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その世紀の、その世界が禁じた本を焼き捨てるのが、焚書官モンターグの任務だった。
その世界の人びとは、≪海の貝≫と名づけられた超小型のラジオを耳にはめこみ、部屋 の巨大なテレビ画面に没頭して、書物がなくとも幸福に暮らしていた。だがモンターグは、 ふとしたことから恐るべき秘密を持ってしまった……!独特の文明批判で知られるSFの 抒情詩人が、持てる感受性と才能のすべてをうちこんで結晶化させた不朽の名作。 (紹介文より) 1953年発表。 1950年代初頭、マッカーシズム旋風が巻き起こり、その運動の 狂信的な反知性主義と、画一的な思想統制に自ら身をゆだねよう とする市民たちの盲目的な情念に危機感を覚えたブラッドベリが、 科学技術がもたらす思考の平均化から個人の尊厳と精神の自由を 守ることを期して書かれた作品。 ブラッドベリは科学技術がもたらす未来について過剰なほど 悲観的に考えていたようで、本作は徹頭徹尾、ハードボイルド 路線で押し切られ、均質化を迫る未来世界との重苦しい闘争が 展開されていきます。 巻末解説にある通り、本作はラストに至るまで特別なカタルシスを 感じさせることもないまま、寂寥感を漂わせながら物語が幕を下ろ します。そこには、著者が一方で科学技術に対して強い恐怖を感じて、 それを否定しておきながら、他方で、その背後にある人間の本来的な 性質、全ての資源と可能性を使い尽くして蠢き続けようとする人間の 本能としての情動までは否定し切れなかった自身に対する寂寞とした 虚無感が感じられるようでもありました。 ≪抜粋≫ ・みんな忘れ去ってしまうこと。なにもかも焼いてしまうこと。あらゆるものを 焼くことだ。火はあかるく、きれいにかがやいているんだぜ ・建設に従事しない男は、破壊を仕事にすることになる。 ・おれのうちにある神よ、あの場所へ行って、おれの外へ出て、おれの外にある 現実に触れるのだ。それだけが、最後にはおれ自身であるものに触れることの できる唯一の道である。 『華氏451度』 レイ・ブラッドベリ 1975年 (ハヤカワ文庫NV) ★★★★
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この本は好きです♪
本を燃やしてしまい人が思考することないように、みんな同じ方向を向くように…と、政府が考えだし本を燃やす。でもその職についている人がその仕事に疑問を感じて(もちろんその職についていない人も疑問は持ってるけど)。生きていくうえでなにが正しいか判断するのは、押しつけられたことではなく、自分自身で判断して考えていくことが大事なんだなって思えます。
2010/9/30(木) 午前 10:24
次に読むブラッドベリの作品はこれにしようと思っていました。
やはり面白そうですね。年内には読む予定なので再訪します。
2010/9/30(木) 午後 0:36 [ テラ ]
おっ、高評価ですね^^本書はおっしゃるようにハードボイルド的な比重が大きいですよね。だからブラッドベリってSFというくくりでも異質の扱いを受けてるんだと思います。焚書の世界がこないことを願うばかりですね(苦笑)あんな羞恥心溢れる記事をTBしていいのかわかりませんが(^^;)、TBさせていただきますね(笑)
2010/9/30(木) 午後 10:38
mikanさん、お気に入りでしたか。
ブログでも記事にされていましたよね。
しかし、すごい執念と勢いのある小説ですね。
本を燃やすのと同時にテレビやラジオで考えることを奪って、
せいぜい意味のない暗記用資料でも与えておく、という描写が
印象的でした。何よりも主人公が執念深く悩んで考え続ける姿勢が、
自分で考えることの重要性を心に刻み込んでくれますよね^^
2010/10/1(金) 午前 1:13
テラさん、
火星年代記と迷ったのですが、貸出中だったため、こちらを借り
てみました。テーマは重いですが、おもしろかったですよ^^
火星年代記はストーリーを全く知らないので、どんな感じなのか
楽しみです^^
2010/10/1(金) 午前 1:16
チルネコさん、
ブラッドベリは独特ですね。SFっぽくないな〜と思っていたら、
巻末の生い立ちを読んでちょっと納得です。チルネコさんの記事、
ブログを始めて3日目ぐらいの記事だったのですね。いや〜、でも、
そんな以前からブラッドベリを読み込んでいたのですね。3周年、
過ぎちゃいましたが、おめでとうございます^^
2010/10/1(金) 午前 1:17
テーマとしては普遍性を持っていて非常に楽しめた作品でした。科学技術の持つ二面性がよく描きこまれていたと思います。ブラッドベリの感覚はちょっと過剰に感じる部分はありますが、個人的には違和感がなかったです。焚書の時代が来ないといいですね(笑)トラバさせてください。
2010/11/27(土) 午後 0:19 [ テラ ]
主人公の内省が執拗に書き連ねられたスタイルが印象的でしたが、
科学技術の問題点をシンボリックに印象付けてくれる良作でしたよね。^^
焚書とまではいかないまでも、電子書籍の登場で偏りのある書籍の淘
汰が起こってしまわないかが、心配なところです。
TBありがとうございます〜^^
2010/11/28(日) 午後 6:10