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またしても、絶妙のタイミングで“テープ・スキャンダル”が表出した。金曜日の夜、インド人が経営し、インドから放送されている民間テレビNepal One TVが中国人だとされる人物と、マオイストの国際局チーフのクリシュナ・バハドゥル・マハラのあいだの電話会話の録音テープを放送した。この会話のなかで、アイデンティティが不明の中国人に対して、マハラはプラチャンダを首相にするのに50議席が不足していると話し、明らかに議員買収の目的で5億ルピーの援助をこの中国人に求めている。私もテレビでこの会話を聞いたが、中国人が何度も「Mr Mahara」と呼んでいることから、相手がマハラであることがわかる。しかし、声からは、この相手が本当にマハラであるのかどうかは疑問であるという印象を持った。中国人の英語の話し方が中国人らしくないという指摘もある(mysansar.comの多くのコメント)。
この会話に関するメディアの反応が興味深い。昨日、最大メディアであるKantipurとその系列メディア(The Kathmandu Post、Kantipur TV, Kantipur FM)は、このニュースを報道しなかった。一方、強い反マオイストの方針をとっている日刊紙Nagarikと、インド資本の英字紙The Himalayan Timesはこのニュースを一面で掲載した。日刊紙Kantipurと英字紙The Kathmandu Postは今日の一面で、彼らがなぜこれを報道しなかったのかを説明している。
Kantipur紙編集長のスディル・シャルマが書いている説明によると、金曜日夜、ネパールの主要メディアの編集長約12人が中国大使の招待で、大使との懇談会に出席しているとき、The Kathmandu Post編集長の携帯電話に電話がかかってきた。この会話を録音したテープを報道する意図があるかどうかを聞いたもので、その後、他のメディア関係者にも電話がかかってきたという。Nepal One TVはこの夜のうちに「スクープ」として、このテープを放送。前出の2紙は翌日、これを報道した。しかし、Kantipurメディアは、このテープが中国政府に大きな打撃を与える内容であること、それだけでなく、テープの出所がもう一つの隣国、つまりインドであることから(シャルマは明確にインドと書いていないが、出所がインド大使館であることを示唆している)、テープの信憑性が明らかでないかぎり、これを報道しないことを決めた。
このテープの内容は確かに疑わしいところがある。中国人が会話のなかで何度もマハラの名前を呼んでいること。何よりも、なぜに、いかにして、この会話が録音されたのかということに疑問がわく。ネパール軍、そして、現在はネパール警察も携帯電話を盗聴する技術をもっていることは周知の事実。実際に、大勢の人の携帯電話が盗聴されていることは、容易に予測がつく。もちろん、マオイストのリーダーも、携帯電話で話すときには警戒をしているはずで、これほど大きなスキャンダルにつながることを携帯電話を通じて話すのだろうかと疑問に思う。
今日、6度目の首相選挙が開かれる。マデシ政党がマオイスト支持に回る可能性が報道されるなか、このテープは絶妙のタイミングでメディアを通じて表に出た。テープの影響ががどれだけあるのか、今のところ不明だが、マデシ政党は今日の選挙で再び棄権をすることはほぼ間違いない。テープが本物であるにせよ、偽物であるにせよ、首相選挙に関連して、お金が絡んだ“ダーティー・ゲーム”が進行していることは事実である。そして、これにマオイストが絡んでいるという噂があちこちで聞かれる。先日は、ネパール共産党マルキスト・レーニニストのCPマイナリ党首が、プラチャンダ支持と引き換えに5000万ルピーを供与するという申し入れがマオイストからあったことを暴露している。マオイストはこの問題について沈黙をするのではなく、はっきりとした説明をすべきである。
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ネパール首相が約30人の“ジャンボ訪問団”を連れて、ニューヨークで開かれる国連総会に行くそうである。この方には“恥”という概念など、まったくないようだ。今日、Kantipur紙がトップで掲載した記事によると、国連はそれぞれの加盟国から5名の代表のみを受け入れることになっている。しかし、ネパール首相は昨年も20人を超える訪問団を引き連れて渡米。今年は、すでに辞任を表明している暫定的な首相という身分でありながら、さらに大勢のメンバーを連れていくそうである。首相が属する統一共産党が棄権を続けているために、新首相が選出できずにいる。新政権の発足が遅れて、本予算の認可も遅れている。当然、財務省は首相の国連訪問にだす国家予算などはないといっている。
“6度目の首相選挙”が明後日5日にせまっている。しかし、主要政党のあいだでは何の動きも見られない。プラチャンダは5日の選挙で決まらなかった場合、立候補を取り下げることを示唆したが、明後日の選挙で勝つ工作も捨ててはいない。マデシ・ジャナアディカール・フォーラムとフォーラム(民主)の党首、つまり、ウペンドラ・ヤダヴとビジャヤ・ガッチャダールを甘い汁で釣る工作が明るみに出てきている。2人のマデシ・リーダーは、次の投票でマオイストを支持する方向で他のマデシ政党の説得を始めたという報道もある。しかし、マデシ全党のリーダーを「マオイスト支持」で合意にもっていくのはかなり困難だろう。
ネパール首相が辞任を表明して、すでに2ヵ月たった。5回も選挙を開いても首相が決まらない今の政治状況は、バブラム・バッタライが言うように「スガウリ条約以来、最大の危機である」。バッタライは「再びネパールにジャンガ・バハドゥルが出現しようとしている」とも言った。彼が示唆しているジャンガ・バハドゥルとは、もちろん元国王のことである。そして、その動きの背後に、プラチャンダがいることが噂されている。愚かな政治家たちのせいで、1万5000人を超える犠牲者の命が水泡に帰すようなことにだけはなってほしくないものだ。
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ビクラム暦のバダウ月も半分を過ぎたというのに、毎日のように雨が降っている。気温はそれほど高くはないが、湿度が高いために、とにかくよく汗をかく。何度も外出した日には2回、3回、ときにはそれ以上着替えるときもある。ここ2週間ほど、古い友人がネパールを訪ねてきていることもあり、久しぶりに観光のようなことをしている。バクタプルでは山の絵を買い、ボウダナートでは僧院を訪ねて、心地よいお経のなかにどっぷりと浸かってきた。やらなければならない仕事がないわけではないのだが、なんとなく夏休み気分で、すべての仕事を放り出して、本を読みふけったりした。村上春樹の『1Q84』全3巻を一気読みした2日間は、何年ぶりかの至福の時間だった。読み出したら止まらないほどに面白い小説は、私にとって最大の娯楽である。こんな小説が読めるのなら、仕事も生活もどうなってもよいと思ってしまうほどにありがたい。
首相選挙、UNMINの任期延長問題、マオイストの中央委員会議、ネパール会議派の党総会と、政治イベントは続いているが、和平プロセスはまったく進まず、政党リーダーは新憲法を制定することなど、すっかり忘れてしまったようだ。首相選出のための合意の試みはまったくなされておらず、下手をすると、ダサイン祭後、あるいはティハール祭のあとまでずれ込む可能性さえある。UNMINの任期延長は、おそらくこれが最後となるだろう。しかし、その任期のあいだにマオイスト軍の統合・リハビリが完了する可能性は低い。来年5月には、もちろん新憲法はできず、そうなった場合、今度こそ、制憲議会は解散となるだろう。
和平プロセスは崖っぷちでぶら下がっている状況にあるにもかかわらず、どの政党も真剣に対応策を考えていない。こうした状況をもたらした最大の責任は、もちろん主要3政党全党にあるが、統一共産党、とくにネパール首相がさまざまな局面で犯した過ちは重大なものである。現在、首相が筆頭に立って行っているUNMINの任期を延長すべきではないというキャンペーンも、そうした過ちの1つである。現在、ネパールの和平プロセスはUNMINを帰すような状況にはない。今のような中途半端な状況でUNMINを追い出すくらいなら、そもそも最初から国連に援助を要請すべきではなかった。わかりきった現状を理解できないのは、彼らが別の何らかの意図により動かされているからであると考えざるを得ない。
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首相選挙は9月5日に設定されているが、”合意”のための話し合いらしきものさえなされていない。話題の中心はUNMINの任期を延長するか否かになっている。ネパール首相はネパール軍の監視を止めることを条件に延長すべきと提案しているが、これは協定に反することである。国連もマオイストもこれを認めるとは思えない。ネパール軍はUNMINの出国をもとめてロビー活動を行い、一方、マオイストは昨日、6ヶ月間の任期延長を支持するよう国連安保理国の大使らに求めた。「UNMINは出て行け」と声を荒げている人たち(ネパール軍、バンダリ国防大臣、ネパール会議派と統一共産党の一部政治家たち)は、包括的和平協定とネパール政府、マオイスト、国連の3者協定の内容をすっかり忘れて(あるいは無視して)いるようだ。それならば、「協定はすでに無効」とはっきり決めたらどうかと思う。もちろん、それは和平プロセスが崩壊したことをはっきりと認めることを意味する。
進行中のマオイスト中央委員会議では、プラチャンダの方針を不服として、2人の副議長(モハン・バイデャヤとバブラム・バッタライ)がそれぞれ別々に方針提案書を提出するという、異例の事態になっている。バイデャヤこと、キランは「人民戦争が終結したと宣言したことは過ちだった」として、すぐに人民運動(ジャナビドロヒ)の準備に入ることを主張。バッタライはこれまでの和平プロセスのなかで獲得したこと、すなわち制憲議会をさらに利用して、他党と多少の妥協をしながら新憲法を制定すべきという方針をだした。プラチャンダの方針案はきわめてあいまいだが、インドを最大の敵として、外国の政治干渉を防ぐことを方針の1つとしている。議論は始まったばかりだが、キランはプラチャンダが党運営を誤ったと厳しく批判。誰の方針案が採択されるというよりも、最終的には3者の方針案の折衷案と言う形で出てくることになるのだろうが、ある意味で、この会議の決定により、ネパールの政治の先行きが決まるといっていい重要な会議である。
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パンチャーヤトの亡霊たちが、また動きだした。昨日、国民民主党のリーダー、パドマ・スンダル・ラワティの家に旧国王派の政治家たちが集まり、王制を復活させるために動きだすことを決めたそうである。出席したのは、スールヤ・バハドゥル・タパにカマル・タパ、ロケンドラ・バハドゥル・チャンダ、ラジェスワル・デヴコタ、パシュパティ・シャムシェル・ラナ。この会合を召集したのは、2005年のギャネンドラ国王のクーデターのあと筆頭閣僚に任命された“亡霊”のトゥルシ・ギリである。元国王ギャネンドラに最も近しいプラバカール・シャムシェル・ラナも出席して、王制を復活させるためなら、どんな援助もすると確約したそうである。
この動きと関係があるものかどうか、今のところ不明だが、もうひとつ気になる動きがある。ネパール軍のグルン参謀長が、9月半ばに任期が切れるUNMIN(国連ネパールミッション)の任期をこれ以上延長しないよう、マオイスト以外の政党リーダーに会ってロビー活動をしていることをKantipur紙が報じている。グルン参謀長は「自分は軍人である。政治はしない」と会う人ごとに言っていると聞いたことがあるが、こうしたロビー活動は明らかに政治的なもので、国軍の軍人に与えられた権限外のことである。
UNMINの任期延長に関しては、マオイスト以外の政党、とくにネパール会議派が反対をしている。UNMIN批判の大半は正当なものとはいえないもので、政党の過ちをUNMINのせいにしているようなところがある。主要日刊紙の大半、とくに最大日刊紙のKantipurも同様の指摘をして、和平プロセスが終わるまではUNMINが必要であると社説に書いていた。政治家のUNMIN批判を聞いていると、ネパール軍を保護するためにUNMIN批判をする、あるいはマオイスト批判にUNMINを利用するというパターンが明確に見られる。「UNMINが出て行くことは、和平プロセスの崩壊を意味する」とマオイストはUNMINの必要性を主張しているが、それは確かに事実である。UNMINの滞在が長期化しているのは、UNMINのせいではなくて、政党が和平プロセスに真剣に取り組んでいないから。自身で解決できるなら、そもそもなぜ国連を呼んだのか。依存はするが、感謝はしないという、こうしたイメージは国際社会でもマイナスとなる。それにしても、グルン参謀長の動きに背後には、例の勢力が見え隠れする。
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