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※「鳥肌体験回顧録」より転載しました...
『第三回 死期-2(祖母の命日)』
自分の死期を予言して、奇しくもその通りに旅立つ話は枚挙にいとみませんが、
総じて自己暗示( フロイトの言う「願望の充足」の現れも自己暗示に含めます )
による死ではないかと思うのであります。
ただ全てがそうかと言うと、それは否だと言わざるを得ないケースが存在することは事実です。
宇宙の起源をビックバンに求める説は、現在ほぼ定説化しておのますが、
終局については諸説紛糾しておりまして、その一説に「閉じられた宇宙」論がございます。
この説によりますと、ビックバンによって膨張を続ける宇宙は、
あるところで臨界点に達して収縮に転じ、最終的には元の無限大の温度を持つ点に帰結する
としております。
そして、この説を唱える S・W・ホーキングは、宇宙が収縮に転じたところから時空も逆転し、
我々は墓場から生まれ、母体へと帰って行くと言うのです。( 現在は主張を変えています )
不思議なことに、仏教の「具舎論」やインドの「アーユルヴェーダ」においても、
閉じられた宇宙論を匂わす文言があり、そこにある内容からは、宇宙は破壊と再生を繰り返す、
と読めるのです。
これらのことを事実と仮定した場合、
我々は、何百億年かのスパンをもって幾度となくこの世に生まれ、そして死んでいることになり、
その記憶が宇宙の何処かしらに残っているならば、
その情報を知ることで未来を予測することができると思うのであります。
弘法大師空海は、早い時期から自分の死期を宣言し、
その日に高野山の地下廟に入定したそうです。
あの中国( 当時の唐 )にして、伝えるべき人材がいないと嘆く密教の大僧正 恵果は、
空海と会うやいなや 全ての仏法を空海に伝授すると決め、
空海は二年足らずの間にそれを成就し帰国したのでありました。
密教とは、宇宙の法則と一体になるもの。
その密教を知り尽くした天才空海は、宇宙からやってくる未来の情報波動を
キャッチする能力を備えていたのではないでしょうか・・・・・
祖母の病状・体力は一進一退を繰り返しながらも快方に向かい、
無事退院できたのは、桜の花びらがヒラヒラと舞い散る季節でした。
退院した日の夕方のこと、祖母は私を呼び、枕もとに座る私に こんな話をしてくれたのです。
家に帰ってから布団に入っているとウトウトとしてしまってねぇ、
夢枕に大高権現様( 祖母が自ら小さな御社を建ててお祭りしていた神様。
権現様は仏の化身であるはずなのに何故か御社と鳥居 ??? )が現れて、
なんでも旭大権現( 正しい漢字は解りません )に昇格されたらしいの。
それで旭大権現様は、後3年 生かしてやると言ったのよ。
わたしゃ、もーダメだと思っていたのに、後3年も生きられるなんて、ありがたいことやねぇ。
祖母は、涙ながらに喜びをかみしめているようであり、
その顔のシワひとつひとつが祖母の歴史を刻んでいるのだろうなぁと思いながら、
喜ぶ姿がいじらしくて胸が熱くなったのを覚えています。
ただ、その当時祖母は ボケが進行しており、
そんな祖母の夢の話しを真( ま )に受けることもなく、
おそらくは その日のうちに記憶の隅に押しやっていたのだと思うのです。
その後、床の人となってしまった祖母が亡くなったのは、数年の後でした。
おばあちゃん子だった私は、
その時初めて、世間でよく言う「身体にポッカリと穴が空いたような」という感覚を体験し、
この世の無常を一人で背負ったかのように打ちひしがれたものでした。
無事葬儀も終わり、取り仕切っていただいた組内の方々も三三五五に引きとられ、
残った身内だけで祖母を懐かしむ話が始まりました。
叔母 A「穏やかな死に顔で良かったねぇ」
叔母 B「そうよねぇ、寝たきりの状態が長かったから、しんどかったろうにねぇ」
叔母 A「どれくらい寝たきりやったんかねぇ」
母 「あれは、退院してしばらくしてからですから、かれこれ3年になりますかねぇ」
叔母 A「そういえば、退院したのは今時分じゃなかった?」
叔母 B「そうよねぇ、アレは・・・・・・たしか、孫の入園式だったのに
おばあちゃんの退院があるから出席できなかったのよ」
叔母 A「そうそう、あれは花祭りの日やったね」
( 花祭りとは4/8、お釈迦様の誕生日です。日本人はキリストの誕生日は知っているのに、
花祭りは、あまり知られていませんね )
・・・・・・・・は、花祭り・・・・・それって今日じゃない !!!!!。・・・・・そして3年前・・・・・・
私の脳裏に、鮮やかに祖母の姿が蘇ってきました。
布団の中から私に話しかける祖母の姿。自分は後3年生きられると喜ぶあの姿。
祖母は、退院したあの日から、キッチリ3年後に旅立っていたのです。
祖母は、亡くなる2週間ほど前から昏睡状態で意識がありませんでした。
したがって自己暗示によるものでは決して無いのです・・・・・
―― 完 ――
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