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今月(2010年1月)、世界第一位から第二位へ転落したノッポビルに浮かび上がる文字が、ちょっとした笑いと騒動を生んだ。
文字とは、Taiwan Up(台湾アップ)というものである。
台北の「横浜みなとみらい」地区(と私が勝手に名づけている)信義地区には、つい先日まで世界で一番高かったビル「台北101」があり、このノッポビルを使った年越し花火は台北の恒例行事として定着しつつある。
私は去年、ビルのすぐ下で開かれた年越しコンサートを見ながら、間近で見物したが、そのあまりの迫力と発想の面白さに唖然とした。花火はすべてコンピューター仕掛けで、ビル全体からさまざまなかたちで吐き出される。天に伸びる竹を模したビルはときに天から吊るした爆竹の塊となり、狂った炎を燃やす巨大ロウソクになり、またときには頂上部を円形の巨大UFOが覆うインディペンデンスディ的幻想風景となって、またさらに(台湾人には失礼だが)中国のミサイル攻撃を受けて爆発する姿を連想させる……まさに見る者によってさまざまに楽しめる、観覧料無料、日本円で1億円をかけた10分間の恐ろしい花火ショウである。
人々のため息のなか、花火終了と同時に、ビルの頂上付近、四方面に、文字が電灯により浮かび上がる。
a happy new year などの文字だ。これは二週間ほどそのまま灯されることになる。どうでもいい挨拶文字なら問題ないのだろうが、今年は上記の不思議な文字が浮かんだことで、まず意味がわからない、という市民からの文句が殺到した。
花火前の市政府前広場でのコンサートステージでも、馬英九総統が現れ、歌手たちと胸を二度叩き、「Taiwan Up」と、Upのところで拳を突き上げる動作で、なにやら不思議な示威活動もどきを行った。それを見ていた観衆もなんのことやらわからない。ちょっと英語がわかる人なら、Cheer Upのアップで、がんばれ、という感じでポジティブなメッセージだと感じただろう。しかしただUPだけなら、ほとんどの人には意味がわからない。
台湾は日本同様、アジアでも双子のごとく取り残されたように不景気に沈んでいた。だから元気を出せ、といいたいのだろう。しかしUPだけでは、英語圏の人にさえも意味が伝わらないようだ。台湾のニュース番組では台北在住の欧米、さらに外交関係のあるアフリカなどの人々にまで「taiwan upの意味はわかりますか?」とたずねていたが、誰もわからない。下賎な私には、up yours (ファックユーのような意味……stick it up to....ですね)がとっさに頭に浮かぶほどで、立ち上がるという連想に、性的復興努力に熱心な元国民党老台北ジイさんたちを励ましているのか、とまで考えてしまう。
支持率急落の馬総統だけに、UPとは中国共産党の秋波に対してstand up(対峙せよ!)という意味にも受け止めてしまう。いや、UP(United Peacefully 平和的統一)の意味を隠した、まったく逆の表示だろうか?? (あくまでも著者の勝手な想像です)
政治好きな人たちの間では、さまざまな憶測が流れた。馬総統は英語のプロ(元翻訳担当者)であるし、結果を読めずにデモンストレーションばかりおこなうその姿勢を問われる象徴的な出来事となったのは確かだ。
101花火行事関係者のコメントとしては、UPにしたのは、限られた文字数しか使えなかったため、という。しかし台北市、あるいは無理すれば県内ならどこからでも見える101の文字だけに、ビルの広告塔として、政治的にも使えるのは確かだ。
世界一の高さの座を、101(高さ508メートル)はこの花火の直後にブルジュ・ドバイ(中東の石油成金都市ドバイにある、828メートル)になんと300メートルもの差をつけられて、抜かれてしまった。
その最後の記念の文字は、記録とともに、また幻のように春雨煙る台北盆地につい先日消えていった。
観光ガイド&行き方:
1. 地下鉄の市政府駅から徒歩7分程度で、101(イーリンイー)地区のデパート群、あるいは市政府の広場などへいける。
2. 花火は101が見えるところなら、どこでも当然ながら見られる。しかし年越しコンサート会場(市政府広場前)やデパートのあたりでは、スピーカーから、花火と連動した音楽が流れているので、それを楽しみたいかたにお勧め。角度的にも、市政府前広場は写真をとるのにもいい角度、大きさ。
3. 大晦日の夜7時くらいから、周辺は交通規制が敷かれる。しかし地下鉄が24時間稼動しているので、移動
の心配は不要。露天も多く出て、コンビニもたくさん品物を置くので、飲料食べ物にも困らない。
注意事項:
1. 風下になるところでは、花火の大量の煙でときどき見えにくくなることがあるが、風の向きを読むのは難しいため、気にしないのがいい。
2. 近くでは細かい花火のカス、破片も落ちてくるので多少の注意は必要。(事故はまだナシ)
3. コンサート会場周辺はものすごく混雑するので、スリなどに注意。
その他:
1. 人ごみを避け、遠くから見るのもお勧め。多数のカメラマンが夜景とともに遠景を撮影しているが、どれもすばらしい。私も今年は汐止というかなり離れた場所(同じ台北県)から見たが、マッチ棒ほどの大きさに見えた101に火がともると、あっと驚くほどの光量だった。それゆえ、昼間101が見渡せる場所を見つけておけば、わざわざ人ごみの中へ行くことも不要。
2. 101の周辺デパートの営業時間は大晦日は深夜0時までとなる。屋上や途中階から花火は見られるが、閉店時間に重なるのでそうした場所で待機できるかは不明。またそうした時間は変更になるかもしれないので、チェックが必要。
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