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私、活字がないと落ちつかないの
女は、
暇さえあれば本や雑誌を読むのが好きな
活字人間だと言った。
いつもどこかしらで
活字に触れていないと、
不安になるとまでいう。
本が手近にない時には、
最悪広告チラシで我慢するのだそうで
『活字中毒』
とまで言い切るのだった。
だが、
女が普段目にしているのは
活字ではない。
『もっと活字に触れよ』
という有識者も多いが、
そもそも、
一般の人間が活字に触れることは滅多にない。
というより、触れることができる代物ではない。
本来活字とは、
"活版印刷に用いられる
文字を彫った(金属製の)型"
のことをいう。
いわば、ひと文字だけ彫られた
ハンコのようなモノのことである。
かつては、
沢山の活字の中から原稿を元に
一文字・一文字活字を選び出して
それらを組み並べて印刷版を作り
本や新聞を印刷をしたのだ。
だから、
"活字に触れよ"と言われたら
印刷の職人さんになるしかない…
と言いたいところだが、
現在では、
活版印刷は殆ど行われていない。
今では印刷現場でも、
活字は姿を消したそうだ。
'96年に出版されたある本によると、
現在印刷で使われている写植機や、
コンピュータの出力文字は
"活字とは言わない"
のだそうだ。
その図書によると
近年、
出版界で若者の活字離れが言われるが、
本当に活字離れしているのは若者ではなく、
"本を出しているほうだ"
となるそうである。
つまり、
有識者がいくら
『もっと活字に触れよ』
と言っても
本を読む人が増えないのは
当たり前なのだ。
そうそう
活字中毒の女には
このことは
話さずじまいである。
文筆業や出版社の人間が
"活字の世界(の人間)"
"活字メディア"
というくらいだから、
仕方のないのことだろうと思ったからだ。
先の図書は、
出版に関わる人間の
印刷に関する無理解・不勉強も
怒っていたように記憶する。
なお、
別の図書には、
活字に代わる言葉もなく
写植機やコンピュータの出力文字を
活字ということもあるそうだ。
なお、ここでいう写植機や
コンピュータの出力文字とは印刷版用で
本などに印刷された文字のことではない。
また、
最近は活版印刷に興味を持ち
活字を組んで印刷する技法を
勉強する若者が増えているそうである。
テレビで見た範囲では、
名刺の印刷程度だったが、
"活字人間" 復活か?
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