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「それやがな。びっくりしたらあかんで。あのなもうすぐ空が落ちてくるんや。」 「ええ?」
「もう危ないねん。はよ、逃げよ。」
「だいたい空なんてもんが落ちるはずがないやろ。あんなもんはずーっと広がったるんやて。」
「ああ、わいの言い方が悪かった。あのな、星がな落ちてくるんや、ぎょうさん。」
「何をいうとんねん。ははあ、どこぞの誰かにお前騙されとんのと違うか?」
「ンもう、どないうたらわかるんかな。疑り深いやっちゃな。」
「ほんなら、いったい誰に聞いたんか言うてみ。それによって信じようやないか。」
「よっしゃ。ええかしっかり聞けよ。テレビのニュースで今言うてた!」
「テレビのニュースでか!」
「今さっき、わいが風呂から上がって、ビール一杯のみながらテレビつけたら、水着きた若い女の子がにっこり笑いながら言うたんや。」 「そらえらいこっちゃ。よう知らせてくれた。」
「こらえらいこっちゃと、表へ飛んででたら近所の人もいっぱい外へでてきはってな。うわやっぱりほんまや、てわかってんほたら信じてくれるか。」
「あほ、信じるにきまっとるやないか。水着の若い女のアナウンサーがにっこり笑いながら言うたんやろ。最後の夜やさかい、視聴者にサービスしたんや。わしやったら素っ裸でだすが、さすがにテレビやから最後まで上品にまとめたんや。よっしゃ喜ィ公、表でまっとれ。」
こうなりますと、さっさと荷物をまとめまして、ぽいと表にでます。
「さあいこか。こういうとき、お前もわしも一人もんやから都合がええ。」
「ほんで清やン、どこへ逃げたらええ。だいたいそれを聞こう思うて、お前をお越しにきたんや。近所の人に聞いてもにやにやして空を見るばっかりでラチがあかん。」
「人間こう時にはウロがくるんや。悪う言うたらあかん。な、日頃から言うとるやろ。人間は落ち着きが肝心やて。わしにまかせとけ。よっしゃ、星が落ちてくるんやから、地べたはあかん。よし、喜ィ公、そこらのマンホールの蓋をあけ。」
「なるほど、地下へ潜るわけや。さすがは清やンや。よいとしょ(と蓋を開ける)。わあ、暗いなあ。(降りかけて)清やンはよおいで。」
「そないにいそがすなて。しかし、星が落ちてくるちゅうだけあってええ星空やなあ。」
「ほんまやな。きれいな星空やなあ。あ、清やンはよ行こう!」
「なんでや。」
「今、もう星がこうすーっと動いた。そろそろ落ちるで!」
「あほ、まだ大丈夫じゃ。それはな『流れ星』ちゅうて、ようあるんや。おお、また流れた。あ、こっちも。」(間) 「あの、清やン?」
「なんじゃごちゃごちゃ言うてんとお前も上がってきて見てみ。この調子やったら当分心配ないわい。あ、今度は二つや。」 「(上がってきて)あの、お楽しみのところすんませんが。」
「なんややかましいな。とっととしゃべらんかい。」 「今、見てるのが『流れ星』ちゅうの。」
「そうや。流星ともいうな。」 「へへ、きれいやな。」 「ああきれいや。」
「ほたら、わたいはこの辺でお暇いたしますんで・・・・。」
「何をいうとんねん。星が落ちてくるンやろうが。」 「それがきまへんな。」
「きまへん?こら、お前。大騒ぎしてやっぱり嘘かい、このアンポンタン。(と首をつかむ)」
「ちゃうねん。ちゃうねん。勘違いや、勘違いしたんや。 ニュースの終わりにお天気お姉さんがな、『今夜はペルセウス座の流星群の日です。さあ、今から外へ出ましょう』て言うたから、逃げなあかんと思たんや。 ほんで表で近所の人に『流星群て何ですか?』って聞いたら、流れ星がヤマほど降りまんねんて。」
「あほやなあ、お前は。どうせそんな事やと思た。」
「へ、清やン怒ってへん?」
「わしも夕方のニュースでその話聞いた。せやさかい、夜中に起きよう思てはよ寝てたんじゃい。おかげでこうして、流れ星がようさん見れた。」
「ほたら、騙されたんはわいか。」
「はは、まあそう怒らんととこれでも飲み。(と荷物をあけ缶ビールを二つだし)ほれ。(と一つ渡し、プシュッと開けて飲む)ああ、うまい。星空の下の一杯ちゅうのも乙なもんや。」
「なんや逃げる用意かとおもたら、そんなもんまで用意したあるんか。こら計画的やな。お、これ変った蓋やで、外国モンか。」
と開けて飲みますと、「わ、ペッ、ペッ。清やン、これそうめんのつゆやがな。」
「すまん。今度はわしが、缶(勘)違いした。」
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