なつか式世界

なつかいたるのなつかしいおはなしの世界なんてね=^ω^=

おはなし

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「おはなしの世界」と言いつつ、なかなか書けないおはなし。
でもまあ、昔書いたのをぽちぽち出してみマス=^ω^=
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天使と廃墟

Merry Christmas !

などと人並みに言ってはみたものの、ワタシはクリスチャンではナイんだなあ;)
でも天使っていうのは画期的にスバラシイ発明だよね、とつくづく思うのデシタ=^ω^=
そこで、天使のお話をひとつ…


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天使と廃墟

 夜です。
 空に蒼白い月がひとつだけポツンと明るく輝いています。月の光に照らされて、大きな灰色の影がひとつ、何かぶつぶつとつぶやいているのが聞こえてきます。

……この地上に、生きものと呼べるものたちがいなくなってから、これで何度目の夜が来たのだろう。
……私は今、あの月と同じように、すっかりひとりぼっちになってしまったらしい。
……子供たちの笑う声を聞くことも、もうできないのだろうなぁ……。

 その声は、枯葉が風にふかれて、かさこそと鳴っている音のようにも聞こえました。

……これから何度夜が来ようとも、そして何度朝が来ようとも、私はくりかえしくりかえし、いつまでも同じことを考えつづけるのだろうか……。

 そこまでつぶやくと、大きな灰色の影は、ほーっと深いためいきをつきました。
 そして、そのためいきまでもが、前の夜も、その前の夜も、同じようにくりかえされたことに気づいて、かさこそと声にならない音をたてました。

 この大きな灰色の影は、昔この地上にまだ人間という生きものがいたころには、「家」とよばれていました。
 そう、このつぶやきの主は、かつてはたくさんの人がすんでいた、大きな家だったのです。
 そのころは、毎日毎日、人々は楽しそうに暮らしていましたし、子どもたちの笑い声の聞こえない日は一日もありませんでした。ときには、だれかの泣き声が聞こえることもありました。
 何人かの人は、この家を出ていきました。それでも、また新しくやって来る人がいて、この家はいつもにぎやかでした。

 ところが、ある日何かが起こって、この家にはだれもいなくなってしまいました。何が起こったのかはわかりません。でもこの家は、そのときから、だれも住む人もなく、どこかが壊れてもだれにも修理してもらえないようになってしまいました。
 そうして、だんだんと廃墟になっていったのです。

 この家はそれからずっと、だれがやって来てくれるのを待っていました。だれかがやって来て、また住みついて、壊れてしまったところを直してくれるのを待っていました。

 そして、ずいぶん時間がたってからやっと、この地上にはもうだれもいないのだということに気がつきました。
 だから、家がいくら待っても、もうだれもやって来ないのです。

 それからまた、長い長い時間がすぎました。この家は、くる日もくる日も、昼も夜も、昔のことをなつかしく思い出しながら、暮らしていました。

         ☆   ☆   ☆

―あっ、あれはなんだ?

 夜空の高いところから、何か白いものが、ひらひらと風に吹かれながら、舞いおりてくるのが見えました。白いものは、くずれかけた塀の上に着地すると、そこにちょこんとすわりこんでしまいました。

 びっくりした家は、しばらく黙ったまま、その白いものを見ていました。
 それは両手でしっかりと塀につかまりながら、とてもうれしそうな顔をして、投げ出した足をぶらぶらさせています。

 それにしても、この地上に、もう生きものはいないはずなのに、その白いものは、どう見ても生きものとしか思えません。なにしろ、手も足もあるし、それに、けっこうかわいい顔をしているようでもあります。

―あれはいったいなんだろう?

 長い時間がたったあと、家は思いきってたずねてみました。

―もしもし、君はだれですか?

 白いものはびっくりしたような顔をして、何も答えません。
 灰色の大きな影のどこかで、かさこそと音がしました。
 白いものは、またうれしそうな顔にもどって、へいの上におとなしくすわっています。
 それからまたしばらくして、家はもう一度、今度はすこしていねいに、たずねてみました。

―もしもし、私の言葉がわかりますか? 私は君の目の前の、大きな古い家です。君はさっき空の上のほうからおりてきたようだけれど、いったい、だれなんですか?

 家がそうたずねると、白いものは安心したような顔をして、やっと答えてくれました。

―天使です。

 白いものはひとことそう言うと、ニコニコして、また黙ってしまいました。

「てんし」だって? 家は考えました。
そうそう、昔人間たちが話していたのを聞いたことがあるような気がするぞ。
「天使」というのはたしか、神さまが人間につかわせる、お使いのようなものではなかったかな? 
あれっ、もしそうだとすると、もう人間はひとりもいなくなってしまったはずなのに、どうして天使がまだいるのだろう? 
人間へのお使いなんて、もういらないはずなのに。

 家は天使にたずねてみました。

―あのね、君がもしほんとうに天使なのだとしたら、君は神さまが人間のもとにつかわせたお使いなんでしょう?

 天使はニコニコしたまま、黙ってうなずいています。

―だったら、もしかして君はまだ知らないのかもしれないけれど、人間なんてもうどこにもひとりも残ってないんだよ。

 家にそう言われても、天使は、それがどうしたのかな?という顔をして、黙っています。
 そこで家はまた言いました。

―だからね、君がせっかくここにおりてきても、神さまのご用を伝える相手の人間がいないんだよ。わからないかなぁ……。つまり、君がここにいてもムダなわけ。

 家はわざと、すこしイジワルな言いかたをしてみました。
 それでも、天使はきょとんとして黙っています。

 しかたなく家も黙りこんでしまうと、天使はまた、ニコニコときげんよく、同じところにすわったまま、羽をパタパタさせています。

 くずれかけた家の灰色の影のどこかで、かさこそと音がしました。
夜の空の上のほうでは、風がひゅうひゅうと鳴っています。薄い雲が風にふかれて、月の光の中を飛んでいきます。

 雲が月をかくしてしまうと、灰色の影は薄まり、へいの上にすわっている天使のすがたは見えなくなりました。
 月がまたあらわれると、天使はまだ、同じところに、同じかっこうですわっていました。
 天使が見えなくなったり現われたりするたびに、灰色の影は、かさこそ、かさこそと、小さな音をたてます。

 それからまた、ずいぶんと長い時間がすぎました。
 空には月だけが明るく輝いています。
 天使はまだ、さっきと同じように、くずれかけた塀の上にちょこんとすわって、ニコニコとうれしそうな顔をしたまま、足をぶらぶらさせたり、羽をパタパタさせたりしています。

 家のかたすみで、かさこそと音がします。
 家は、もう一度、天使にむかって話しかけてみることにしました。

―もしもし天使さん、君はいったい、ここへ何をしに来たのですか?

 そう聞かれると、天使はまた、びっくりしたような顔をしましたが、今度は、ちょっと目をふせると、ポツリポツリと話しはじめました。

……いつものように、ひとりで空を飛んでいました。
……今夜は、月があんまり明るかったので、気がつかないうちにこんなに遠くまで来てしまいました。
……そして、下のほうを見ていたら、ここが見えました。
……空の上から見たここが、とってもきれいだったので……ひとめですきになってしまいました。

 天使はそう言うと、ほほをポッとピンク色にそめました。

 家の大きな灰色の影のどこかが、かさこそと鳴りました。

 天使は、しばらくのあいだ、くずれかけた塀の上の同じ場所に、うれしそうな顔をしたまま、すわっていました。

 やがて、大きなあくびをひとつすると、羽をたたみ、ひざをかかえて、すうすうと小さな寝息をたてはじめました。どうやら眠ってしまったようです。

 灰色の影のどこかで、かさこそと音がしました。
 その音は、あたたかくていいにおいのする風が、壊れかけた家の壁や塀にあたって、鳴っている音のようにも聞こえました。
 よく耳をすましてみると、大きな灰色の影のそこここで、かさこそ、かさこそと、かすかな音がしています。
 その音はだんだん、だんだん、大きくなっていき、ゆっくりと、ひとつの場所に集まっていくような感じがします。

 すると、その場所から、影と同じ灰色をした、小さなネコのかたちをしたものがはいでてきました。
 ネコはとことこと、眠っている天使のそばまで歩いていき、そのひざの上に、ぴょんととびのりました。そして、まんまるに丸くなると、うれしそうに、のどをごろごろと鳴らしています。

 天使は、ねぼけたように羽をちょっとひろげると、ひざの上で眠っているネコをつつみこむように丸めました。

 いつのまにか月は沈み、灰色だった影は、薄緑になっています。
 風がとまりました。天使の羽は露にぬれて、すこしずつ真珠色に輝きはじめました。
 天使のすうすういう寝息と、ネコのごろごろのどを鳴らす音だけが聞こえています。
 天使とネコが眠っている向こうの方で、遠くがだんだん明るくなりはじめました。

 朝が来るのです。

さて、このおはなしには続きがあります。
この廃墟と天使がどうなったか、みなさん考えてみてくだサイね〜=^ω^=/~~~

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