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特攻という美談

特攻作戦は軍による強制があったのか?などという論争もあるようですが、志願兵がいなければ作戦が中止になるという事は無かったでしょうし、「希望せず」と返答した筈の特攻隊員もいたという証言等々から考えますと議論の余地はないでしょう。
意思確認は形式的な建前であり、特攻作戦は実質的には命令が基本であったと考えるのが妥当でしょう。
以前から述べておりますが、物事を見る角度とは色々とあります。
特攻隊についても然りです。
特攻隊について色々と調べてみますと隊員達が残した遺書や逸話の表記がとても多い事に気付きます。
そしてそれらは美談として描かれているものが殆どであります。
特攻という作戦自体は愚かで馬鹿げた作戦であったが、特攻隊員達の散り様は美しいという感じでしょうか?
確かに個々の遺書などを読んでいますと胸を打たれるような内容がとても多いと思います。
しかし、私としましては何か釈然としません。
それは、馬鹿げた作戦を遂行する事を美談としても本当に良いのか?という疑問からです。
そこで、私なりに視点を変えて考えてみる事にいたしました。
これから書く内容は上記しました通り、特攻作戦を強制的な命令と定義した上での見解であります。
特攻隊員達は靖国に祭られ「英霊」となることは当然の大前提であり、更に「軍神」としてその栄誉を讃えられるという時代のヒーロー的な扱いを受けていました。
まぁ、その栄誉や風潮は明らかに参謀本部が意図的に作り上げたものでしょうし、皆がその風潮に染まっていたという事でもないでしょうが、その風潮が死に行く者やその家族の慰めや肯定の根拠になっていた感は否めないでしょう。
さて、私が注目した生き残り兵の証言の中に「自分は何の為に死んで行くのか?と特攻の前日に考えた」との証言がありました。
私はそこにこそ本質があるのでは?と考えました。
つまり、特攻作戦とは戦局が苦しくなった上での苦肉の策であったいう認識は、大局の見えない一兵卒でも少なからず持っていた事でしょう。
「自分の特攻で戦局が変わるのか?」「ひょっとして無駄死にではないのか?」「残された家族は大丈夫か?」「自分は何の為に死んで行くのか?」などなどの心の葛藤は多くの特攻隊員にあったと思います。
しかし今更、後戻りなど出来ないとなれば、そこで何を想うでしょうか?
特攻とは戦地で偶発的に死ぬのではなく、死ぬ事が大前提の作戦です。
想像は困難ですが、おそらくはその恐怖や不安を払拭しようとする思考が働くのではないでしょうか?
つまり、大儀を見出し自身を肯定しようと自然に考えるのではないか?という事です。
この発想は現代社会でも当てはまると思います。
例えば色々な偽装問題で、心を痛めていた従業員もいたでしょう。
しかし、この不景気には自分自身や家族の生活もありますから、「良くない事」と判っていても会社の意向に従うしかありません。
そのように自身の中で選択肢が限定された場合に多くの人は「家族の為に仕方が無い」とか「自分が悪い訳ではない」など自分を納得させる為の自己肯定的な発想をするのではないかと思います。
つまり、残された多くの遺言状にある「お国の為云々、家族を守る云々」等々の潔い言葉の数々は絶望的状況の中から生まれた「後付の美しき志」では無かったのか?と考えました。
もちろんそれは全ての特攻兵がそうであったとは言いませんし、パターンも色々とあるでしょう。
「自分が特攻してもどうせ負ける」と思っても、その考えのままでしたら特攻なんて出来ないのかもしれません。
それぞれが死に行く事の何かしらの意義を本心ではなく思考として見出していたのであれば、それらを文面にした時にはおそらく高尚で美しい文面になるんだと思います。
それには、やりきれない気持ちと残された家族に宛てたという意味もあります。
私は冒頭にも少し書きましたが、馬鹿げた作戦を特攻兵の美談で有耶無耶にしてはいけないと考えています。
死という究極の恐怖を無謀な作戦で若き隊員に押し付けた責任は、許されざるエゴであると思います。
「生きたい」という人間の真っ当で根本的な本能を理不尽な画策された状況で押し殺し、無慈悲な命令を下した当時の上層部は狂っていたとするのが後世に伝えるべき歴史認識だと思います。
死を覚悟した特攻隊員は「死にたくない!逃げ延びたい!」とは中々遺書には書かないでしょうね。
では!

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