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スウィートbonbon(壽光寺の内緒話)

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上方落語界はここ数年、襲名ラッシュである。
 
見渡せば、かつて襲名に以下の観点をきちんと持っておられた六代目は既に亡く、桂米朝師は老いた。
 
上方落語やお笑いの世界に、批評はなくなって久しい。
 
吉本が株式会社となり、テレビや興業に一定の影響力を発揮するようになり、歌舞伎など伝統芸能に強い松竹芸能にも、ご意見番といえるような批評家は育っていない。面白ければなんでもいいのか、ええ、いいんです。というレベルで止まっている観がある。私見であるが少々書きおきたい。
 
 
芸人の襲名には4つの要素がある。
 
一つは、大きな名跡を継ぐことで、これは若手中堅の芸に「将来性」をみこんでいるということとその芸人が歴史的系譜の継承者であると、その芸界、師匠筋が認知したことから起きる。
 
二つには、空き名跡が由緒があって、空けておくことがその芸界においてマイナスになるので、一定の実力者に継承させるという、名跡そのものの伝統と力から起きる。
 
三つには、「襲名」によってその芸人の覚悟や今後のありかたを宣言する必要(ある種のけじめも含めて)から起きる。
 
最後に、「襲名」による経済効果、すなわち興行におけるメリットである。
 
例えば、歌舞伎界の香川照之氏が市川中車を襲名されたのは、3番目。
 
また、江戸落語の林屋こぶ平師が、江戸林屋の家元、九代目林屋正蔵となったのは1番目と2番目である。
 
上記の4要素はからみあうが、いずれにしても、「襲名」はその芸界の内部のレベルを外に表し、かつ内部の水準、良識を世間に示すことになる。
 


さて。上方落語史をざっとラフスケッチしておく。
 
明治大正期に隆盛を誇った、上方落語。大阪を拠点とした林家と立川から、京都を拠点にしていた笑福亭。そして京都から大阪をまたにかけていた桂派が、明治になって二大勢力となってしのぎを削りった。
 
これに明治の芸人鑑札制度や寄席への風俗規制をふまえて、噺家自身も席亭であるという江戸の寄席から興行者の寄席への変化が影響する。
 
明治のコレラ騒動を生き延びた名人が、桂派(桂文三→二代目文枝一門)と三友派(笑福亭福松、桂文之助→二代目曽呂利新左衛門、桂文都→月亭文都らの合同派、コレラで死去した文団治の弟子・米団治も二代目文団治となって柱となる)に分かれてそれぞれの席で興行し対抗したのであった。この文団治は東京に行ってしまった桂派家元名、出世の最後で止め名ともいうが、これを東京から一代限りと取り戻して七代目文治となる。この勢力は、寄席の出番に色物を交えてバラエティにとませて人気を集めていき、やがて弟子に大スターの春団治が出る。
 
 
一方桂派は、素噺を中心に芸をみがき、各代の文枝のもとで、文三、文我、文之助、文吾、歌之助、枝三郎、錦枝、等々を輩出していく。
 
 
ところが、席を有する興行主によって出番や襲名が左右されることになると、いわゆる「受け」と芸との対立様相もおき、出番や看板への不満に噺家たちは集合離散をし、旅興行で稼ぐものや東京へ行くものなども生まれる。芸能の大衆化とはそういうことであって、興行(人気と銭金)とはそういうものである。イコール芸ではないとするものや、いや売れてなんぼという、現代も抱える事情がここに発生する。
 
自前の小屋がないということは、興行主に左右されるということである。大阪では前述の二大勢力の競合による隆盛期は時期にしては10年ぐらいであり、明治末から大師匠たちが世を去っていくと第一次の落語ブームは少しずつ衰えていく。
 
大正には既に吉本興業が寄席経営を手中にし、落語より色物という路線を走る。
 
ここに至る歴史には、速記の普及による言文一致体の「読む芸能」が展開していくことも落とせない。テキスト化された落語が生まれだしたことにより、前述の地方興行が可能になっていく。細かい経緯はそれなりの先輩方の著書を読んでいただくとして、要は「落語」というライブの芸能は、その後レコードの誕生によって記録されラジオによって、寄席に行かなくても聞けるようになりと、新しい媒体による変化をよぎなくされていく。
 
昭和になって本格的に映画という娯楽が人気を集め、レコードによる芸能が、音楽・歌曲に和洋・クラシック・演歌を問わずに支持され、講談・浪花節と全国的に広がるが、一方でそれぞれの芸のライブハウス、定席は失われていく。大阪・堺の例では、昭和にはもうすでにすべての寄席がなくなるか映画館になっていたのである。
 
こういう中で、二代目春団治(福団治)や五代目松鶴は、吉本興業の落語軽視に危機感を覚えて、一定の距離を取り出す。特に五代目は笑福亭と林家という今日大阪の家元の系譜を師匠筋でも血縁でも引き継いだので、その危機感は並ではなかったのである。既に、寄席では十分な持ち時間も与えられずに、「古い芸・滅びる芸」と扱われていた落語。
 
詳説はしないが、こういう状況で日本は戦争の時代を迎える。この五代目の努力がそこに結集した三代目米団治らの力で、戦後の上方落語に辛うじてつながったことを忘れてはならない。
 
芸事はやはり「芸」への愛着と努力に勝るものが引き継ぎ発展させるのである。
 


さてさてさて。で襲名である。笑福亭は7代目騒動と故松喬師の襲名から名跡の復活や大きな変動はないと記憶している。そこで、桂。
 
歴史でみるように、現上方落語協会会長は六代目文枝師。五代目文枝は四代目文枝の弟子であるから歴史系譜は正しい。また大名跡であるから復活継承させることは大事である。この筋からはつく枝から五代目文三が生まれたがこれも桂派の明治期の名人の名跡である。筋目は正しいが芸の上からは二つ目の意義の襲名。本人は大変であろうが兄弟子の家元の期待値は高いということ。五代目の孫弟子には枝三郎がある。
 
四代目文我は、桂枝雀の弟子。枝雀は米朝門下であるから、米団治系。これは筋違いである。しかし、三代目文我が弟子をもたず、現文我にネタをつけていたこと。現文我自身が、文我歴代を学んだ上で、上方落語史に「文我出席控」の名を残す「文我」を受け継いだのであるから、これは米朝大師匠の落語界と歴史性を考えた許可であり、二つ目と三つ目の意義であった。結果、親子寄席や子供向けの落語絵本など独自の展開をしてある種の大家への道を歩んでおられる。
 
 
米朝系でいえば、朝丸→ざこば、べかこ→南光は、桂派の重鎮であった名跡をかはり二番目、三番目の理由で継承。そういえば、小米→枝雀もまた同様。五代目文枝が小文枝の時代であり、昭和→平成の桂派の実質家元として実力でその地位を確保したのが人間国宝・米朝であったから、このあたりは他派の了解の上であったろう。しかし師匠筋から言えば、正しくはない。
 
これには文団治門下の文紅師があって、米朝→米団治→文団治という、三友・桂派の系譜が戦後、実態的に分割されていたことが理由であろう。文紅師とは不思議のご縁があったのだが、文団治を継承して欲しいと密かに思っていたが叶わなかった。米朝師に三木助をつがそうという意図があったりしたことも六代目が語り残しているが、結果「米朝」が大きくなったので小米朝が米團(団)治を継承した。
 
一方昭和の大名跡になった春団治。これも文団治系であるがなにせ爆笑王の系譜。一家となって春団治が止め名のようなのが実態。そこで大きな襲名はおきていない。
 
さて第一に、桂雀松の文之助襲名。そして月亭八天の文都襲名である。事務所は米朝事務所と吉本興業。襲名の意義の一つ目から言えば、両方共に問題ありである。興業サイドなのか協会サイドなのかわからないが、師匠名です。もちろん雀松師、八天師が、文之助、文都となって、ひと皮も二皮も向けての大活躍となればいいでしょう。
 
米朝、枝雀級までいかなくても、500〜700のホール落語も自力で満員にできるとなれば値打ちはある。また文之助の場合は二代の伝統で、京都に拠点をおいて京都落語を米二師ともに隆盛に導くという方向もある。
 
しかしそうでなければ、芸と名の均衡が取れず本人が潰れる場合もある。文都歴代は不遇であるので継がなかったという説もあるので、四天王を復活させればいいというものでもあるまいに。月亭の名前を大事にしたいなら可朝は別格として、生瀬や都勇、春松などを復活させてはどうだったのか。
 
可朝襲名時の吉本興業の林社長の態度にあるように、月亭自体が文都へのオマージュではないので、やりたい放題がこの一門である。筋目は全く正しくない。
 
文之助にしても、なぜ文之助か?をこれから文之助自身が証明せねばならない。米喬も空いている。米之助も空いている。玉団治もある。明治の名跡を復活させたいので前座名のものを真打と世間に認識させるために名跡を継がせるには大きい名である。
 
米朝門下に朝太郎や米八などがあり、枝雀門下に雀三郎、九雀、む雀という二つ目っぽい名前が残っていて、いづれも実力者。同じく、鶴瓶や呂鶴に松枝に鶴志もそう。春若・春駒両師匠も文団治系の名前を継いでもいい。林家では、小染があり、染二があり。
 
協会主導「なんでも明治までの伝統復活」といくなら、八代目松鶴に四代目福松、さらには木鶴や梅香もあるよ。桂では慶治も文吾も菊団治も。立花家花橘もある。橘は米朝預かりで、圓三師は引退??? ならば円や円都はどうか。林家なら本来の止め名の菊枝、正三。蘭丸も。
 
そして文団治。
 
名跡復活の意義において、芸界(落語家仲間やベテラン連)と耳の肥えた客筋がどのぐらい納得しているのか、4ツ目の興行中心の襲名、いっときわっと客を呼ぶ、という事態だけは避けたいものである。
 
 
誰も言わないので書きおいておきたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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