鉄の表情ぎゃらりー

今年も古物市探索頑張るぞ〜!

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こんにちは、昨日はまたしても風邪を引き頭痛で寝ていました。

なんだか一年前の今頃も、似たようなことを言ってノビていた気がします。

確か湯冷めとかで・・・・・。


さてそんな話はともかく、昨年はやけに「新潟めいた」一年で、新年早々のフリマで栗林信吉の鉋に出会いましたし、永弘、初弘、金井などといった新潟鉋の代表格と言える名品も揃い、鉋以外ではづんぼの鉞も二本も狩れました。

新潟は三条、与板と鉋の代表的な産地がありますが、どちらも昔から東京などとは比べ物にならない程の生産規模がありましたから、少し離れた東京でも新潟の鉋にお目に掛かることは珍しくありませんし、おまけに今の時代はヤフオクなどでも遠くの名品が手頃な値段で買える時代ですから、万年ビンボーのAlcesどんでも新潟の鉋は比較的馴染みのある産地の鉋と言えます。

しかし新潟の鉋に親近感を感じるとしたら、それは入手の容易さだけが理由の全てではないでしょう。

なぜなら新潟は多くの優秀な人材を輩出し、東京の木工具製造業界にも進出したことで、関東の鑿・鉋製造の歴史に大きな影響を与えたという歴史があるからです。

有名な話としては長岡出身である龍進斎悦英の系統が北東京に進出し、多くの門人を輩出したことが知られていますし、それ以前にも國弘義廣といった近代道具鍛冶の祖とされる名工たちも新潟から移住し、東京で木工具の歴史を変えるほどの活躍をしています。

この他に向待鑿の名手助國や、長谷川廣貞も元は新潟の出身でしたので、東京で活躍し名工といわれた工人達は、実のところかなりの割合が新潟出身者だったようにも思われます。

これらのことから、「東京の名工」とされる工人の作品を集めていると、知らず知らずの内にいつの間にか新潟の作風にも慣れ親しんでいる気になるのは、決してただの気のせいということも無いのでしょう。

改めて新潟の名工たちの系譜を眺め回して見ると、坪井幸道→龍眠斎道次→龍眠斎兼行→龍進斎悦英と続いた龍進斎系統や、永弘・初弘などの系統、長谷川清弘→江川清宗→長嶋宗則→天田昭次の系統、さらにこれらとは別に鋸鍛冶業界で独自の勢力を築いた三条の中屋伊之助一門の系統、会津鋸鍛冶の流れを汲む脇野の中や庄兵衛の系統など、新潟は名工鍛冶を輩出しやすい文化的風土に恵まれていたのかな〜などと思ったりします。

木工具の産地という意味では、関西や会津にも同様に大規模な鍛冶文化が形成されましたが、関西の場合は鉄・鋼素材の供給地が比較的近く、また技術的文化がいつも先進的であった事、会津の場合は桐のような木工素材の一大産地であった事がその背景ですので、新潟の場合とはまた少し事情が異なるような気がします。


・・・・・と、前置きが無駄に長くなりましたが、今回の写真の鉋刃の作者・長谷川廣貞もそんな新潟出身の名工の一人です。

本名を長谷川貞次といい、明治頃に東京に出て、昭和10年代の終わりに千葉県の船橋に移住し廃業したそうです。

使用鋼は明治の上質な輸入炭素鋼で、地金はよく選別された日本鉄。

これだけでもかなりソソられる内容ですが、なんと言っても優れていたのは焼入れの技術で、千代鶴是秀をして「焼入れの正確さに背筋を冷ました」と言わしめるほどの、卓越し温度管理の技術を有していたようです。

それと廣貞の鉋と言えば、有名なのは鉋の値段の安さでしょう。

なんといっても千代鶴是秀の鉋の値段のおよそ4〜5分の一の値段で、しかも切れ味も全く遜色無いということから、当時の職人からは絶大な人気を得ていたようです。

これは使用鋼が是秀の使用していた物と同じ輸入物の高純度な炭素鋼であり、火造り・焼入れの温度管理も卓越していたわけですから、評価としては当然と言えますし、是秀の作品に見られるような過剰とも言える装飾を廃し、実用品作りに徹することで生産数もそれなりにの水準を保っていた点でも、使用者達には常時入手困難な是秀の作品よりも有り難味のある道具として支持された意味もあるのでしょう。

さらに当時東京で有名だった大工道具店、つばめ屋と浅草の水平屋が看板道具として廣貞の鉋を扱い、廣貞が問屋に卸す値段以上に安値で販売する価格競争を繰り広げたことも、販売価格を押し下げると同時に使用者にとってのコストパフォーマンスを高める追い風となったと考えられます。

実際、是秀も自らの作品に迫る出来の鉋を安値で作り出す廣貞については只者ではないと認識していたようで、珍しいことに是秀自ら廣貞の工房を訪ねてみることにしたようです。

残念ながら廣貞の工房を訪れた是秀は、表のショーウィンドーに飾られた玉鋼を見て「どうやら廣貞は玉鋼神話を捨て切れていない職人らしい」と考えたようで、話が噛み合わないことを恐れ面会を断念したようですが・・・・・。


廣貞の大工道具作りといえば、鉋作りでは輸入炭素鋼を用い、鑿作りでは伝統的な玉鋼を用いていたそうで、どういうわけか鋼を使い分けていたようです。

どうやら簡単に作れる鉋には安価で手間の掛からない輸入鋼を、製作に手間がかかり、大工職人にとって真の花形道具になる鑿には玉鋼を、―といった意味合いの使い分けであった様子のようで、現代ではその辺りが「残念な職人」という評価のようです。

つまり、鉋同様、鑿も輸入鋼で作れば本当の意味で石堂も千代鶴も脅かす存在になっていたのに・・・・・という点が惜しまれるのでしょうね。

個人的な疑問として、玉鋼の性質として現代鋼では有り得ないほどの粘りを示す物もあるため、叩いて使われ衝撃に対するため耐性も求められる鑿に玉鋼を用いたのかな?というふうにも思ったのですが、鑿のように高い硬度が求められる道具の場合、どうやら粘りの程度は玉鋼でも現代鋼でも差は無いらしいです。


ところで上記のような伝説に反し、作例は少ないものの鉋でも玉鋼製の作例が確認されているので、実は玉鋼のストックが枯渇しつつあったため、鉋作りには現代鋼を使っていたという可能性もあるのかな?という疑問も出てきます。

もしそうであれば、鑿作りに玉鋼を用いる動機自体は大方の推測通りであるとしても、玉鋼を使い続けることにそこまでの強固な意図があった訳ではない、―という可能性も考えられなくはないでしょうか?

百聞は一見にしかずとも言いますし、やはり是秀さん、そこは気合でもってのれんを潜るべきだったのではないか・・・・・と思うAlcesどんでした。


https://blogs.c.yimg.jp/res/blog-68-91/new_alces/folder/7055/27/27437827/img_32_m?1483408078
https://blogs.c.yimg.jp/res/blog-68-91/new_alces/folder/7055/27/27437827/img_33_m?1483408078
https://blogs.c.yimg.jp/res/blog-68-91/new_alces/folder/7055/27/27437827/img_34_m?1483408078
https://blogs.c.yimg.jp/res/blog-68-91/new_alces/folder/7055/27/27437827/img_35_m?1483408078


ところで長谷川廣貞の鉋ですが、土田昇著「千代鶴是秀」や、大工道具研究会編集「鉋の技と銘品大全」などにも登場しています。

使用者達に絶大な支持を得たこと、廣貞の死後問屋が商標を取得し大量の問屋銘の同銘鉋が作られたという点で、千代鶴や石堂などと同様、名作としての特徴を備えた廣貞鉋ですが、こまったことに本物と偽物の識別方法について言及されている書籍が全く見当たりません。
(問屋さんが登録した商標の作品を偽物呼ばわりするとどこからか怒られそうな気もしますが、廣貞が問屋さんに商標を譲渡したという確信が得られない以上、問屋さんが勝手に商標を取得した可能性も拭いきれませんし、どのみち問屋銘廣貞を作っていた職人と長谷川廣貞には技術的な接点はありませんので、私はあえて「偽物」と呼ばせていただきます。)

それで私なりに色々な写真を見比べつつ、大体の見当を付けたのですが、どうやら本物の廣貞鉋は「登録」「商標」の刻印が小さく、目を凝らさないと見難い感じのが本物のようですね。

刻印の大きさとしては本物も偽物もどちらも大差無い小さな物ですが、確かに偽物の方が大きめでハッキリと視認しやすいようです。

それと偽物の鉋の表馴染みには四角枠の刻印で「廣貞之作」と言う刻印がある物が多く、これが確認できればその時点で新潟で作られた偽物と100%断定できます。


さらに産地で作られた偽物は使用鋼が合金鋼(多分青紙?)ですので、グラインダーをお持ちの方はスパークで確認する方法もあるでしょうね。

本物は炭素鋼以外は有り得ないので、スパークの見分けが付くのであれば確実な判定方法だと思います。


本当は「登録」「商標」の刻印だけでなく、「廣貞」の刻印も本物と偽物は微妙に違うので、出来ることであれば両者を写真で比較検討したいところですが、偽物は買っていないんですよね。

以前フリマで偽物を500円で見つけることはありましたが、本物との比較用位にしか使い道が無かったため、スルーしちゃったんですよ。

今思えば偽物でもヤフオクでそれなりの値段で転売もできたし、やっぱり買っておくべきだったか・・・・・!(汗)

閉じる コメント(17)

おめでとうございます(^_^)

興味深く面白いお話しですね〜。

名工の鉋…使いきれる腕前があれば是非欲しいです。

中古やヤフオクを見てもどれがいいのか?本物か?よく分かりませんが、安価で職人に優しい名工が好きなヒゲちゃんです(^_^)

2017/1/3(火) 午後 8:31 [ ヒゲちゃん ]

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ヒゲちゃんさんおめでとうございます。
今年も一年またお付き合い頂ければ幸いです。

そうですね、私も色々な道具を集めましたが、とても使いこなせそうにないような物も増えてきました。
廣貞の鉋は元々出来の良さのわりに、非常に安く売られていたので、今でも捜し求める方が多いですね。
しかし元々が安すぎたのでしょうか、今ではヤフオクに出せばビックリ価格になること請け合いです。
もちろん、ハイパービンボーな私はいつもどおりフリマで1000円ですが。(^_^)y

2017/1/3(火) 午後 9:43 あるけすさん

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偽物と本物の見分けは本当に難しいですね。
なんか微笑ましい例では、カタカナで切った銘の鑿が本物だったりします。
重利の銘が、しかも訛りの入った読み名で「シゲトス」となっていたりします。
もっとも偽物を造るのにわざわざカタカナで切る奴もいないですよね。

2017/1/3(火) 午後 10:52 [ 針屋町 六 ]

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針屋町 六さんこんばんは、いつもコメント有り難うございます。

そうですよね、偽物が多いことで知られる國弘や重勝、鋸では中屋伊之助や仲や久作など、専門知識と経験がなければ見分けることは不可能な物が多いですね。
そうそう、会津の作品では鑿の作品にカタカナの作品がありますね。
多くは丸鑿とかで、首以外に銘を切れる箇所が無く、画数の多い漢字が難しい場合にカタカナの銘切りになるようです。
シゲトス銘は私も見かけましたし、重の濁音記号が無いシケノリのような銘もありました。
それと、会津風のカタカナの銘切りで、マサミツ銘のも見かけたんですが、カッコウ正光と関係があるのか調査中です。

2017/1/3(火) 午後 11:21 あるけすさん

すごい深い内容ですね
驚きましたー‼
ものすごい研究ですねー

勉強になります_φ(・_・

2017/1/4(水) 午前 9:59 [ ナベキチ ]

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> あるけすさんさん
金物屋さんで、
廃業した会津鍛冶のタコ引きなんてのが有りました。
重ナンとかと、銘が彫って有りました。
面白い物でしょうかね〜。
買っては来ませんデしたが。

2017/1/4(水) 午後 3:01 [ 新潟まさや ]

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> 新潟まさやさん
それ、教えて下さい。
値段によってですが、私引き取りますので教えて下さい。
Alcesさんのコメント欄なのに失礼いたします。

2017/1/4(水) 午後 4:47 [ 針屋町 六 ]

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> 針屋町 六さん
高かったッスよ〜。
近隣の料亭の職人さんように仕入れていたそうです。
水害で鍛冶場が浸かって、廃業したそうです。
買い損ねた夏屋砥が有りますので、
近々行ってきます。
写真を撮ってきますね〜〜〜。

重房だと思って手に取ったら、
違っていて、
話しを聞いて見ました。

2017/1/4(水) 午後 5:44 [ 新潟まさや ]

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正月早々、いいものを拝見させていただきました!!
明けましておめでとうございます!本年も宜しくお願いします!!

2017/1/4(水) 午後 8:00 おとっと

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> あるけすさんさん
いやはや、あるけすさんならではのお話。
真贋の見極め大変だと思います。勉強させていただきます。

2017/1/5(木) 午前 10:53 [ 2s305 ]

お〜、久し振りの論文ですね〜!
本物を見つけるヒントが・・・早速ヤフオクを探してみなくっちゃ!!!(*´艸`*)
使わないけど・・・。

2017/1/5(木) 午後 0:44 [ せい ]

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★ナベキチさん★

こんばんは、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
色々世間で言われている内容をギュギューッっと詰め込んでみた記事ですが、無駄に長ったらしくなってしまいましたね。
もう少し簡潔にまとまらないものかと思いますが、文章を書くのは苦手なので適当なところで諦めています。(苦笑)

2017/1/5(木) 午後 10:04 あるけすさん

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★新潟まさやさん★

こんばんは、いつもコメント有り難うございます。
会津重某の蛸引きですか、実物を見てみないと分からないことはありますが、それでも珍品には間違い無いでしょうね。
きっと私だけでなく、針屋町 六さんのように関心を持たれる方も多いと思います。

2017/1/5(木) 午後 10:07 あるけすさん

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★針屋町 六さん★

大丈夫ですよ、私的には特に問題はありませんので、掲示板のようにご活用頂いて結構です。
会津の重某系統の包丁、今では貴重な品ですし実用品として納得できる程度の価格だといいですね!

2017/1/5(木) 午後 10:10 あるけすさん

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★おとっとさん★

こんばんは、明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
かならずしも希少な作品ばかり、というわけでもないんですが、それでも功績のある偉人達の作品には違いないので、今後の記事でまた少しずつ紹介していってみますね。

2017/1/5(木) 午後 10:13 あるけすさん

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★2s305さん★

こんばんは、いつもコメント有り難うございます。
「ちょっくら簡単に記事でも書くべ〜」とパソコンの前に座ったら、いつものとおりこのザマです。(笑)
もうそろそろ、いい加減に短く簡潔に文章をまとめられるようになってきてもいいころなんですが、多分才能が無いのでしょう。(爆)
そして真贋の見分け、本当に大変ですね。
鉋だけでも写真だけでは判断が付かないこともありますし、鑿に至っては全く分かりません。(汗)

2017/1/5(木) 午後 10:18 あるけすさん

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★せいさん★

こんばんは、いつもコメント有り難うございます。
やっ、論文とか大層なモノには程遠い、どちらかと言うと雑記のような物でしょう!
もうちょっと色々な作品が手に入ったら、また改めて関連する記事を書き直した方がいいかも知れません。

2017/1/5(木) 午後 10:20 あるけすさん


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