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お逮夜参りをすませ、ペダルも軽く、お寺へと向かっていた。さて、晩ごはんは何かしら、などと思いながら信号で止まっていると、話しかけられた。
「お、こらご院さん。お参りの帰りでっか。」 悪い奴に見つかった。ほたらのおっさんである。 「まあ、本多さん。お元気そうで。」 と、自転車から降りて挨拶をする。 「ごいんさんも、商売繁盛で何より。」 父の代からのご門徒さんだが、何せしゃべっていなかったら死ぬ、という御仁である。ご法話の最中でも納得できないことがあると、質問攻めをはじめる。「ほたら何でっか?」というのが、決まり文句であるから、かのニックネームがお寺ではついている。 「商売繁盛て、おかしな物言いせんと。言うねやったらご法義繁盛とおっしゃってください。」 「へん、そうかて坊主丸儲けていいますがな。」 「また、そんなことを言う。」 「ほたら、何ですか。あんた、只でおまいりしたはりますのんか。」 「いや、お布施はいただいとります。」 「そうでっしゃろ。ははん、今からそのお布施もって、〈キタ〉か〈ミナミ〉へでも繰り出そか、てな按配で。」 困ったもんである。言いたいことをいうんだから。 「布施というのは、佛・法・僧への寄付です。喜捨ともいって、仏法を護持し広めるためのものです。如来さまにお供えするまで、手をつけたりしません。」 「ほたら、その先は?」 「その先とは、何でしょう。」 「お下がりですがな。うちらでも、到来物からわしがパチンコで取った景品までいったんお仏壇に供えまっせ。けど、その後すぐにお下がりでいただきますがな。せやさかいに、お布施は結局あなたのここへ(とお腹を指し)ポッポないない。」 「いや、そうではなくて、真宗のお寺は、もともと門徒さま方が寄り合って建てて下さった道場やから、お布施はお寺の収入になります。ご法義のために使わせていただきますんや」 「ほたら、あんたの食い分は?」 「食い分て、惨ない言い方ですな。お寺から、ちゃんとお給料いただいてます。」 「へえー。なんやサラリーマンみたいでんな。」 ちょっとトーンが変わったようである。ここがチャンスとばかりに、 「では、また。」 と去りかけたときに、後ろから「まあ、ご院さん」と声。ごいちさんだ! 「こんなとこで、何しゃべっておいでで?」 あまりにも強烈なしゃべりについこの間往生されたお連れ合いが、「5.1サラウンド・スピーカーシステム」より凄いと、本通りのスナックで、酔っ払って唸っていたのが、街中に広まったものである。三十六計逃げるに如かず、と背を向けた私に、ほたらのおっさんの声が追いかけてくる。 「おお、ええとこえきた。今な、坊主丸儲けの話をしててん。」 おいおい、違うってば…。 |
お寺のくらし







お坊さんもビジネスです、マーケティングが大切ですな!
[ Westcoast Sunset ]
2005/5/8(日) 午前 2:06