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どうせ、
名前なんか
上げられないとふんだか。

そこから
突破口を開いて
何とかしようという
魂胆なんだろうが

どうしてそこまでして
ウチの女の子からチョコレートを
ひねり出させたいか理解に苦しむ

「M林さんに、T海さん、それから…
 M林さんあたりは、
 私の配属前からだから
 コレに関しては、
 私より古くからじゃないですかね」

「あ、そう…」

中年紳士の声が小さくなった。
そう、無駄な抵抗はやめなオッサン
なのである

「ああ、T田さんもそうだっけ?」

「え?T田さんって
 ウチのT田課長のこと?」

中年紳士は、
驚きを隠せなかった。
ふふふオッサン動揺しとるな。

「あ、T田さんは
 特別枠だっけか?」

私は男だから
さすがにそこまで詳しくないからと
隣の席の女性SEの
大宮さんに助け舟を求めた。

「ええ、そうですね。
 T田課長は
 ホワイトデー代わりだとおっしゃって
 別の日に沢山のお菓子を
 私達女性に持って来て下さいますね」

私が
大宮さんの顔を見ながらうなずくと、
重々承知してくれたらしく
追い討ちを入れてくれた。

「でも、そういう方
 沢山いらっしゃいますよ
 製造営業部のE沢部長とか
 あと官公庁の部長さんなんかも…」

「え…
 ウチの部長も?」

若い頃、
ヤンチャをしていた分
上下関係には敏感なようだ。

あきらかに
うろたえている。

「そういう方も
 残念がってるでしょうね
 困った方のおかげで中止になって」

「あ、あぁ、そうだな」

そうだよオッサン
いつまでもここにいると
現行犯で捕まり
お偉いさんやらなにやから
吊るし上げ喰らいまっせ。

そう

そういうこと…

そういうことですか

オッサンは
独り言をつぶやきながら退散した。

振り向けば、
向かい側の席にいる
インストラクター三人が
首をすくめて

まったく
あの人しつこいんだから

と、顔をしかめている。

口の形が
ありがとうと
言っているのもいるが

隣の女性SEは
私を使わないでくださいよ
と言いながら大笑いをした。

途中から
笑いをこらえるのに
大変だったようだ。

翌年も
この中年紳士は
エレベータホールあたりで
今年もないのかと
尋ねてきたが

バレンタインのイベントは
二度と戻ってはこなかった。

課や係など
小さなグループで
こじんまりとやるのも
いたようだが
部全体では復活しなかった。

発足当初は
20名程度だった
新規事業の技術サポート部隊も

数年で膨れ上がって
このころは百名近くになっていたので
そう簡単にはいかなかったようだ。

嫌な前例があるから
仕方のないことではあるが──

「つんつん」

擬音を口にしながら
女性の指が私の肩をつついた。

「これ、どうぞ」

私達からだといって
インストラクターの松戸さんが
四粒のチョコレートを差し出した。

あのオッサン…

いや中年紳士が
捻り出せなかった
チョコレートである。

「なに、これ」

「さっきのお礼」

向かいの席から
背伸びして同じくインストラクターの
大阪さんと尾張さんが顔を覗かせた。

隣の席の女性SE
大宮さんも参加してくれたようだ。

だが、ここで

「たんなるお礼?
 ってことは
 義理チョコにもならんのか…」

などと
言うものではない。

「あ〜、私達の愛情がこもってるのに
 そんなこと言ったあ」

「そうですよぉ、
 そんなこと言うなら
 私が頂戴します」

「そうそう、
 最近、熊本さん太り気味だから
 私たちが食べてあげますよ」

「あ、松戸ちゃん
 私にはそれ頂戴」

「ハイ、どうぞ」

「ええっと、じゃあ私は
 大阪さんの!
 美味しそうだったんだもん」

あっというまに
チョコレートが消えた。

「ふふふ
 大丈夫ですよ。
 私のストックまだありますから」

「あ〜大宮さん。やさしい」

「駄目よ、熊本さん太るから」

あはは…

なんてことを
前の年までは
百名近い若い男女が
やっていたわけだ。

そりゃあ
よその部門の人間が
羨ましがるのは無理もない。

だが、
だからといってな
中年のオッサンよ

あんたら
もういい大人なんだから
若い女の子に
チョコレートなんか
せびるんじゃないよ

今の時代に
ギブ・ミー・チョコレートもねえだろうが

みっともない

と、

今では中年になった
自分を戒めるのである。

<<おしまい>>




その1その2その3のつづき

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バレンタインの行事は
内輪のイベントとはいえ

他の部門の人間には
なにがなんでもチョコを上げない
という訳ではなかった。

彼女たちは
我々男性陣にだけでなく
普段仕事で世話になっている人には
部門に関係なく渡していたようである。

その日
打ち合わせなどで
部を訪れた人に振舞うことも
いとわなかった。

つまり、
常識の範囲で
チョコを配っていたのである。

すると、
なかには、

『この前、おいしいチョコ
 ご馳走になったでしょ?
 まだホワイトデーじゃないけど
 忘れちゃうと困るから
 これ、皆さんで食べてください』

などと言って、
そこそこ良いお菓子を
お返しに持ってくる
できる中年紳士もいる。

わざと、
3月14日を外すのは
ある種の常套手段だが

それでも

すっかり
女性陣は感激してしまい

『こういう方は、私達も大歓迎!』

と、
なるのであった。

また、
普段一緒に仕事をすることの多い
コンピュータの営業マンは
我々のイベントを知るものが少なくない。

なかには、
女性陣から
こんなことやってんのよと聞かされ

『ああ、いいなぁ。そういうの
 ぜひ僕も参加させてくださいよ』

『頼む!チョコ頂戴
 絶対ホワイトデー参加するから』

などと
女性陣に懇願して
我々男性陣と一緒に
ホワイトデーに参加する条件で
チョコをもらう者もいたのである。

営業部は官公庁を含め
金融や流通・製造業など
産業別に分かれていた。

さらに
企業単位に
課や係が分かれているが
従来商品担当の営業マンと
新規事業のコンピュータ担当の営業マンは
同じ部内で働いている。

そのため、
毎年若いのが
我々の部の女性陣から
チョコレートを貰ってくるのを見て
羨むだけならいいが
勘違いする者が
現れたようである。

それに
若手営業マンのなかには、
中年営業マン氏に
変に自慢したのが
いたのかもしれぬ

それで
なんであいつらだけ
ということだったのかもしれないが──

「じゃ、そのホワイトデーに
 ウチの若いのも入ってたの?」

「ええ、そうですよ」

中年紳士は、
私が答えを窮するようにしむけて
形勢を立て直すつもりのようである。






その1その2のつづき

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当時、
私がいた事業部は
官公庁や大企業を相手に
取引をするところだった。

そのため
よその営業部門より
キャリアが長い人が多い。

若い営業マンもいるが
それは新規事業である
コンピュータの営業職である。

目の前の
中年紳士も
よその営業所に行けば
長のつく立場のはずだ。

そういう
百戦錬磨の営業マンが
執拗に迫ってくるものだから
インストラクターや女性SEも
ほとほと困り果てていたらしい。

『まったく、
 たかだか数十円のチョコレートを
 どうしてそんなに欲しいがるかね』

彼らの行動は
50名近くの
二十代女性を預かる
部長にとっては
なんともやりきれないものであった。

今とは違い、
景気が良かった
バブル期のことである。

技術職と違い
営業職の人間には
売り上げに応じて
インセンティブが入るから
お金は持っているはずだ。

クラブでも
キャバレーでも
スナックにでも行って
そこのおねいちゃんから
あんなもの幾らでも貰えるだろうが
と、
部長ならずとも
誰しもがそう思う。

『ウチの女の子に
 チョコレートを無心するのを
 やめさせて下さいよ
 ウチの子は、
 商売してんじゃないんだから』

前の年か、
その前の年くらいあたりから

部長も
他部門の長や
場合によっては
直接本人に電話などするして
注意を促していたのである。

時には
怒気を含んだ口調で
苦情を申し立てたようだが
なかなかうまくいかなかったようだ。

なんせ、

彼らは
無理を通して
成果を上げる事に
営業マンとしての
喜びを感じてきた者ばかりだ。

また、
そういう人間は
他人に
自慢することはあっても
無理を言った相手をきずかう
ようなことをする者は少ないから
余計にやっかいである。

だいたい
こういう営業マンの商談は
売ったあとが大変なのだが

ま、
それは
今回関係ないので、割愛──

「こちらの趣旨を
 無視する方が増えてきたらしくて
 本当に困ったもんですよ」

「そ、そうか
 それはいけないな」

「ええ、
 なかには
 かなりしつこくウチの女の子に
 チョコレートをせがむ方がいたそうで…
 まあ、それで中止になりました」

中年紳士の眉がピクンと動いた。

そうだよ、おっさん。

あんたのことだよ。

去年の今頃

クソッ!
またあいつらやってる
畜生、
なんで俺たちのはないんだよ

などと、
ウチの部と
お宅の部を挟む通路で
いきまいていた
中年おっさんらのひとりだろがよ

あんた──


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レンタインが
中止になった年の
2月14日の朝──

前年まで行われていた
部内のイベント中止を残念がる声は、
オフィス隅にある
自動販売機コーナーまで聞こえてきた。

紙コップのコーヒー片手に
声の主を見やれば
同じフロアー隣りにある
官公庁を担当する営業部門の
中年営業マン氏である。

中年紳士は
私が所属するグループ周辺で
舌打ちをして立ち尽くしている。

きっと、
若い頃は
かなりヤンチャをしていたんだろう
立っているだけで威圧感がある。

同じグループの女性陣は、
そ知らぬ顔で仕事のふりして
取り付く島を与えない構えだ。

中年紳士は
近づいてくる私を睨んだ。

「ね、
 今年は本当にやんないの?」

字面はやさしいが
声は低いし
髪は綺麗にオールバックに固め
目玉はギロッとしているから
女性陣が怖がるのは無理はない。

普段
接点のない
御仁であるから
なおのことである。

「ええ、
 今年は中止です」

私の返事で
中年紳士の疑り深い顔は
眉がさがり
すがるような顔つきになった。

「私も、なかなか良い習慣だと
 思っていたんですけどね
 なくなって残念ですよ」

「そうだろ。
 なんでなくなったんだよ」

中年紳士の前を
回り込むようにして
席に向かうと
救いを求めるような
仕草をみせた。

「いろいろと
 女の子に言う人がいるらしくて」

「そうなのか、それは残念だな」

正義感でも
沸きあがってきたか

中年紳士は
そういう輩は
今から俺が行って
とっちめて来てやる
という顔つきである。

やはり、

昔は、
かなりヤンチャを
していたんだろう───


レンタインイベントの中止は、

2月に入る前に行われた
インストラクターのリーダー格数名と
部長の間で行われた
打ち合わせで決められた。

詳しい
打ち合わせ内容は知らないが

『まったく、
 勘弁してくれよ。ってんだよなぁ
 みんな、もういい歳した
 大人なんだからさぁ…』

という
部長の声が
みんなの共通意識のようだった。

しばらく
あれこれ議論したようだが

結局
まいったねと
部長が苦笑いをした数秒後に、
最終決断がでたようだ。


、これで
 我々男性陣のホワイトデーも
 中止と言うことですけどね」

「え?そんなのもやってたの」

「ええ、そうですよ。
 基本的に
 部内の女性陣と男性陣が
 2月と3月にそれぞれお金を出し合って
 やり取りしていた内輪の行事ですから」

「あ、そうだったの」

中年紳士は
営業の勘が働いたか
それとも
ヤンチャ時代の勘か
危険を察したらしい
少し腰が引けた──

性陣が
わざわざ部長を囲んで
話し合いの場を設けたくらいだから
積極にやめたがってるのは
誰もいなかった。

みんな
何とかしたかったのである。

だが、
それでも
中止せざるを得なくなったは

事情も聞かずに
女性陣にチョコレートを
無心する輩が増えたからである。


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洋酒メーカーまでもが
バレンタイン・デーに
あやかろうとした頃だから
バブル期のお話しである。

時私は、
21世紀の
会社の屋台骨を支える
柱の一本に
なる予定だった
新規事業の技術サポートを
営業現場で担う部門にいた。

新規事業ということもあり

管理職を含めても
平均年齢が30歳に満たない
事業部内で最も若い集団で、

システムエンジニア(SE)と
インストラクターからなる人員構成は、
SEに女性がいることもあり
女性比率が高い部署でもあった。

の部署に

2月14日の朝
男性陣全員の机の上に
女性陣ご一同様からの
チョコレートが配られる
習慣があったのである。

翌3月14日には、
その逆が執り行なわれるのだが──

なんのことはない
二月には女性陣が
三月には男性陣がそれぞれ

一人2〜300円程度の金を出し合い
代表者が買出しに出かけて
当日の朝に配るだけのことだが、

それでも
他の部門の人間からは
羨ましいと言われていたようである。

レンタインがどうのと
目くじらを立てずに
気楽にいきましょうという
趣旨で行われる
朝のお楽しみ会は、

始業直前に
男性陣の代表者が

え〜
女性陣の皆さん
チョコレートありがとうございました
これからも、
お互い仲良く
楽しく仕事をやっていきましょう

などと礼を述べて
ひとまず終わるのだった。

菓子類を食べない
男性社員が多かったものだから

結局、
2月も3月も

女性陣が
大半の菓子をせしめるのだが
それはご愛嬌である。

論、
本気モードの人は
豪華なチョコでも
ブランデーでも
ハンカチでも
ネクタイでも
ご自身でも
なんでも
贈ればいい

そんなのは
個人の自由で
止めたりはしない

ただし
誰も見てないところで
勝手にやってくれ…
ということである。

の習慣は
女性の負担を減らすために
自然発生的に始まったようだが
私が着任したときには
すでに部内で行事化されていたように思う。

部課長などの管理職にも
ヘタに飲み会で部員の親睦会をやるより
こっちのほうが余程ましであると好評で

幸い
部内の男女比率が、
ほぼ半々だったこともあり
誰からも不満がでることも
なかったはずだったが

ある年
あっけなく
終わってしまった。

バレンタインが終わった
ある年の2月14日の朝のこと──

「なんだよぉ。
 楽しみにしてたのによお」

カップ式の自販機から
コーヒーを取り出すと
本当かよと言う
中年紳士の舌打ちがした。



*写真:写真素材 足成 

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