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先週末のフリマは日曜日が雨天でしたので、土曜日だけ出動でした。 しかし一応収穫もあり、部品取り用に買った鑿2本400円と、この大玄翁を100円で見付けました。 この玄翁は200匁ですが、同じ重さの玄翁はすでに二つ持っていて事は足りているので、ヤフオクにでも出そうかな〜?と思い買って来たのですが、いつもの馴染みのお店で「まずは使ってみてごらんなさいよ」とアドバイスを頂き、どうするか迷っているところです。(笑) 右が普段鑿を叩いている玄翁で、今回買った物よりは太めで背が低いです。 普通の玄翁と比べると、ややダルマ玄翁に近い姿をしているといえます。 細く長い穴屋のような姿の玄翁は、打撃面を絞っているため狭い面積に長さ分の威力が集中し、威力に無駄の無い打撃が可能になります。 一方で寸胴形の玄翁は、鑿の尻を外さずに叩くためには有利な形状になっているものの、穴屋玄翁のような径が絞られた細身の背の高い玄翁と比べると、同じ力で叩いた場合威力が広い面積に分散される格好になり、打撃力ではやや威力が弱くなる傾向があります。 打撃力では劣っている反面、叩きたい所を外しにくいという特徴は一つの長所ではありますが、見方によっては素人向きの構造とも言えるでしょうね。 そしてそんな機能的特長は、鑿の扱いも玄翁の扱いもヘタクソな私のような使用者には有り難いので、結構重宝しています。(笑) しかし、そんな扱い易い打撃面の広い玄翁でも、時々鑿の尻を外してしまうことがあり、運が良ければ空を叩くだけで終わりますが、運が悪いと自分の鑿を握った手を強か叩いてしまうことがあります。 やはり、元々体が扱いなれていない道具となると、体が感覚を覚えて慣れを積むまでは、手先の延長とはなり得ないのでしょう。 いつもお邪魔している刃物店の店主さんも、若い頃鉋の台屋職人の許で修行していた際に、度々人差し指の付け根の骨のあたりを叩いてしまうという経験をされたようです。 そんな経験を積んでこそ、正確な玄翁の振り方というものを体得できるのでしょうし、台打ちの専門職人さんは墨付け&荒掘りを五分以内でこなすという、超絶的な職人技も実現可能なのでしょうが、それにしてもやはり、意図せぬモノを叩いてしまった時は、目の前が真っ暗になってしまったそうです。 これは私も普段、鉋の台掘りで大玄翁を使う場合によくやらかすことですから、大変実感の湧くところですが、特に骨に打撃が入った時は、打ち付けてしまった手を抑えてうずくまる状態で、言葉も出せないほどの痛みが走ります。 あまりの目の飛び出るような痛みに、それこそ骨折でもしたかと思ってしまいますが、まぁ大抵は骨折する程ではないですね。(笑) 2〜3日程度の痛みと腫れ、その後4日程度の違和感を経たら、後は喉下過ぎたら何とやら―ってやつです。(暴) しかし玄翁の打撃力も極まると、本当に骨折してしまうこともありますから、気は抜けません。 今はもう亡くなられた新潟の玄翁鍛冶の名工、故長谷川幸三郎さんも、製品の歪み取りの作業中に一度やってしまったそうです。 なんと、ゆうに1キロ以上はあるだろう鍛冶屋槌と、金床の間で親指を叩き潰してしまい、一ヶ月だったか二ヶ月以上(うろ覚え)も休業せざるを得なかったとか! 幸い後遺症などは無く、その後廃業までの20年間、仕事は続けられたそうですが、しかしやってしまった時の状態は凄まじく、指の骨は爪の向きと平行方向に割れたそうで、出血も酷かったとか・・・・・。(猛汗) もちろん、素人が何時間も掛けてチンタラと台一つ作る作業で、そこまで酷い怪我をすることはまず無いのでしょうけれど、やはり一歩間違えれば危ないことになるような、そんな作業も時には避けられないかもしれません。 そんなわけで、万年素人のAlcesどん。 「はたして威力重視の穴屋玄翁や、それにやや近い形状の玄翁なんて必要かですか?」 「安全なダルマっぽいヤツだけあれば十分じゃね?」 ―と、ちょっと考えてしまう今日この頃です。(笑) そうそう、この玄翁の刻印は∧に吉。(吉は本当は士ではなく土のつくり) ヤマキチの愛称で親しまれていた、九州の鍛冶屋さんの銘でした。 ヤマキチさんの功績といえば、やはりヤマキチ型という玄翁の形状を創出した事でしよう。 打撃の際の安定感が良いという、実用性に優れた工夫でした。 今日ではあらゆる玄翁鍛冶たちが、同じ形状の玄翁を作っていることからも、その創作の優秀さが分かりますね。 しかし発案者のヤマキチさんは後に、長谷川孝三郎さんがオリジナルのヤマキチよりも上手なヤマキチ型玄翁を作り出したため、自らは仕事をやめてしまったそうです。 なんだかいさぎの良い退き方で、職人らしいカッコイイ話ですね。 ―で、肝心のこの玄翁なんですが、ヤマキチさん自身の手によるものか、廃業後に登録商標で鍛たれた物か不明なようです。 ヤマキチさんの鑢目は、ワイルドな感じの実用道具らしいヤスリ目が基本なようですが、最後期の作品には細目の鑢で仕上げられたツルンとした物もあったそうですので、可能性が全く無いわけではないようですが・・・・・。 とはいえ、そもそもヤマキチさんの作品で、ヤマキチ型以外の作品は確認されている数が少ないため、なんとも言えないのだそうです。 一方、この玄翁によく似た作風の例では、相豊ハンマーで作られた物もあるようで、これは現在活躍中の相田浩樹さんのお父さんが作っておられたようです。 さらに、ヤマキチ印の玄翁には安物の作りの物もあり、これは○増銘の玄翁を作っていた工場で作られていたそうですが、私が一度フリマで見た○増製と思われる安玄翁は、ヒツ穴の作りがまるで違い、横幅がかなり広いヒツ穴でした。 一方この玄翁は、穴の寸法が3cm×1cmで、縦と横の比率が3:1と、玄翁の作りの作法を正しく守った作りです。 そして、相豊ハンマーで作られたこの玄翁とほぼ同じ作りの作品が過去に確認されているので、恐らくこれも相豊ハンマーで作っていた物ではないか、―とのことです。 まぁ結局、誰が作ったのか真相は闇の中ですが、詰まるところ道具は機能こそが重要で、刻印は飾りのようなもの。 銘ではなく形で選ぶべし、―という教訓のいい例ということなのでしょうね。
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2015年10月12日
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