|
卒業文集『これがわたしのすてきな夢』より
「ぼくの夢/彼女の夢、ハルオの夢/ナオミの夢」その9
第9話 ナオミの見る夢/後編。
配役:ハルオ/成宮寛貴、ナオミ/中山忍
ナオミは夢をみた。
幼い日のハルオが必死に追いかけてくる夢だ。
ナオミは立ち止まり近づくとまた走り出した。
実際にハルオはよくナオミについて来た。
そしてナオミはよくハルオをリードした。
ナオミはハルオを信じた。自分を信じた。
そして目標を見つけた。
ナオミはハルオにどんなときでも明るくやさしく接した。
たとえ疲れていても嫌なことがあっても。
ハルオにいつでもやさしい頼りになるきれいなおねえさんというイメージを打ち込んだ。
一歩間違えば狂人に近かった。
なにせ小学生を相手にしているのだから。
狂いそうな自分を抑えた。
いつでも自分を信じた。
ナオミは鏡を見ながらいつも写る自分の瞳を見ていた。
そして瞳と会話した。
自分を信じた。
瞳も自分を信じろといった。
ナオミはよくハルオを支えた。
ハルオは必死に働いた。
ハルオは高級官僚になった。
同僚や上司が「よくできた奥さん。」とほめたたえた。
ナオミはいつも変わらずやさしく美しかった。
その聡明な瞳がいつも見ていた。
やがて、ある春の日、ナオミは実家に寄った。
久しぶりに年老いた両親に会った。
母も昔、若い頃は美人であった。
地元の高校の同級生であった父と結婚し家庭に入った。
父もまじめで実直な男であった。
遊びもせず、家庭を大切にし家庭を愛した。
親子3人の最小単位の家庭、とても小さな社会。
両親はその家庭を愛し守ることに一生を捧げた。
ナオミは両親の愛に包まれ何不自由なく育った。
ナオミはそういう両親が好きではなかった。
とても小さな社会、それしかない社会。
小さな家庭を作りそれを守るだけの生活。
ナオミはそんな小さな幸せなどほしくはなかった。
もっと大きな広い世界に行きたかった。
いつも大きな夢に憧れていた。
ハルオはいつもよく期待に応えた。
だから不安は消えていった。
だからそこらへんのくず男など相手にしなかった。
キャーキャー騒ぐ他の女達が信じられなかった。
未来のない女達を心の中であざ笑った。
ナオミは久しぶりに自分の部屋に入ってみた。
机の引き出しの奥から古い卒業文集を出して開いた。
そこには「わたしの夢、わたしの夢は総理大臣夫人になることです。さがらナオミ」
と書かれていた。
ナオミは笑った。
おしまい。
|