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おいおい、真理を究めるためには、「ハリネズミ」になんのかよう、と慄くシッタルダ。すると頬刺し男が、叫んだ。「シュラマナ(沙門)」と。とたんにハリネズミ軍団は霧散した。
「人生楽ありゃ苦もあるさ」と、薄着の痩せた男が現れた。助さん格さんを連れて。誰だこいつは。
「若者よ。この男たちは、アラハン(修行を終えし者)ではない。ただの芸人じゃ。」
やっぱり。仲間に入ったら危うく露西亜のサーカスに売り飛ばされてしまう所だったのか。ピンチを救ってくれたこのシュラマナに、シッタルダは感謝した。
「その表情は、わしを信じたな。ばか者め。わしの言葉に根拠などあるか。」
と助さん格さん、もとい、マッガラーナ(目蓮)とサーリプッタ(舎利弗)が、しゃしゃりでてきた。
「サンジャヤナ師よ。根拠はございませんから、疑いますか。」
「しかし疑う目蓮をまた、疑いますか。」
「ならば、何を信ずるか。」とサンジャヤナが聞くと、見事なユニゾンで、
「疑うという心の働きを信じます。」
と二人は答えた。
「んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…。」
とみのもんたのように引っ張って、
「正解。」
なるほど、とシッタルダが頷こうとしたとき、
「残念。正解という言葉は嘘だ。がその嘘は嘘である。さあ、どれが嘘だ?」
とサンジャヤナは叫ぶ。頭がゴチャゴチャになってきた。目が回る。
混乱しちいえるシッタルダにむかって、
「若者よ、ついてくるな。」といいつつ、サンジャヤナはアゴで「こっちこい」をした。
「ブラフマン(真理)がある、といえばウソである。なぜならブラフマンを言った瞬間にそれは固執であるから。疑え。」
「アートマン〈我)がない、といえばウソである。なぜならないと言った瞬間、〈ない〉とは〈有る〉を前提に成立するから。疑え。」
目蓮と舎利弗が後を行く。
「疑え、疑え、己を疑え。その己を疑っている己を疑え。」
気がつくとシッタルダは、周りを〈疑え〉とリフレインしラップする新たな人の群れに囲まれ、街道を外れて森の中へ連れこまれそうになっていた。拉致?
そうこの時代、シャマラナを中心とした様々な思想家集団は、バラモンの林住期にならって森林や山奥で集団で暮らしていた。世間との交わりを絶ち(出家)、乞食生活をしながら議論や修行に明け暮れていたのである。サンジャヤナのような親分は、子分に乞食させられる。また、教団として有名になると、入門料を持って仲間に入れてくれという者も増えていく。こうして、いくつかの思想集団が新興国マガタを中心とした地域に拡がっていったのである。
「チェキノン。イェ、イェイェ。」とブレイクダンスをしながら、ラップに乗り進んでいたが「いかん。マガタへ行くのではなかったか。」そう思い直したシッタルダは、懐疑論者集団ラッパーを離脱し、街道へと戻っていった。
だが、シッタルダの心には一つの理解が生まれていた。
「そうか。老病死に怯え苦しむ私がある実在していると、思い込んでいたが、その主体である〈私)が実在しないとしたらどうなるであろうか。確かにここに私というに皮で骨と油を包んだモノが存在する。その意味で実在である。しかし、骨は悩まない肉も悩まない。つまりそれらが総合的に結びついて全体化したものが生命だ。その全体はちょうど〈火が燃焼している〉ように、燃えるものと燃やすものに分割できずただ『燃えている』のであり現象だ。燃えていることを炭素の酸化であるという〈説明〉はできても、それは燃焼そのものではない。同じように〈私〉とは確かにあるのだが実体はない。なのにそれを私が〈私〉と言ったとたん、実体化してしまう。すると執着が生まれる。うーむ。その執着が起こってくるはたらきは以外と奥深い所のはたらきだぞ、きっと。」
なにやら、小難しい事を考えながらシッタルダは、マガタ国の首都ラージャグリハ(王舎城)を、再び目指して歩き始めた。
これより少し前のラージャグリハ。国王ビンバサーラは悩んでいた。めっちゃかわいい嫁ごをイーディーハ族から、かっさらってきたのに。荷車の前に飛び出して「ぼくは死にまっしぇーん。」とまでして、結婚したのに。
「子どもができん。」
この時代に子どもがいない、特に軍隊を率いる事のできる男性の親族がいないという事は、一国の興亡、王家の興廃にかかわる大事であった。自由恋愛なるものが流行りだしたこの頃だが、血縁はやはり頼りになる。クシャトリアとしての地位を守るためにも、またクーデタを起こされないためにも、軍事は親族で固めたい。
しかし自然にまかせていたら中々イディーハは妊娠しなかった。バラモンの勧めで「あなたもできます。いい男のSEXテクニック(リンガ・ヨーガ)」なる教えも実践した。だがうまくいかない。この頃はとんと「ご無沙汰」である。実は、大臣から親戚から「まだかまだか」と急かされ追い詰められて、「バイアグラ」が必要な状態になってしまったのだ。そして近頃ではそれも効き目がなくなってきた。この頃、妻の自分を見る目が、「この役立たず・腐れ〇〇〇」と言っているようで、ベットを共にすることも激減している。
「ううむ。このままではこの大帝国が、亡びてしまうぞ。この間の反乱軍のリーダーは、フォースの魅力で虜にしてダースベイダーにしてやって帝国は安泰だったが。」
なんと知らなかった。あのスピルバーグがインド古代史を参考にしていたとは(^^)笑。
こう悩んでいたビンバサーラの前に、朗報が飛び込んだ!
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ふむ。生命は「現象」である、と。これ、最新の生命論にも、こういう主張があります。なかなか深いなぁ、と思いつつ、さらに次に期待です。
2005/10/21(金) 午後 4:48