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旅の重さ

映画
旅の重さ』を、
テレビで観たのは
七十年代の後半と記憶するから

三十数年も前の
土曜日だったか日曜日だかの
昼下がりのことである。

映画は
今風にいうと
十八歳の女が
自分探しの旅に出かけ
四国でお遍路さんをするというものだが

ひょっとすると
私がお遍路さんを知ったのは
この『旅の重さ』でだったかもしれない。

となると
この映画を観ていなかったら
数年前お遍路さんに出かけることも
なかったかもしれない
ということになるが───



当時の私は、
かつて神奈川県Y市にあった
勤め先の会社が
アパートを借り切って急ごしらえした
社員寮に住んでいた。

「面白そうなのあるんや
 見してくれへん?」

愛媛県出身の同僚
記入サンプル:愛媛一雄くんが
テレビを見せてくれと
私の部屋に頼みこんで来たのが
『旅の重さ』を観たきっかけである。

映画は
素九鬼子(モト・クキコ)という
幻(?)の作家による
同名小説を映像化したもので

これが初主演だった高橋洋子が
NHK朝の連続ドラマに起用される前の年の──

'72年に製作・公開されたというから
もう四十年近く前の作品ということになる。

なんでも
原作の小説は
亡くなった女流作家の
遺品を整理していた時に見つかり

しばらくは
作者がどこの誰とも分からず
作者の正体が不明のまま出版された
稀有な作品としても有名で

のちに
名乗り出た作者は
他の作品で
何度か直木賞候補に
選ばれたそうだが

今も昔も
この手のことに疎い私は

おそらく
記入サンプル:愛媛君の薦めがなければ
この映画を見ることは生涯なかったろう。

それに
たとえ放送時間帯に、
偶然チャンネルを合わせていたとしても
すぐにチャンネルを他に変えてしまったろうから

『旅の重さ』の存在を記憶に残すことすら
なかったに違いないのである。

映画は
高橋洋子演じる
主人公"少女"の
ナレーションで始まる。

『ママ、びっくりしないで、
泣かないで、落着いてね。
そう、わたしは旅に出たの
ただの家出じやないの、旅に出たのよ』(*)

当時
二十歳ソコソコだった
屈折した男には
これがなんともむず痒く、

その文体も
読み上げる口調までもが
私の奥底をイラッとさせてくれ

この時代風に言えば
テレビのチャンネルを回すのに
十分な動機を持たせるものであった。

同僚の愛媛君は
この映画に感銘を受け
こののち原作を読んだらしいが

小説は映画以上に、
というより全面──

『ママこの生活に私は満足しているの。
この生活こそ私の理想だと思っているの。
この生活には何はともあれ愛があり、
孤独があり、詩があるのよ』(*)

といった調子らしく
さして文学青年でもない愛媛君は
この乙女チックな文体に耐え切れず
文庫本の半分くらいのところで
読破することを諦めたそうだ。

ちなみに
私は1ページ目で
撃沈であった。

それでも奇跡的に
最後までテレビの前に
いる事が出来たのは───

幸い映画は

小説と違い
手紙を読み上げる
ナレーションばかりではないし

登場人物も
秋吉久美子が演ずる
自殺した文学少女以外は
大人ばかりだから
役者の台詞はそう気にならない

手紙を受け取る
母親のシーン以外は
全面ロケーションとのことで
四国の景色が十二分に楽しめるし、

高校を卒業したばかりの
高橋洋子がウイウイしく輝いていて

どこか
小学校三年生の時の同級生で
副委員長だった女の子に似ていてたものだから
懐かしさに似た好感を持てたし

何かというと
必然だ必然だといっては
女優さんを裸にする時代のおかげで

高橋洋子の全裸シーンや
同性愛を含む性描写もあった

───から、かもしれない。

ま、
そういう意味では
裸も必然なのかもしれぬが

最初は
不純だった私も
話が進むにつれて
次第に映画に引き込まれ…

って


しまった

本題は映画ではなかったのに
長くなったので

つづく

イメージ 1

注釈:本文中の(*)については
WikiPediaの「旅の重さ」の項と
YouTubeにアップされている動画を参考にし
一部を引用しました

雨の山道

イメージ 1

歩いても歩いても
山道だった

この日は、
朝からあいにくの雨

濡れた石で
靴は滑るし

そのたび
へたくそに背負った
リュックが揺れて
その反動で身体がぐらつく

昨日一日で作ったマメで
思うように踏ん張れない。

道幅は狭く
崖に落ちれば
死ぬことはなかろうが
自力で這い上がる
自身がない。

十一番札所の藤井寺から
十二番札所の焼山寺まで

四国八十八か所
最初の遍路ころがし

昔のままの姿を残す
数少ない遍路道。

山道は
上り下りを繰り返し
いつまでたっても
終わりそうにない。

カッパは
謳い文句通り
雨ははじくが
謳い文句通りには
風を通さなかった。

体温が異様に上がったようだ。

心臓が音を立て
高速に打ち始めた。

慌てて
カッパを脱ぎ
びしょ濡れになって
歩きはじめる。

一歩一歩
歩いていれば、
いつかは焼山寺に辿り着く

そう言い聞かせるが
あの曲がり角をまがっても
やっぱり山道。

途中、
柳水庵という寺に
公衆電話があった
ご丁寧にタクシー会社の
電話番号も書いてある

ここらで挫折する
遍路もいるのだろう。

携帯電話は
アンテナ・ゼロ本
ずっと圏外

私は脈が上がれば
歩みを緩め
おさまれば戻して
歩き続けた。

一歩一歩
歩いていればと
自分で自分を励ますが
永遠に思えるほど
道のりは遠い。

六月に入り
歩き遍路には
時期が遅いのだそう。

暑さ寒さで
遍路も減るとかで
同行者はなく
すれ違う人もない。

雨の山中一人きり
この雨の勢いじゃ
台風は近い

やがて
小さな集落に出た。

無人の民家で雨宿り
朝方コンビニで買った
弁当を広げる。

どこからか聞こえる
笑っていいともの
オープニング曲。

嗚呼すぐそこには
日常があるんだなと
にぎり飯をほおばった。

一歩一歩
歩いていれば、
いつかは焼山寺に辿り着く

気楽なものではないか

ぐらつきながらも
歩きつづければ
いずれは辿り着くのだ。

そう思えば
気持ちも楽になる。


十年足らず前、
四国にて───

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記入サンプル:熊本太郎
記入サンプル:熊本太郎
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