)か、それとも原住民か。。。両方だろう。
 
 
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台湾の「自衛隊」

先日羽田から松山空港に降り立った際のこと。入国ロビーへ向かう途中、滑走路側の通路の窓から見えた中華民国軍の迷彩の輸送機を指さし、横を歩いていた見知らぬ40代あたりの日本人男性が連れの同年代の男性に日本語で「台湾の自衛隊だ」と真面目に言っていたのを聴いて、驚いたことがあった。
 
無論台湾では自衛隊とは呼ばないが、日本人にとって、ふと出た言葉が自衛隊だったのは、おもしろい。
 
選挙を控えた日本では自衛隊を国防軍に改称するべきかを論じている。もし先の日本人男性が軍隊を自衛隊と認識しながらずっと暮らしてきたのなら、知者が大勢指摘しているように言葉、日本語の表現の奇妙さが問題になっているに過ぎない。自衛隊も軍であり、国防軍でも同じことだ。台湾に関していえば、役割はまさに国防にあり、先の男性がつい自衛隊と言ってしまったのも、不思議ではないかもしれない。台湾が国として認められない以上、国防に専念している状況とその雰囲気は日本からの訪問者にも本能的に日本とのひとつの共通点として感じられるのかもしれない。
 
しかし台湾には徴兵制がある。知り合いの台湾人も大勢これで苦労してきた。それが改正され、2014年からは完全に志願制になる。不景気だけに今の就職難の大学生、あるいは高校生らにとっては最高だろうし、馬政権としてはよくやった、と思うかもしれないが、少数精鋭の部隊に転化するのは時代の流れである。その意味でも日本の自衛隊に似てきた感はある。やがて台湾の若者にも訪れる国防意識の変化、といった問題まで透けて見えてくる。
 
ちなみに、状況は変わりつつあっても、台湾の「自衛隊」にあって、日本の自衛隊にないものがある。それは在郷の予備役軍人とその軍隊の制度である。潜在的な兵力としては重要で、敵が上陸したときに発揮される準軍隊の役割となる。
 
おもしろいのが、台湾では高砂義勇隊のような原住民だけの在郷予備役部隊があることだ。これは日本のミリタリー雑誌でも紹介されているので有名なはずだ。彼らがむかしのように蕃刀を腰につけていたかどうか忘れたが(今でも蕃刀は製造されている)、マレーポリネシア系の容貌そのままに迷彩に身をつつみ、中国軍侵攻の際に山地でゲリラ戦をたたかう準備を日頃行っているようだ。高砂義勇隊というか、山地原住民の伝統がそういうところでも残されているようで、おもしろい。日本のミリタリーおたくはこの予備役高砂部隊に頼んで訓練をともにしてみたいらどうか、などと考える自分が本当はやりたいのかもしれない。
 
いざというときのためにこうした部隊は必要だし、沖縄の先島諸島にあってもいいのではないか、と思いつつ、衆院選では投票したい政党がいよいよなくなって、誰が国防軍と改名しようと言っていたのかさえ思い出せない、このごろである。
 
 
 
 
 
初の新書。さっそく出版社から見本本が届いた。本文ページ図版などの印刷がきれい(あたりまえ)なことに感動しながら手に取る。なんと小さく軽いのか。電子書籍よりはるかに持ち運びが楽だ。しかし中身はぎっしり。12月15日には書店に並ぶとのこと。
 
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カバー袖より「大正期、「台湾日日新報」に連載された日本人画家の傑作風刺漫画を題材に、デモクラシーの推移と台湾の社会・政治・風俗を読み解く」
価格 819円(本体780円+税)、ISBN 9784582856644  平凡社
 
台湾日日新報の漫画は当時毎週1ページの3分の2くらいに掲載され、20点くらいの漫画で構成された。他にも不定期に載る漫画もあるので、1か月約100点として、1年約1000点。それが18〜20年間で単純に2万点近い。無論すべてが国島の漫画ではない。国島全盛のころでも他の漫画家のものが混じった。全体的には国島も含めお世辞でもおもしろいとはいえない漫画も多く、それら無数の漫画から選択していく作業は骨が折れた。これだけで半年はかかった。しかもあまりにローカルなネタは新聞を読みこまなければ理解できなかった。結果としては独断と偏見で選んだことになるが、これだけ多くの漫画が残されていれば、本の書き手によって、まったく違う評価、読み物となるのは当り前だろう。あくまでも私見の台湾史であるが、台湾人の悪口だけは書かないように気をつけている。しかし自虐でもない。帝国主義の当時の日本は、現在の価値観から透視することはできても、当時その状況で描かれた風刺の視線で見直すことは、難しいからだ。これはまだ課題として抱き続けるものでもある。
ちなみに今回この本用にまとめながら掲載しなかった漫画もなかりある。他にもテーマ性のおもしろいものがあるので、もし機会があれば続編でも書きたいものだ。その課題をさらに突き詰めながら……。
(あとがきみたいだが、著書のあとがきには書いてない)

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なぜ中国政府は旅券のデザインに日月潭と阿里山ではなく、日月潭と清水断崖を使ったのか。
 
実際には清水断崖ではなく緑島の海岸線と間違えられているらしいが、日月潭と並びたてられて中国人の憧憬の対象になっていたはずの阿里山ではなく、東海岸、花蓮近くの「清水断崖」を使おうとしたのは、もしかすると「台湾攻撃の急所」である東海岸と、台湾の心臓、中心部である日月潭を並べて載せることで、したりといったところなのか? どうだ、台湾をパスポートでつかまえたぞ、というのは、読みすぎか?
 
それにしても民進党というか台湾人はかわいい。中国の旅券デザインに逆切れせず、南シナ海のデザインのシールをつくってパスポートカバーに貼りましょう、ということらしいが、尖閣諸島の領有権にも触れずに英語で台湾は我々の国、と主張しているところがいい。
 
 
 
 
坂野 徳隆
坂野 徳隆
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