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走路有風〜 作家・坂野徳隆の書斎からの景色
Photos & Texts (C)Narutaka Sakano 転載厳禁 *著者への連絡は上の「メッセージ」にお願いします

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悪天候で月曜レースとなったセントピート戦。あの延期はなんだったんだ、とレース後に青空を眺めつつ、夕方にタンパ空港へ向かうと、シカゴ行きの飛行機のなかで武藤英紀選手に遭遇。UAも原因不明のエコノミープラスにグレードアップされていたが、こちらは幸運であり、武藤との遭遇も幸運だった。
 
今回は琢磨取材だったため、ホンダのホスピタリティで挨拶する程度の微妙な距離感しか持てなかったが、気さくにも向こうから話しかけてきてくれた。僕は、武藤の自分をしっかりと見つめる態度が好きになってしまった。サーキットでもどこか一匹狼風のジミな風情でたたずむ彼は、今年どうも目立つサトウがきたから、という意味ではなく、いつもああなのか、と思わせるほどストイックで、興味深い人間性を持っている。
 
写真は予選11、12番手でグリッドに並んだ日本勢二人。当然だろうが互いに無視のこのグリッド風景はなにやらおもしろかった。レースは途中でタイヤを中古赤に履きかえたりピット中のクラッチ操作に失敗したりと、せっかく2位に浮上して日本人初の優勝が見えたわりには惜しかった。そんな指摘をすると、武藤は「そう簡単に優勝できませんよ」と苦笑していたが、慎重なインディのレース展開を体得しているからどこか余裕だ。いきなりF1のような本気モードでつっこむ琢磨に欠けるのはそうしたところだけに、この二人の対比的な走りからちょっと今年は目が離せないインディカーシリーズである。
 
パドックにいても、ファンは武藤を「ムトー」と慕い、すっかりアメリカンオープンホイールシリーズの日本人の顔として定着している。三年目、一台体制で臨む今年は、ホンダとしても意地を見せてもらいたいし、ドライバー生命もかかった最重要シリーズとなるにちがいない。
 
プロレスラー武藤敬司がアメリカ修行でヒールのグレートムタに変身し一大旋風を巻き起こしたように、レーサー武藤も今年は成長値を基軸に暴れまくってほしいものだ。
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三日前までインディカー第二戦の舞台・フロリダ州セントピートにいたが、あの週末、地球の裏側のメルボルンではF1の同じく第二戦が行われていた。そこでは小林可夢偉がマシンに苦しんでいたが、これまで出てきた日本人F1ドライバーで、彼ほどポテンシャルのある者はいない。
 
2004年マカオGPフォーミュラ・ルノーに彼が参戦したときの写真がある。パドックで見かけた彼は、イタリアのフォーミュラ・ルノーで戦い、頭角を現していたころだ。しかしまさか翌年イタリア、ユーロ両シリーズでタイトルをとり、ご存知のとおりF1直下のGP2で日本人初タイトル獲得、さらにF1でバトンをおさえる激走(去年)をするようになるとは、思ってもみなかった。
 
パドックで気軽に会話をした可夢偉はまだあどけない少年だった。今より顔もほっそりしていて、鮨屋からそのまま出てきたセガレのような感じだった。
 
マカオの本戦では18位に終わったが、その年はイタリアで優勝2回の成績をあげていた可夢偉。二年後のマカオGP・F3ではPPをとったのだから、すごい。それに、GP2へとひとつずつ着実にステップアップしたからこそ、F1でも実力を発揮できたに違いない。F3からひとっとびでF1へ行き、パッとしないままシートを失い、インディカーに移籍した佐藤琢磨とは違う。
しかも、可夢偉は最近こうも言っている。「レースは頭が良ければ、運転技術が低くても勝つことができる」
今年の開幕戦、第二戦で、がむしゃらにアタックしてインディのレースをリタイアした琢磨は、もしやインディカーのレースがどんなものか、事前に研究していなかったのではないか、とさえ感じてしまう。タイヤの使い方、マシンの重さと挙動、レースのイエローコーション、そういった全体像は経験ではなく、事前にわかっていることだと思うのだが。
 
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坂野 徳隆
坂野 徳隆
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