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スウィートbonbon(壽光寺の内緒話)

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はい、続いては、読書のススメ。今年でた(文庫になったものも含む)日本のミステリー小説群から。
今日はサッカーでいきませう。

FW「ワイルド・ソウル」文庫上下・垣根涼介 DFのハードなマークをぶっちぎってドリブルシュート!!
 
 「刑事の墓場」・首藤瓜於 オフサイドすれすれでDFラインの裏へ飛び出す。


MF「福家警部補の挨拶」・大倉崇裕 トップ下としてのパスだしは若手ながら名人級!?
 
 「重力ピエロ」文庫・伊坂幸太郎 「オーデュポン」で腰を抜かし「アヒルと鴨」でKO。セリエA級。
 
 「墜落」・東直己 便利屋探偵シリーズ。はい、北の大地で監督のありとあらゆる注文に応えます。
 
 「一応の推定」・広川純 こつこつと相手のパスコースを封じる熟練のボランチですがルーキー。


DF「シャイロックの子どもたち」・池井戸潤 「BT63」も文庫化。言わずと知れた経済ミステリーの大
  家。不動の左サイド。

 「インディゴの夜・チョコレートビースト」・加藤実秋 都会の夜の闇を濃くする右サイド。

 「帝都衛星軌道」・島田荘司 不動のセンターバック。がっちりつかんでガツンと撥ね返す。

 「落下する緑」・田中啓文 ヘディング強し、フィジカル強し。これからのDF

GK「セントメリーのリボン」文庫・稲見一良 文庫で復活。ベテランの味。ファンデルサールと互角。

これならワールドカップを取れたかも??? 

エガちゃんたちと簡単に打ち合わせして、二手に別れる。平日の動物園にはそれほどの人手はないので、ペピちんを刺激さえしなければ見つけて連れて帰ることは、そう難しい事ではないだろう。

オレとゴミは爬虫類舎の方へ向かう。エガちゃんたちは、バードゲージからゾウやキリンの方へ。
「ねえ、ペピちんと蓮さんは知り合いなの?」
「知り合いといってええかどうか」
動物園特有匂いを抱いた風が、ゴミちゃんの頬をなでる。ゴミは蓮さんにいたく惹かれたようだ。
「いやね、ペピちんはあんなだろ?ウチに来る前は、結構大変だったみたいなんや」
「そういえば、ペピちんにはパパがいないんだっけ」
うなずきつつ眼だけは辺りを注意深くパトロールさせる。アシカにえさをやってご機嫌な男の子の後ろで、お母さんは居眠りしている。
「見てみい。あれが普通の幸せちゅうもんやな。親も子も気がついてるかどうかわからんけど。」
ゴミが深く頷く。ペピちゃんのママさんは37歳だけど、どう見ても40歳以上に見える。四六時中目放しがきかない子をもつということは、親にプライバシーが無くなるということでもある。
「パパさんも初めはがんばったんや。ま、今やから言えるけどがんばったんがアカンかったんやろな」
「そっか。クタビレタんや。人間ずっとがんばるなんて無理やもんな」
「あ、それでか。おまえさんの作品がなかなか完成せんのは」
「そういうこと。私、無理しないもん」
「けど、そんなやり方でおまえさんの世界ではやっていけるのかねえ」
「よけいなお世話」おっと、ヒジウチ。へっ、ガードしてやったぜ。ヒジウチ?ふいにゴミとの出会いを思い出す。

ゴミは、これは本人が〈五味太郎〉とかいうその道の大家へのおまんじゅかオマージュだかでそう名乗っているのだが、アートが本業でウチの正式な職員ではない。オレがベースを立ち上げて3月目に、取材にきたフリーライターと称する今時のオバカな若者にくっついてきた。ちゃらちゃらしたガキめ。敵意満々のオレに気付かない鈍感なライターは、「へえ、けっこう広いんですね。」とずかずかとベースに上がりこみ、ペピちんや昌子さんに無遠慮に接近した。もちろん予想通りに彼は絶叫に耳をつんざかれ、いったん叫びだすと止まらない二人に困り果てて退散した。ざまあみろ、とちょっと愉快な気分なオレは、ちゃらちゃらの姉ちゃんがスケッチブックを広げて絶叫しよだれを撒き散らす二人の前で、静かに坐ってクレパスを動かしているのに驚かされた。
「何してるンや。あなたのツレはもうフケたで」と背後からのぞき込むオレに「しっ」と短く息をはき強烈なヒジウチが襲う。辛うじてガードしたがコンマ何秒かの間ができてしまった。そのスキに彼女はペピたちにクレパスを差し出す。「あ、それマズイ」とあわてるオレを尻目に、彼女に寄ってきたペピちんはしっかとクレパスを握りしめ畳の上に大好きな「レール」を描き広げる。一方昌子さんは、静かに彼女のスケッチブックに見入っている。

「これが、あなた。これが彼」そう説明されている絵には、真っ赤なバラとまっすぐに伸びた向日葵が生き生きと描かれていた。昌子さんがにっこりして皺だらけの指をそっとバラの上に置いた。
「そう。あなたでしょ?」にっこり笑った彼女の顔に、ちょっとズキンときた。「ああ、わすれてたねえ。このオジサンも描いてあげなくちゃね」期待するやんか、オレはどんな花になるんや。ペピちんの「アート」を中断させることも忘れるぐらいオレの視線を奪う腕の運びが美しい。
「できた」という声とともにペピちんから、さっとクレパスを取り上げて道具をしまうと「おじゃましました、また来ます」と彼女ポニーテールが去っていった。

はっと我に返って、ペピちんに水を飲ませる。Dスキンさんから取り寄せてある万能フキンでカラーのレールアートを惜しいけどふき取る。昌子さんはスケッチブックを抱えてうつらうつらしているので助かる。小一時間かかって後始末を済ませたら、エガちゃんたちが散歩にでたメンバーを連れて帰ってきた。
この民家をベースと呼ぶには深い理由があるのだが、それはさておき、ここにはペピちんや昌子さんをふくめて6人の「障碍」者たちが集まって暮らしている。サポートメンバーはオレ以外には三人。エガちゃん以外は通いであるから、8人がここで寝泊りしている。仕事に出ている2人は夕方まで戻らない。
「あれ、昌子さん。宝物が見つかったの?」昼食の準備をしていたエガちゃんがスケッチブックに目をとめて話しかけると、昌子さんがそっとページをめくる。ああそうやった。どれどれ、オレはコスモスかなそれともうん、大きなケヤキの木かも。

バラと向日葵の上に、翼をせいいっぱい大きく広げたカラスが一羽か描かれていた。これがオレ?
「へえ。昌子さん上手だねえ」と事情を知らないエガちゃんが誉めると、昌子さんはすっと立ち上がり玄関の方へ向かう。そして、上がりがまちにそっと腰を下ろして外の様子を眺めている。そっか、昌子さん彼女が気に入ったんやね。そういえばあいつ「また来ます」って言わなかったか?

これがこの日からの昌子さんの日課になった。そして3日目の朝、昌子さんが同じ場所に坐り大好きな牛乳を飲んでいる所に、「こんにちわ」と彼女は真っ赤なバラの花束を抱えて再び現れた。それからはほぼ毎日のように昌子さんに会いに来るようになり、週末にここで寝泊りする事が自然になった頃、ゴミはベースの一員になっていたのである。

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