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さて、ドゥリケルのリゾートホテルに一泊をしたプラチャンダは、どんなことを考えたのだろうか。リゾートホテルで思い出すのは、去年のメーデーのことである。当時首相だったプラチャンダは、当時のネパール軍のカタワル参謀長を解任する動きをすでに始めていた。しかし、連立与党内の政党を含めた他党から、この動きを強く非難する声が上がった。当時、マオイストの与党パートナーだった統一共産党のカナル党首は、参謀長解任に関して「Go サイン」を出して中国に行ったのだが、あまりに強い非難に恐れをなして、「OKはしていない」と突然、態度を変えた。首相が解任を強行すれば、統一共産党が連立政権から抜けることが明らかだった。そうなった場合、マオイストが主導する連立政権の基盤は一気に脆弱になる。今と同様にジレンマに陥ったプラチャンダは、演説をする予定だったメーデーのカトマンズ集会をドタキャンして、突然、カトマンズ近郊にあるリゾートホテルに籠もったのである。ホテルから戻ったプラチャンダは結局、参謀長解任を決行し、そして、ヤダヴ大統領が政府決定に反して、参謀長に留任指示を出したことがわかった直後、首相を辞任した。
去年のこの出来事で、プラチャンダがとった動きは正しかった。政府の指示を何度も無視した国軍の参謀長が解任されるのは、民主国家では当たり前のことである。ヤダヴ大統領の介入が違憲であるというマオイスト側の主張も正しかった。現暫定憲法では、「政府の指示を無視しろ」と軍参謀長に指示を出す権限を大統領には与えていない。しかし、ネパールの、特にカトマンズの“知識人層”やネパール会議派、統一共産党のKPオリ派らが大統領の側についた。このときには、参謀長の解任を非難されることはあっても、潔く辞任をしたことを非難されることはなかった。
今の状況は、マオイストにとっては、ある意味で昨年の状況よりも難しいと言える。ネパール首相が辞任をしないまま、マオイストが制憲議会の任期延長を支持すれば、「マオイストは、またしても妥協をした」と、さらに立場を弱めることになる。党内の強硬派からも強い批判が巻き起こる。一方、支持しなければ、「マオイストのせいで制憲議会は解散となった」と後々まで責められることになる。どっちをとってもリスクがある。明日から始まる中央委員会議で、プラチャンダはどんな提案をするのだろうか。残り時間はぎりぎりである。暫定立法府で暫定憲法の改正案を認可するには、少なくとも5日間かかる。中央委員会議の決定が、この国の将来を決めることになる。
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2010年05月21日
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