Kathmandu Journal

東日本大震災の被災者の方たちの復興を祈って

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 昨日のブログで、プラチャンダの演説を絶賛したが、もちろん演説を聴いたすべての人が好もしく思ったわけではない。今朝の新聞のなかには、プラチャンダとネパール首相の悪口の言い合いをとりあげたものもある。プラチャンダがネパール首相を「(外国の)リモートコントロールで操られている」と批判すると、ネパール首相は「議会の350を超える議席に支持された首相を批判して、238議席しかもたない政党の党首がそんなことを言えるのか」とやり返した。

 議会や集会で、私も数え切れないほどの政治家の演説を聞いたが、演説が面白い政治家がトップになれるともかぎらない。たとえば、ネパール会議派のなかで一番演説が面白いのは、現在、反コイララ派として知られるプラディプ・ギリ。統一共産党では農民組織のリーダーでもある前内務大臣・副首相のバムデヴ・ガウタム。そのほか小政党のリーダーでは、いまだにモハン・ビクラム・シンの政党を守っているチトラ・バハドゥル・KC。いずれも、なかなか“主流派”にはなれない政治家だが、それぞれ個性があって、私は好きである。

 演説がうまい政治家に共通しているのは、自分の言葉で話すこと。当たり前のようだが、マオイストのなかには、プラチャンダを真似た“マオイスト言葉”で、同じ内容のことを話す人が多く、聞いていて面白くない。以前も何度か書いたが、プラチャンダは演説のなかで自身の失敗までも容易に認めて、“オープンさ”を売り物にする。自身の過ちを認めないネパール人の政治家のなかに、こうしたテクニックを使える政治家はなかなかいない。そのため、プラチャンダと直接話した人や、演説を聞いた人は、彼に一種の魅力を感じる。こうした特長は、あるいは“カリスマ性”の一部と言えるかもしれない。

 しかし、もちろん、話すことよりも、それを実行に移すことのほうが難しい。プラチャンダの問題もそこにある。今、マオイストは元国王派の人間も含めた党外の人間を、どんどん“マオイスト入り”させている。どうも、数ばかりが大げさに報道されているが、最近、マオイスト入りした人は、はっきり言って、党に好影響を及ぼすタイプの人たちとは思えない。もともと、所属していた政党に忠誠のなかった人たちで、マオイストに忠誠を尽くすとは限らない。こうした戦略は、今後、プラチャンダとマオイストのイメージに対しても、負の影響を与える可能性のほうが高い。

 今日、ほぼ2ヶ月ぶりに議会が再開された。主要3政党のあいだで、合意が成立し、午後6時すぎに再開された議会で、まず、プラチャンダが次にネパール首相が演説をした。1時間半におよぶプラチャンダの演説は実に力強く説得力のあるもので、30分で終わったネパール首相の内容のない演説と対照的だった。こうして、2人の演説を比べると、政治家としての能力に雲泥の差があるなと感じざるをえない。もちろん、演説だけで能力が決まるわけではないが、プラチャンダ演説の力強さ・説得力の強さは、“本物の思い”が言葉になっているからだと思わせるものがある。これだけの演説をできる政治家は、やはりこれまでネパールにはいなかったと言わざるをえない。それだけでも、プラチャンダの実力は認めざるをえない。今日の演説は、それほどのものだったということだ。

 さて、今日のプラチャンダ演説のポイントの一つは、1951年のラナ家打倒の運動から共和制になるまでのネパールの長い民主化闘争のなかで、ネパールの国民はさまざまな結果を勝ち取ったが、その後、治安機関、つまり国軍を変えることができなかったということ。彼は、今回これを試みたが、カタワル参謀長と、さらに軍の変化を望まない保守勢力の強い反発に会い、衝突を避けるために首相を辞任したと、自身の行為を説明した。現在も、水面下でカタワル参謀長は活発に動いており、「これほど強い国軍はなかった」(Kantipur紙編集長スディル・シャルマ)というほどの強い立場の温存を試みている。YCLを初めとするマオイストの行動には確かに問題が多いが、今日のプラチャンダ演説を聞くと、少なくとも、マオイストの主流派がとろうとしているラインは正しいのだと思う。彼らは精一杯の譲歩をしているのだ。

 主要3政党は大統領、参謀長問題に関して、議会で1ヶ月以内に議論することで合意し、ネパール首相は今日の演説のなかでこれを約した。プラチャンダは「(保守派勢力が望んでいる)衝突を避けるため、そして和平プロセスを完成させるために、柔軟になった」と、議会の再開に合意したことを明らかにした。他政党がこれに従わなかったらどうなるのか。問題は解決したわけではなく、ペンディングとなっただけである。マオイストは明日から中央委員会議を開くことになっているが、党内強硬派がこの譲歩をどうとっているのかも気になるところである。

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