花椿の 本、本、本、映画、本。

〜春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣干したり 天香具山〜

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武道の達人と解剖学者 ― 二人の風狂による経綸問答。
『下流志向』の内田樹と日本の知恵袋、養老孟司が火花を散らす。「ユダヤ人問題」を語るはずが、ついには泊りがけで丁々発止の議論に。それぞれの身体論、アメリカ論、「正しい日本語」、全共闘への執着など、その風狂が炸裂し、日本が浮き彫りになる。なぜこんなに笑えるのか。養老は「"高級"漫才」とこの対談を評した。脳内がでんぐり返る一冊。 (裏表紙より)
 

評価★★★☆☆

感想
内田さんの専門であるユダヤ関連のお話が比重が大きいですが、そこから縦横無尽に話は広がり、日本論やアメリカ論にも繋がっていきます。。

ところで最近読了した内田さんの『私家版・ユダヤ文化論』は名著!だと思いますが、本書の第二章はその補填にもなりますし、対談形式ゆえ噛み砕かれて消化されやすくなっているので、前書を読んで消化不良の方にはおすすめです。逆にこちらを先に読まれても全然困らないと思います。

二人ともスタイルがあり、また熟練した話者でもあるので、会話は変幻自在、個性が発揮されてて楽しめました。

内田氏にとって養老氏は「邪道」の師匠らしい。(笑)
「邪道」的悪意は、無垢で、無作為で、非利己的で、即興的で、かつ骨太の笑い(「くすくす」ではなく「がっはっは」)を伴うものでなくてはならない。 (p252)

肩肘張らないで読める割に刺激的で飽きずに最後まで読める!という内田流は健在。「世間」的常識の間隙をついて繰り出される言葉は心地よいです。

まとめ
第一章 われわれはおばさんである★★★★★
おばさんは話が横に広がるリゾーム状。おじさんの話は次元を上げてくツリー状。バイリンガルで論理の隘路を切り開く。
内田氏の高校受験の話。人間は自分の知的パフォーマンスをコントロールできない。脳は宵越しの金は持たねぇ。
世間には責任を取る人がおりません。
武道の心は「ナカをとる」、敵味方のスキームでなく折り合いの心。ぼくの身体と相手の身体を二つながらに含む「第三の身体」、その「主体の座」をどのように略取するか。
死体は武器になる。脈絡のない死体、体の断片。物語を考えちゃうのは人の性、もしくは逃げちゃうか。

第ニ章 新・日本人とユダヤ人★★★★★
「対偶」の考え方に共感。
選民意識は利己的な人種差別より人を傷つけるのかも。
遅れてきたもの、前のものの痕跡、被投性、イノベーションの可能性、有責性。
レヴィナス『時間と他者』→時間とは主体と他者との関係そのもの。「同じ」に括り込めない同一性の不調そのものが「時間」として析出してくる。
造形芸術の禁止、なぜなら神の時間先行性こそが神性を構築するから。
ユダヤ教会堂を意味するシナゴーガは目を覆われた若い女の像として表象される。盲人の目を開くキリストの奇跡との比較。視覚と聴覚の対比。

第三章 日本の裏側★★★☆☆
インターナショナルは辺境にあり。例えば対馬。
歴史的に中国が大きくなると日本は鎖国してきてる。遣隋使、遣唐使の廃止など。
小泉さんの靖国参拝は無意識的な反米のシグナルか?迂回したルサンチマン。
政治的であることは、主観とは関係ないという論法は日本的。全共闘は実は日本人の中の日本人?!欠性的な仕方で受け取り蘇る日本の情念。

第四章 溶けていく世界★★☆☆☆
プライバシーとはその状況を共有した他者がいてはじめてプライバシー。相手に配慮する必要があるから秘匿する必要がある。
個人情報保護法はナンセンスではという意見。。(→フーコー的監視社会を考えると問題はそんなに簡単じゃないはず)

第五章 蒟蒻問答主義★★☆☆☆
ケースバイケース、オープンクエスチョンは大人の知恵。混乱に耐える丈夫な脳をもちましょう。
「個性」とは他人の目にどう映るか。人を見る目がなくなった年寄りは役目がなくなった。自己評価と外部評価のズレの補正は黙々とすべし。
古典落語の蒟蒻問答、やりとりされるものはコンテンツでなく解釈だった。世界の深さのすべては世界を読む人自身の深さにかかっている。

第六章 間違いだらけの日本語論★★☆☆☆
英語のオーラル中心教育は植民地的。知的な位階差は絶対に埋められない。だから文法、読み書きが大切。
日本語もいろんなタイプの日本語が使い分けられるというのは生きていくうえで有利。フィジカルな浸透力のある日本語、官僚的なフラットな日本語どちらも身につけたいところ。官僚的文体は結構使えるツール。
身体の他の部分が唱和する声はいい声、響く声。(自分が内容に納得しているから)
人に説教させるのも、受け答えの上手。

第七章 全共闘の言い分★★☆☆☆
江戸時代は結構気楽な現場主義。福沢諭吉は実は実学の人というより、非常識なイデオロギーの人なのでは。
党派性なく自分の価値観でものをいう人がどんどん減ってきている。(肯定より否定は楽)

第八章 随所に主となる★★★☆☆
アメリカの単純化圧力は、アメリカ人の知性を損なっている。大人になれない国。日本も同様に「成熟」という概念がなくなりつつある。
アメリカの政治では漸進的な改良はなく、建国の理念に立ち返りそのつど再生するという物語でしかシステムトラブルを修正できない。
「額」で囲んで現実から距離をとる。「これは嘘ですよ」と無意識に叩き込むような言語表現でシステム全体を表現することを学ぼう。
翻訳は裸でする、エヴァのシンジ君のようにフラジャイルな状態で入ってく。それは結構恐いこと。
師匠についていくのは「命がけの跳躍」。師弟関係は未熟な価値判断を括弧に入れて成立。基準がないのに選ぶしかないところに弟子の側のブレークスルーが生起する。師匠は必要、でも師弟関係に等価交換を期待しちゃいけません。
考えて考えて考え抜くと底が抜ける。底が抜けて落ちたら、どんどん掘るのも手、自分だけの金鉱が。
日常性は架空だから退屈しません。そこにも無限の情報があるのだから。

養老斬手 ― あとがきにかえて★★★★★
とにかく笑いました!!!妙に漢文調で楽しかった。お二人は大変ウマがあってることが伝わってきました。

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閉じる コメント(11)

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私も昨年の夏にこの本を読みました。対談の二人に共通した嫌いなものがありますね。それは原理主義、全共闘、福沢諭吉、子供の英語教育、アメリカ、等々です。これらの共通点を探っていくことで二人の思考方法に触れることができると思いました。これらの共通点とは、思考が単純で、図式的で、硬直していることです。
言い換えれば、智慧がない、成熟していない、ヤボなのです。
かなり高度な内容を対談というとっつきやすいスタイルで表現していうので、読みやすかったです。

2008/3/23(日) 午後 5:22 [ bodai_ju ]

はじめまして☆確かにそうでした!話題は豊富でしたが、一望すると硬直化した考えやシステムを批判していました!いや気づきませんでした!
しかし、お二人の縦横無尽なお話は退屈しなくてイイですね。またこのコンビで違う話題をやって欲しい位です♪

2008/3/23(日) 午後 6:17 花椿

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こんな本があったのですね♪ ご紹介いただき食指が動きます。春霞で頭がボーっとしたとき、ぜひ読んでみようと思いました。鮮度の高い本がお好みのようで参考になります、感謝です!

2008/3/23(日) 午後 6:55 [ アズライト ]

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「世間には責任を取る人がおりません。・・・」

セイゴオ(松岡正剛)―― <オルテガ・イ・ガセット――大衆の特権は「自分を棚にあげて言動に参加できること」にあり、その本質は「心変わり」にあるというんです。・・・・>ということばが最近目にとまりました。
トラックバックいただき、お邪魔しに来ました。

2008/3/23(日) 午後 7:03 緑の森

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コメント ありがとうございます。本好きな所は同じ
ですが、思い入れは違うようです(爆、僕は軽い)。
好きな分野の1つ(脳機能解析)なので、この種類の
本はよく読みます。変人ですがよろしくお願いします。ナンバ

2008/3/23(日) 午後 7:13 ナンバ

電池切れさん,春霞でボーっとするのわたしも好きです!♪(笑)この本との相性も良いと思います♪硬直化しちゃダメだ、成熟しなさい!と自分自身にも響いてきて、シャキッとなります。内田さんの本がとても気に入ったのでこれからもご紹介できたらと思ってます☆

2008/3/23(日) 午後 7:50 花椿

緑の森さん,セイゴオさんのサイトはあまりに本が膨大で眩暈がしますので(笑)実は避けてました。。。今回意を決して読んでみましたが、まさにわたしが気に留めていた「大衆の特権」についての考察だったのでとても面白く拝見しました!日本的「世間」とも伴わせて、これからも考えたいなと思ってます。コメントありがとうございました☆

2008/3/23(日) 午後 8:07 花椿

なんばさん,こちらこそコメントありがとうございます!わたしも本好きで、最近はちょっとはしたない位むさぼってます。。脳機能解析!とは、養老さんや茂木さんの本に当たるのでしょうか?脳機能改善の書のようなものがあればぜひ読みたいです(爆)

2008/3/23(日) 午後 8:13 花椿

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確かにこの二人はウマが合いそうですね〜。どちらも自分の専門性に閉じこもらない人ですし、そもそも頭が柔らかいですね。

2008/3/23(日) 午後 10:07 大三元

大三元さん,養老さんと内田さん、使う言葉は違うのですが、同じことを語り合い、本質を分かり合ってるってのが不思議でもあります。分野は違えども似たもの同士?!お二人とも頭が柔らかいだけでなく、ピンと芯があって、こういう風に年を重ねて行きたいと思いました!

2008/3/23(日) 午後 10:44 花椿

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こんにちわ^□^またみにきちゃいました。
思わずコメントしちゃいます♪
また見に来ますんで更新がんばってください。

2008/3/24(月) 午後 7:24 [ 銀狼 ]

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