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近頃は、 糸電話を作るのに 紙コップを使うのだそうだ。 紙コップの底に糸を通して いとも簡単に… ということだろうが 私が子供の頃には 紙コップなんてものはなかった── わけではないが 当時はバヤリースの オレンジジュースの自動販売機くらいでしか お目にかかれる代物ではなかったから 円筒に パラフィン紙や トレーシングペーパーのような 薄くて強い紙をはって 作ったものである。 だが、 私が育った土地は モノが手に入り難い所で トレーシングペーパーの入手すら不自由 父親が粉薬を 呑むことがあれば ラッキ〜! その包み紙を利用したものである。 円筒も似た様なもので 孟宗竹のような 立派な竹が育つ土地柄でもなかったから 厚手の紙を丸めて円筒にするのだが 固いボール紙は丸めにくいし 買うのはお金が勿体ないと 中にはトイレットペーパーの 芯を使う者がいた。 子供といえども さすがに 使用済みのものは抵抗がある。 だから 未使用のものを使用するが そんな モノがない モノがないと言うくせに なんと勿体ないことを と思うことなかれ。 当時の トイレットペーパーは 製造技術の未成熟さのおかげで 芯をクリクリっと捻ると トイレットペーパーの終端と 芯が貼りついた部分が剥がれて 簡単に取り外すことができたのである。 誰がやり始めたのかは知らない。 だが、 子供というのはこういうのが 大層好きな生き物である。 私のクラスでは 竹や段ボールを円筒状に丸めたものより トイレットペーパーの芯の方が人気があった。 だが、 この糸電話 今の子供たちが作る 紙コップの糸電話より 音質はよかったかもしれない。 糸電話は 糸の振動によって 音声を伝える。 その原理は 声は 空気を振動させ 空気は 話し手の筒に貼られた パラフィン紙を振動させる。 パラフィン紙の振動は 糸に伝わり、 糸が振動する。 糸の振動は 相手の糸電話のパラフィン紙に伝わる。 糸によって 振動させらたパラフィン紙は 空気を振動させて音声になる── パラフィン紙は 紙コップの底より 薄くて繊細だから 今風の 紙コップの糸電話より きっと性能が良かったはずだ。 ところで この糸の振動を 電気に置き換えたのが マイクやスピーカーである。 溝に刻んだのがレコード盤、 磁気の変化にして記録したのが テープレコーダー・カセットテープということになる。 糸電話が ちゃんと音声を伝えるのは 空気の振動と同じように 糸が振動するからである。 同様に マイクやスピーカー・レコード盤 それにカセットテープも 空気の振動と同じように 電気や溝それに磁気を変化させる。 だから このような機械のことを 英語で"相似"を意味する 「アナログ」という。 色々言う人がいるが、 同じような動き 似た様な動きで 伝えたり記録したりするから アナログなのである。 アナログ録音の時代 レコーディングスタジオや ラジオ局では 録音した音声や音楽を テープを切ったり貼ったりして 編集をしていたようだ。 だからそう思うのかもしれないが けしてアナログは手作業という意味ではない。 糸電話の パラフィン紙と 紙コップの底のように 素材や環境などに左右されやすいから 感覚的とか感性みたいな 使い方をする人もいるが そんな意味もない。 今や デジタルの時代です という輩がいるから 古臭い、 時代錯誤 懐古主義というイメージがあるが それはアナログではなくアナクロ アナクロニズムである。 そもそも、 デジタルなにがしという機器の多くは アナログ信号を数値化して あ〜だ・こ〜だと やっているのである。 たとえば、 デジタル録音がそうだ。 マイクで拾った アナログの音声信号を もとに数値化しているのである。 糸電話の糸や、 レコード盤の溝は波うっているから アナログは波だという人がいるがそうではない。 それは、 伝わる時間と一緒にみているから そうみえるだけだ。 例えば、 海の波も流れているように見えるが 海上に浮かぶブイのように ある一点だけでみると 波は上下しているだけである。 ─海で流れされるのは波ではなく 潮の流れのせい─ 糸電話の糸も それと同じ。 糸の ある一点だけをみると 海のブイのように 上下に振動するだけなのである。 だから、 とてつもなく速く 例えば、 一秒間に八千回(電話)とか、 四万四千回(CD)もしくはそれ以上の 速さで測ることができるなら 糸の振動すら その瞬間、瞬間は 温度計の水銀柱の高さを測るのと 同じように計測できる。 デジタル技術の世界では このようにして音声の振動、 波の高さを数値にしている。 これを、 アナログ・デジタル変換(A/D変換)というが それはさておき そして、 計測した数値を棒グラフ化して ずらっと並んだ棒の高さを見てみれば レコード盤に刻まれた 波のように振幅している というわけである。 つまり デジタル機器の動きは 前回の 百葉箱で紹介した 小学生の頃に 無理やり入れられた科学部の活動と どこか似ているのである。 が またもや 長くなったのでつづく |

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