|
このところ、また忙しく、ほとんどの記事を慌てて書いていたのだが、実は、最近、水面下でさまざまな動きがあり、書きたいことがたくさんある。今日は少し(時間的にというよりも精神的に)余裕ができたので、ネパール軍の動きについて、じっくりと書いてみたい。まずは、今日の英字紙The Kathmandu Postに掲載されたジャーナリスト、アキレシュ・ウパデャヤの記事をご一読いただきたい。オンラインでも読むことができる。http://www.ekantipur.com/columns.php?&nid=203136
勇敢にもこの記事を書いたアキレシュ氏に、まずは拍手を送りたい。これだけ明確に、カタワル参謀長−K.P.オリ(統一共産党)−ヤダヴ大統領(ネパール会議派)のラインの意図を指摘して、彼らがいかに危険なシナリオを企てているかを書いた記事はない。彼らの意図は明確である。カタワル参謀長指揮下で、ネパール軍を使って、マオイストの勢力・組織を力で潰すことにある。それが本当に可能かどうかは別にして、彼らはスリランカ式、あるいはバングラデシュ式のやり方をとろうと試みている(もちろん、現在も)。これが実行に移されたら、大変な流血の事態となるであろうことは容易に想像できるが、彼らはインドがバックアップしてくれるだろうという自信に支えられている。もっとも、実際にインドがこのラインを支持するかどうかは疑わしいが。
アキレシュ氏も書いているが、カタワル参謀長は今年9月10日に引退となる。ネパール軍のこれまでの慣習として、引退する参謀長はその一月前に休暇をとって、軍本部を去ることになる。したがって、カタワル参謀長には、残された時間があと1か月間しかないわけだ。そのため、参謀長は焦っている。まず、自身の任期を1年間延長しようと試みたが、法的にこれを支える予定だった法律局の側近の任期を延長できず、その可能性が低くなった。次に、参謀長は自身の最側近の1人であるトラン・ジャン・バハドゥル・シン将軍を、自身の後継者とすべく、軍ナンバー2の地位に昇進させようと試みた。しかし、シン将軍には紛争中に重大な人権侵害に関わった疑いがあり、国連高等人権弁務官事務所をはじめとする人権団体から「待った」の声がかかった。
このブログでも何度か取り上げたが、2003年後半に、カトマンズ市内にあるバイラブナス大隊兵舎から49人が行方不明になったさい(全員が軍により違法に殺害されたと見られている)、シン将軍はこの兵舎の責任者だった。ネパール軍はこのケースも含めて、軍内で起こったと思われる違法殺害のケースについては、まったくといっていいほど調査を進めておらず、シン将軍もこれまで大手を振ってここまできた。カタワル参謀長はこのシン将軍を次期参謀長とし、自身は後継者を操ることができる地位につこうという思惑だという噂もある。いずれにしても、シン将軍の昇進を求めて、バンダリ国防大臣だけでなく、ネパール首相、そしてヤダヴ大統領のところまで陳情にいく行為は尋常ではない。
アキレシュ氏は、こうした“保守派”(これにはカタワル参謀長とヤダヴ大統領を支持するネパール会議派と、バンダリ国防大臣などのオリ派の統一共産党も含まれる)の試みは、非常に危険であると指摘し、これを阻止するために、ネパール会議派のコイララ党首とプラチャンダ、そして、統一共産党のジャラナス・カナル党首の3人からなる超党派メカニズムが必要だと主張する。この考えに私も同感である。実は今回の議会再開にあたって、ネパール会議派は最後まで譲歩を拒否したのだが、最後に、コイララ党首とプラチャンダの会見で、コイララ党首が譲歩したために、マオイスト側の面子が保たれたと聞いた。コイララ党首にはいろいろ問題も多いが、こうした場面でのコイララ党首の決断は信用ができる。
今日の週刊紙ジャナアスタにも、このときに、コイララ党首とプラチャンダのあいだで、カタワル参謀長の任期は延長しないことで極秘の合意が成立したという記事がある。しかし、彼らの試みはまだ終わったわけではない。ネパール会議派内の大半のリーダーと、統一共産党内のオリ派のリーダーは“保守派”に与するであろうことを考えると、やはり、危険なシナリオを阻止することができるのは、3政党トップの協力体制しかないのだと思う。
|