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タバン村最大の集落トゥーロガウンに着いたのは10月11日の午後2時ごろだった。トゥーロガウンはタバン川に沿った高台に広がる集落だ。200軒ほどの家が寄り添うようにしてかたまって建つ。タバン村の集落の特殊性を示す例として「タバン村では家々が互いにくっついて建っており、一軒の家に入ると外に出ずに10軒先の家まで行くことができる」という表現を多くの人から聞いていたが、これは事実とは異なる。確かに接近して建てられてはいるが、家と家どうしがくっついているわけではない。その他にもタバンに関する‘伝説’をいろいろと聞いたが、そのほとんどが事実とは異なることを後で知った。
トゥーロガウンに入ると、まず、マオイストが村人民政府のオフィスとして使っていた1階建ての建物が目に入った。建物の一部は政府側治安部隊により壊され、修理中だった。2年半前にタバンを訪れたときに、最初に連れて行かれた食堂へ行くと、外観が少し違っていた。一階の道に面した側にひさしが作られ、長いすとテーブルが置かれていた。前回来たとき、食堂の名前はネパール語で「ハムロ・サハカリ・ホテル(私たちの協同組合食堂)」とつけられていたが、今はカーム語で「ゲミ・シャン・サハカリ・ホテル(私たちのシャン協同組合食堂)」という名に変わっていた。「シャン」というのは人民戦争で犠牲になったマオイストの名前だという。入り口の両脇にかまどがあるのは変わっていなかったが、食堂で働くスタッフは新しい人に変わっていた。前回には、突然、この食堂に連れてこられたとき、ここで交わされるカーム語がまったくわからずに疎外感を感じたが、新しくなったスタッフの男女2人はネパール語を話している。2人とも党からの指示により、タバンの外から来た人たちだということがわかった。入り口にはメニューと料金表までかけられていた。ダル・バートが30ルピー、トウモロコシのデロが25ルピー、ミルク・ティーが1杯5ルピーだ。「マス・ハイ」というメニューがあった。聞くと「ガイ・コ・マス(牛肉)」のことだという。これが1皿15ルピー。豚肉は1皿20ルピーだった。牛はヒンドゥー教では聖なる動物として食べることを禁じられている。一方、豚はヒンドゥー教では低カーストの人のみが食べる動物。ヒンドゥー教徒のバフンが見たら卒倒しそうなメニューである。カトマンズなどの食堂と違って、ククラ・コ・マス(鶏肉)も、カシ・コ・マス(ヤギ肉)もメニューにはない。
私たちがくることはすでにタバンのマオイストたちに伝わっており、私たち3人がこの食堂の前に着くと、タバン村人民政府の議長が私たちにマリーゴールドの花輪をかけて、額に赤いティカをつけてくれた。一応、‘歓迎’をもって迎えられたわけだ。食堂でブラック・ティーを飲んで休んでいると、ロルパ郡人民政府議長の‘チリン’がやってきた。小柄なチリンは、タバン出身のマガル族で3代目のロルパ郡人民政府議長だった。後でわかったのだが、チリンとロルパ郡人民政府の初代議長で、マガラト自治共和国人民政府の議長を務めるサントス・ブラ・マガルは従兄弟どうしだった。今回のタバン滞在中に、サントス・ブラ・マガルに再会できればと考えていたのだが、チリンによると、彼はロルパの外に行っていて、接触するのが困難だという。
写真はタバン村トゥーロガウンにある「ゲミ・シャン・サハカリ・ホテル」
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